米沢 長南の声なき声


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「あなたはどこの国の総理ですか」
2023年07月17日

 この言葉は、以前、当時の安倍首相が長崎市平和祈念式典に訪れた際に、被爆者代表の方が核禁条約への署名などを求めた要望書を持参して面会した時に発した言葉だが、今回のG7サミットは日本国内では大方の目には「大成功」「良くやった」好評のよう。それでも、被爆者の方々の目には、いったい「どこの国の、どこの出身の総理なんですか」と思われた向きが多かったのでは。
 折から発行された米国のニュース雑誌「TIME」で(ことし世界で最も影響力のある100人として)表紙を飾ったのは日本の首相の顔だが、その添え書きには「岸田首相は何十年も続く平和主義を放棄し、自国を真の軍事大国にしたいと望んでいる」とあり(中の特集記事のタイトルも当初は「平和主義だった日本を軍事大国に変える」となっていたのが、そこは差し替えられたとのことだが、表紙の添え書きはそのまま)、世界の目にはそのように見える向きもあるのだということなのだろう。日本の国民は「それでもいいと思っているのだろうか」と問われている、とも言えるのでは。
 日本国憲法の平和主義(前文「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意して・・・・この憲法を確定する」)には、制定当時の国民の覚悟が込められていたはずだが、今、憲法を変えて、その平和主義を捨てようとする、それでもいいのかと。問われているのは日本の国民なのでは。
 広島サミットは、メディアを通じて見た目には、いかにも素晴らしかったかのように受け取られたのだろう。しかし、被爆国で憲法に戦争放棄を誓った国の、しかも被爆地出身の首相が議長となって、わざわざ被爆地に各国首脳を集めて開いたサミットならば、その立場で首脳たちに訴え世界に発信しなければならなかったものを、被爆者をはじめ良識のある向きには「いったいどこの国でどこの都市で開かれたサミットなのか」と忸怩たる思いを禁じ得なかったのでは。
 集まった各国首脳たちの中で(当方の目には)唯一まともだったと思われたのは、グローバルサウスから招待されたブラジルのルラ大統領―ウクライナ紛争で「双方とも戦争に勝つのは自分たちだと思い込んでいる」、「双方とも100%譲らないのは無理だ」として、同紛争に向けた多国間グループの創設を目指し、インド・インドネシア・中国などとともに自らを調停者と位置付け、核禁条約批准の意志も表明している。
 被爆国で憲法に不戦平和を誓っている国ならば、せめてこのようなことを言える日本のリーダーで(TIME誌の表紙にあんなことを書かれることのないリーダーで)あったらよかったものを。
 我が国政府の外交と国際会議における議論に際して依拠すべきは憲法であり、誇るべきは9条で、いわば「無刀流サムライ日本」(無刀流とは、幕末の江戸城無血開城に際して勝海舟とともに西郷隆盛との談判に当たった山岡鉄舟が開いた剣術の流派で、「敵と相対するときは刀ではなく心を以て相手の心を打つ」というもの。)なのにどうもはき違えが。


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