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2007年09月 アーカイブ

2007年09月13日

安倍首相の辞任とテロ特措法

 安倍首相はテロ特措法延長を果たすべく職を賭すと言明していたが、その国会審議を前にして突如として辞任を表明した。
 しかし、このテロ特措法問題を我々国民は、安倍首相辞任劇にともなう政局や感情にとらわれて、判断を誤ってはならないと思う。
 6年前に起きた同時多発テロに対しては、そもそもいかなる凶悪犯でも犯人の身柄を確保して裁判にかけ法に基づいて処罰するのが当たり前なのであり、国連を中心に警察的・司法的に対処して厳正な犯人処罰と再発の防止をこそ目指さなければならなかったのに、ブッシュ大統領はいきなり報復戦争に訴え、(テロリストをかくまっているとして)アフガニスタン攻撃を強行した。大統領は各国に対して「アメリカとともにあるのか、テロリストの側にたつのか」はっきりさせるようにと言って迫り、「ショウ・ザ・フラッグ(旗幟を鮮明にせよ)!」と迫られた小泉当時首相はいち早くアメリカ大統領を支持、国会でテロ特措法を通し、以来インド洋で作戦に従事する艦船への補給支援に自衛艦を派遣してきた。NATO諸国は集団的自衛権を理由に派兵したが、いずれも国連決議に直接基づいたものではない(アメリカは安保理開催を要求していなかったし、「1368決議」はテロ攻撃を「明確に非難する」というもので、前文に、このテロ攻撃に対するアメリカの自衛権が国連憲章で認められていることを一般的に確認しただけであって、アメリカの対アフガン攻撃を承認したものではない)。
 アフガニスタンでは、アルカイダやタリバンその他の武装勢力以外にも、民衆が空爆にさらされ巻添えにされ、対テロ戦争は米国同時多発テロ以上のおびただしい死傷者をもたらしている(アフガニスタンでは民間人の死者は01年の開戦から3ヶ月間だけで4,000人前後、今年に入ってからは700人前後)。それでいながら未だに首謀者などの犯人逮捕に至っておらず、攻撃と報復テロの悪循環が続き、テロは収まるどころか広がる一方(「米軍は米兵の死亡1人に対し100人のゲリラを殺害している。」ところが「1人殺害すると、それは何倍にもなって跳ね返ってくる。男性の親戚すべてを戦いに参加させることになるのだ」といった状況)。「対テロ戦争」戦略の破綻は明らかだ。
 「テロリストに対する海上阻止活動」と言いながら、我が自衛艦が給油する米軍その他の艦艇や艦載機は、はたしてアフガン攻撃に従事する艦なのか或はイラク攻撃に従事する艦なのか、それとも他の海上活動に従事する艦なのか、油に糸目はなく、予め区別を付けることなど出来ないのである。空爆など攻撃にさらされている国民からみれば日本自衛隊の給油活動は米英軍などの軍事作戦への加担・参戦以外の何ものでもないわけである。
 給油は「テロとの戦い」でり、国際公約だというが、憲法9条の「国際紛争解決の手段として戦争を放棄する」ということこそ我が国の国際公約にほかならないのだ。給油は国際社会から高く評価されているというが、空爆にさらされ戦争被害にあえいでいる民衆はもとより、(アメリカその他の軍事作戦に加わっている国々の政府や軍の当事者以外には)諸国民から「高く評価されている」などということはあり得ないのだ(アフガン等の民衆は日本の自衛隊が作戦参加各国軍へ「給油」をしていることなど知らないし、ましてやそれに感謝しているわけない)。
 我が国がやるべきことは「テロとの戦い」への軍事貢献ではなく、ODA(政府開発援助)やNGO(非政府組織)による非軍事貢献である。それは、アフガニスタンまたはその周辺で、中村哲氏(医師、「ペシャワール会」現地代表、20年以上も前からパキスタンのペシャワールに赴任)らが難民医療とともにやっている井戸・用水路掘り事業とか、或は伊勢崎賢治氏(東京外語大学院教授、国際NGOの活動に携わり、東チモール、シェラレオネ等への国連派遣団にも参加、03~04年アフガニスタン武装解除日本政府特別代表を務め63,000人の武装解除に成功)らが軍隊警護を付けずにやってきた軍閥武装解除活動といった分野での国際貢献である。
 我々国民は、テロ特措法延長の是非を判断するに際してはくれぐれも、政府与党側が口にする「同時多発テロで、24人もの日本人の命が奪われたことを忘れるな」とか「テロとの戦い」「給油は国際公約だ」とかの尤もらしい言葉にとらわれ、(安倍さんが局面打開のため首相を辞してまで通したいと望んだのだから、特措法の延長でもそれに準ずる新法でもいいから「給油」の継続ぐらい認めてやればいいではないか、などと)感情にとらわれ、或は政局(政界のなりゆき)にばかり気がいってしまうことのないように、世界の大局から見て冷静に判断しなければなるまい、と思うのだが、いかがなものだろうか。

2007年09月15日

「給油」執着すべきでない

 「9.11では24人もの日本人も死んだのだ。『テロとの戦い』参加、特措法延長、インド洋上での米艦などへの給油活動はやり通さなければならない。それは国際公約だ。しかし安倍首相は、参院選で過半数議席を取った野党の反対でそれが難しくなったと見て局面打開のために辞任。そうまでして『給油』を続行したいと考えたのだ。だったら給油ぐらい良いのでは」などと考える向きがあるだろう。しかしそれは間違いだと思う。
 その「給油」の向こうには空爆など攻撃にさらされている民衆がいるのだということ。対テロ戦争の成果はあがっておらず、泥沼化し、攻撃と報復テロの悪循環が続いている。「戦争でテロは無くならない」ということだ。国際テロ犯罪は国連を中心に警察的・司法的対処を原則とし、テロの土壌となっている生活難など人々の絶望的な状況を改善することに全力をあげなければならないのだ。我が国がやるべきことは、アフガン関係で、中村哲氏らが難民医療とともにやっている井戸・用水路掘り事業や伊勢崎賢治氏らが軍隊警護を付けずにやってきた軍閥武装解除活動といった分野での非軍事貢献なのである。
 「戦争放棄」を守ることこそが諸国民に対する国際公約なのだから。

2007年09月19日

政権党から巧くやられてる

 安倍首相は参院選で大敗を喫して、内閣改造はしたものの任命した閣僚の中から不祥事が発覚、テロ特措法延長はアメリカに「公約」したものの参院多数野党の壁の前に思うに任せなくなった。そこで急きょ「局面打開のために」と辞任、総裁選挙という新たな「劇場」をセッティングして、国会審議を先延ばしさせた。
 その間、テレビは「総裁選レース」を放映。国民は皆それに引き付けられ、街頭演説会に「フアン」が殺到する。候補者の2人は「キャラ」がどうのこうのとか、「若い人に人気あるね、私の方はオバさんかな」などと語り、聴衆は「まず福田さんが政権について、その後、麻生内閣になれば」などと語る(インタビュー)。自民党の「役者たち」は候補者の2人だけでなく、派閥の幹部から「~チルドレン」に至るまで出演の機会にありつき、「二人とも総理の器だ」と持ち上げ合う。
 野党議員は、この間まったく蚊帳の外に置かれ、ほとんど出る幕がない。政権党は彼らに、「給油は国際社会から高く評価されている」などと語らせ、一方的に政策宣伝。マスコミはそれを無批判に伝え流すだけ。それが効を奏し、世論調査では「給油」継続に賛成が増え出している。
 政権党やメディアにこんなやり方を許していてよいのだろうか。

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