米沢 長南の声なき声


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「いくさ無き恒久平和」なんて夢物語か?
2024年01月05日

 「いくさ無き」とは「軍も無き」ということであり、9条は戦争を永久に放棄し、国は戦力(軍備)を保持しないということを定めたもの。
 小国町にある基督教独立学園を創設した鈴木弼美先生のことだが、彼は東京帝大卒業で内村鑑三の弟子。陸軍に士官として召集され大尉まで務めたが、太平洋戦争も後半になって「この戦争は日本が悪いから負ける」などと発言して治安維持法で逮捕・投獄にあっている。そして戦後、「自衛の戦争も含めてすべての戦争は悪である」と論じ、徹底した非戦論を説いた。(当方は米沢の裁判所で、彼が自衛隊違憲訴訟を起こした公判を傍聴した覚えがある。)
 彼のこのような考えは「9条の会」を創始した呼びかけ人メンバーの小田実・井上ひさし等の考えに通じる。小田によれば「平和主義は、ただの平和愛好でも『護憲』でもない。『戦争に正義はない』。問題・紛争の解決を、武力を用いず、『非暴力』に徹して行おうとする理念と実践が平和主義だ」と。
 日本には戦争放棄と戦力不保持を定めている憲法があるが、井上は「『平和を守れ』、『憲法を守れ』といっているだけでは、良くて引き分け、下手をすると、押し込まれてしまう。」「その憲法を国際関係にも生かしていこう。これは、攻めの姿勢」なのだと。
 憲法学者で鳴門教育大学の麻生多聞教授は「非軍事的安全保障」論で、米国の政治学者ジーン・シャープの非暴力理論に基づく「市民的防衛」論に着目し、「武器なき自衛権」ということで、非武装市民による非暴力抵抗に基づく防衛を「9条に適合的な国防の方法」として論じている。
 武力による自衛権の行使は「(先制攻撃はしないが)攻撃されれば命がけで反撃する」という防衛戦争であるが、それに対して「武器なき自衛権」は「命がけで戦争を回避する」というもの。戦争回避には、先ずは外交交渉で侵害の未然回避に全力を挙げ、それでも、回避し切れずに侵害を受けたら、警察力による排除の実力行使、それに武装市民によるレジスタンスもあり得る。しかし武力抵抗は戦争と同じかそれ以上に多くの犠牲者を生む。よって武力抵抗は避けなければならない。「武器なき自衛権」とは、それ故の戦略的な「非暴力・不服従抵抗」ということなのだろう。
 不戦・非軍事の平和憲法を奉ずる我々は、9条に基づく「武器なき自衛権」で自国を守るだけでなく、それを国連にも及ぼして(同様な規定を国連憲章に盛り込むか、或いは「(全ての)殺傷兵器禁止条約を締結するなりして)どの国も「武器なき非軍事国家」として軍備を全廃すれば、世界に「いくさ無き恒久平和」が実現する・・・・そんなの不可能だとすれば、第3次大戦も覚悟するしかないということか。
 それにつけてもウクライナ、それにガザの惨状はまさに地獄。今直ぐ住民を救出しなければならないのだ。国連が戦闘を即時停止させて、国際人道支援活動に日本から自衛隊員でも緊急救助隊として派遣する等のことがあって然るべきだ・・・・それもまた夢か?


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