米沢 長南の声なき声


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「戦争放棄」の放棄か護持か
2023年05月05日

現実の状況―メディアが報じるそれら隣国の動きと政府の対応
 中国―東シナ海・尖閣諸島、南シナ海などへの海洋進出
   ―インド・太平洋の「(海洋)自由」「『法の支配』を守れ」、「『一方的な現状変更』に反対」と
    中央アジア・中東・ヨーロッパ・アフリカへ「一帯一路」の広域経済圏構想―               
                               「覇権主義」警戒
    台湾問題―武力統一強行、それにアメリカが台湾軍を支援して介入、                           
                           それを自衛隊が支援の見通し                                                 
 北朝鮮―核・ミサイル開発・発射実験の頻発・拉致問題
     朝鮮戦争再開の懸念(韓国とはそもそも同一の朝鮮民族国家で半島は日本領にされ、戦後は南北に分断、米ソ冷戦下に戦争して、今はその休戦中)
 ロシア―ウクライナ侵攻―これに対してウクライナ軍民の「徹底抗戦」
 
 これらに対するメディア報道、SNS発信、政府・政治家の発言などから国民が受ける印象―中国・ロシア・北朝鮮の脅威感・反感(嫌悪)
 日本のマスコミが報じるウクライナ戦争のニュースから国民が受ける印象に乗じて、昨年の参院選で安倍元首相は全国各地を飛び回って行った応援演説で、こう訴え続けたという。「今ウクライナを守るために命をかけて戦っているのは、ウクライナ軍の皆さん。日本を守るために命をかけて戦うのはだれか。自衛隊の皆さんではないか。しかし、自衛隊は憲法に明記されておらず、・・・・。この状況を変えていこうではありませんか」と。
 かくて国民は、政府の防衛力強化(敵基地攻撃能力の保有、防衛費倍増など)支持、9条改憲賛成に傾く
 世論調査
  NHK4月~9日1544人回答
   憲法改正 必要ある35% 必要ない19% どちらともいえない42%
   9条改正   〃  32% 〃  30% 〃   34%
   反撃能力保有は9条に抵触しない20%、抵触する25%、どちらともいえない49%
  朝日新聞 2月末~4はんげき11日 1967人回答
   憲法改正 必要ある52% 必要ない37% 
   9条改正   〃  37%   〃 55%
   反撃能力保有 賛成52% 反対40%
   朝日新聞社と東大谷口研究室 共同調査 2~4月 約3000人回答
   防衛力強化に賛成62% 反対12%   
   敵基地攻撃ためらうべきではない39% 反対23% どちらともいえない38%
   原発維持 賛成46% 反対25%

 問題点―国民の間でこれら隣国の動きや状況に関する実態・真相に対する短絡的単純理解・無理解・認識不足、そこからの理性を欠いた感情先行の判断
 日本は中・ロ・北朝鮮を脅威としているが、これらの国から見ればアメリカが第一の脅威で、それと同盟を組んでいる日本やNATO加盟国が脅威なわけである。
 ロシアとウクライナの関係―ロシアにとっては旧ソ連邦のいわば「同志国」で、その東部には人口の3分の1を占める同胞ロシア人が住んでいるのに、ウクライナの政権がNATOに加盟しようとし、東部ロシア系住民の抵抗勢力との間で紛争(内戦)中であった。そのような背景の下で行われたロシア軍の侵攻であり、それに対してウクライナ軍が「徹底抗戦」し、アメリカをはじめNATO加盟国が武器供与など軍事支援。
 このようなロシアとウクライナとの関係は、日本と中・ロ・北朝鮮との関係は全く異なり、この3国に対して日本の自衛隊と国民が、ロシアに対するウクライナ軍民のように徹底抗戦しなければならない相手であるかのように敵視してかかるのは如何なものか。
これら3国は、かつて戦争し(日本軍が侵略あるいは植民地支配した)間柄で、日本に対して怨み(「反日」感情)をもつ向きもあるが、だからといって、新たな憲法で不戦と海外領土の放棄を誓った日本にわざわざ海を越えて侵攻してくる必要性も何の利益(コスパ)も考えられまい(本来ならば)。ただこれらの国はアメリカとイデオロギー対立から敵対して(冷戦)以来、日本はそのアメリカの同盟国となり、軍事基地を提供して組するようになって、これらの国から、その点ではアメリカとともに脅威と見なされざるを得なくなっていることは確か。だから台湾有事(中台戦争)や朝鮮半島有事(朝鮮戦争再開)が起きてアメリカがこれらの国と戦争に及べば、日本もアメリカを支援・参戦することになって敵国となるわけである。ロシアからはウクライナ戦争で経済制裁などに加わって敵対国と見なされている。
これら国々の関係を敵か味方かなど単純に考えてはなるまい。ましてや反感・悪感情が先立ってしまってはいけない。
(かつての戦争に際する国民感情―「暴支膺懲―横暴な中国を懲らしめよ」とか「鬼畜米英―アメリカ人・イギリス人は鬼・畜生だ」とか、との敵対感情を抱く―のと同様に、相手国人に対して「反日国家」だとか「ならず者国家」だとか敵対感情を抱くのは。)

 9条に関して改憲賛成に傾いている問題―9条の歯止めが効かなくなって、自衛隊の防衛力増強と日米同盟の緊密一体化作戦が可能となり、台湾有事や朝鮮半島有事に際して米軍が出撃し、連動して自衛隊も出動、その基地となる沖縄や本土の各地が反撃する相手国の弾道ミサイルや空爆の攻撃に見舞わられることになるかもしれず、その結果「再び戦争の惨禍」を招くことになるかもしれない、という覚悟があるのかだ。
 それとも護憲派は、そんなの御免だ、そのような事態は絶対あってはならない、絶対起きないようにしなければならない、との覚悟で反対・阻止を貫き通すことができるのか。戦争放棄か平和主義放棄か、どちらを選ぶのかの覚悟が問われているのでは。


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