境家史郎・東大教授らは、野党(非自民勢力)は9条の解釈を巡って防衛問題・自衛隊問題などで合意できず、イデオロギーで対立・分断し合って政権与党・自民党を利してきた。したがって野党が政権交代を懸けて選挙戦に結集するうえで、9条護憲を掲げて改憲問題を争点にするのは避け、むしろ他の争点で野党は結集するようにした方が得策だとし、むしろ自民党側の9条など憲法改正が実現されてしまえば、9条解釈を巡って野党同士で対立することもなくなって自民党など政権党に対抗してまとまりやすくなり、野党はかえって結集しやすくなるのでは、とさえも論及しているという。
確かに、護憲派でも9条については、党派によって解釈に違いがあり、自衛隊は違憲だとか合憲だとか、日米同盟も肯定か否定か見解が分かれている。それに国民はといえば自衛隊には大多数が支持を寄せているし、日米同盟にも(基地問題はあっても、同盟それ自体には)反対しているマスメディアはほとんどない。
しかし、政府・与党の外交・防衛政策と9条改憲問題については、国民の間でも異論や疑問は少なくないし、特に戦争に対しては大多数の国民が「それは嫌だ」と思っており(自衛のためなら仕方ないとか、国を守ってもらうためなら日米同盟も仕方ないとは思っても)、他国の戦争に巻き込まれるのは御免だし、戦争だけは避けてほしいと思っている国民が大多数なのでは。
だとすれば、野党は(9条の解釈や外交・防衛政策に違うところはあっても)①専守防衛の原則を踏み外し、9条のレッドライン(超えてはならない一線)を越える敵基地攻撃能力の保有、防衛費が(27年度には)倍増して世界3位の軍事大国になるという軍拡に反対、②集団的自衛権の行使容認など安保法制には反対、それに③軍事的抑止力など軍事依存主義には反対、これら3つの基本点では政権与党・準与党とは決定的に違う。それらの基本点で合意できるなら「小異を残して大同につく」という結集は可能であり、護憲の立場でも結集できるのでは。
それなら立憲民主・共産・社民・れいわ・新社会党などは結集して共闘できるのではと思われる。これら「立憲野党」だけでも「市民連合」とともに結集して共闘を組んで選挙戦に臨むならば、「戦争は御免だ、絶対避けてほしい」と思っている多くの人たちの支持・応援で善戦でき、(政権交代はともかく)改憲発議阻止に必要な3分の1以上議席獲得は可能であり、いずれにしても改憲阻止の国民運動を大きく盛り上げることはできるだろうし、是が非でもそうなるようにすべきなのでは。
それに、合理主義か人道主義かの観点からの他の争点と関連付けて総合的に一くくりにした大争点で共通政策を掲げて結集・共闘することもできるのでは。
片や(自民党や維新)「軍事・原発・デジタルなどの偏狭な科学技術に依存する合理主義の企業と国家本位の改憲派」。片や(立憲野党と市民連合)「『生きとし生けるもの』の生命と自然を大事にする人道・平和主義を守る護憲派」などといったように。(尚「専守防衛」の原則とは①攻められたときに限って武力は行使するも、撃退・排除だけに止まり、相手を打倒するような勝利を求めない。②力を背景とした強制(押し付け)外交はしない。③他国に脅威を与えることはしない。④相手に戦争や軍拡の口実を与えない。⑤同盟国など他国の戦争に自動的に参戦する集団的自衛権行使はしない、ということ。)