米沢 長南の声なき声


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日本が戦争に直面したらどうする―ウクライナ戦争のあり様を見て
2022年09月06日

 ウクライナ戦争は始まって半年になるが、ずうっと毎日、映像で戦況を交戦国双方の大統領の顔と共に見せつけられている。
 この間、死者はロシア兵1万5000人近く、ウクライナ兵9000人・市民5500人(うち子供360人)―これらは確認されている数だけだが、実際はもっと多い。
停戦の見通しは立っておらず、ロシア軍・ウクライナ軍双方とも一歩も引かず(ウクライナ軍には米欧NATO諸国の兵器供与など軍事支援もあり、ロシアに対する経済制裁には日本も加わり)長期化・激化している。
 この戦争に対して、当事国以外の人々の感じ方・対応は様々で、日本でも“No War”とか“Stop The War”と反戦を叫ぶ人々はいるが、「戦争やめろ」というならロシアに対してであって、ウクライナの抗戦もやめろ(双方とも戦闘を停止、武器を置いて話し合え)というのは間違っている、という向きが多いようだ。先に仕掛けた(侵攻してきた)方が攻撃をやめない限り、抗戦をやめるわけにはいかない、というのは道理ではある。しかし、反撃をやめれば(抗戦停止を宣言)攻撃(撃ち方)も自ずから停止される(それが続いてる間は誰も命を落とさずに済む)というのも理屈。とはいうものの、互いにいがみ合って(敵対して)アタマに血がのぼってカッカしてる興奮状態では攻撃的感情が支配し、戦闘停止に踏み切る理性的判断は難しい。そのような場合は、やはり第三者の仲裁が必要不可欠になる。ところが、この戦争には、ここまで来て本格的な仲裁に乗り出す者は国連や国々のトップリーダーは誰も出てこない。国連などの会議では一方的な非難合戦をするだけで、仲裁できるような世界のリーダーの不在が不幸・悲運。
 双方の大統領・軍民とも引くに引けなくなっている(ゼレンスキー大統領は「戦争の終わりは『勝利』」「最後まで戦い抜く」「ロシア軍が完全撤退しない限り、停戦交渉には応じない」と)、「今日も何十人・何百人死んだ」というような、この状況の中で。
 双方が戦っている目的(相手に対する要求)は、ロシア側は①(かねてよりウクライナを西側NATO加盟国との緩衝国と考えてきたが、そのウクライナが改正憲法にNATO加盟を目指す方針を明記して、加盟を策していたのに対して、アメリカなどにそれ(NATO加盟)を否認するよう求めてきたものの、応じられなかった)ウクライナに対してNATOに加盟せず、中立化・非軍事化する(外国軍隊を駐留させない)こと、②非ナチ化(アゾフ連隊など極右勢力をゼレンスキー政権から排除)すること、③東部2州のロシア人居住地域に樹立した自治共和国の承認、③2014年に併合したクリミア半島の維持。
 これに対してウクライナ側は、そうはさせまいとして、それらの否認、領土主権の奪還が戦いの目的となる。
 戦争が始まってしばらくの間、停戦交渉が数回断続的に行われ、ウクライナ側には譲歩の考え(NATO加盟を強く求めず中立化を受け入れるとか、クリミア問題は15年間棚上げにするなど折り合いをつける考え)もあったが、ロシア軍によるブチャなどで虐殺問題など戦争激化にともない、強硬姿勢に転じ、ロシア侵攻前の状態に戻さない限り、停戦交渉には応じない、そして今や8年前併合されたクリミア奪還も含め全土支配権の完全回復まで戦い抜くまで徹底抗戦の構えで、米欧NATO諸国も軍事支援を追加し強化し続けている。
 それに対してロシアは米欧諸国に日・韓・台湾・オーストラリア・ニュージーランドなど西側諸国による経済制裁もあって苦戦を強いられながらも、戦い続け、苦し紛れに一発勝負に出て核兵器という切り札を使いかねない、というところまでいってしまうのかだ。

 これに対して日本の我々国民には①ウクライナの徹底抗戦を支援(米欧NATO加盟諸国によるの軍事支援支持、対ロシア制裁参加)か、②双方とも即時無条件停戦、協議・話し合いを求め、ウクライナに対して国連などに安全保証を求めるか、③なりゆきまかせるか、など対応がある。
 日本国憲法の9条(不戦・非軍事)に忠実であろうとする立場では、中立、即時停戦・双方の安全保証を主として話し合い解決、和平を求めるのが筋だろう。日本が憲法の立場に立って主体的に国連による仲裁(それこそが国連の役割だとして)働きかけなければならないのだ。
そして、ロシア政府には然るべき戦争責任をとらせることも必要だが、国連が中心になって、ウクライナ国民の破壊された生活再建と荒廃した国土の回復に対する世界中からの支援に取り組まなければならないわけである。

 それにつけても、日本は朝鮮半島や台湾あるいは尖閣諸島などをめぐって戦争(中台戦争・朝鮮戦争の再開)の危機に直面したしたら、どうするのか。
 日本には、これらの関係国(中国・北朝鮮・韓国・台湾・アメリカ・ロシア)に対して求める要求は唯一つ、地域の平和・安定であり、戦争を起こさないようにすること、それ以外にない。戦争が起きてしまったとしても、我々国民として自国政府に求める要求は、その戦争にアメリカが介入して日本の基地から出撃し、自衛隊が支援・参戦しなければならないことになって日本巻き込まれ(中国や北朝鮮のミサイル攻撃にさらされ)ることのないようにすること、それ以外にあるまい。
 台湾有事―そもそも中国と台湾は、政府は別々でも「一つの国」として一体(国連の代表権は中国政府にある)。中台政府間に対立・紛争はあっても国内問題であり、それに介入することは内政不干渉の原則に反し、仮に「台湾独立戦争」が起きても、それにアメリカとともに加担・加勢することには正当性はないし、巻き込まれることもあってはならない。
 朝鮮半島有事―70年前に起こった朝鮮戦争(主として米韓と北朝鮮・中国が対戦、その間米軍は日本の基地から出撃)は、休戦はしていても未だに終結はしておらず、相対峙し核・ミサイルを構え合っている。日本が傾注すべきは当事国間の戦争終結・和平協定の締結であって、戦争再開させることはあってはならない。
 北朝鮮の拉致問題があるが、奪還戦争などあり得ない。
 尖閣諸島―中国が領有権を主張し、公船や漁船が頻りに侵入してきて、海上保安庁が警戒・排除に余念がないが、軍事衝突は回避に徹して戦争に発展するようなことがあってはならない。
 北方領土―あくまで平和条約締結のうえでの返還要求に徹し、武力奪還は避けなければならない。

 ウクライナには東南部に居住するロシア人をかかえながら、ロシアを脅威とし、米欧のNATO同盟に加盟して安全保障を得ようとして、それにロシアが反発、国内の親ロシア派勢力との内戦とロシアの侵攻を招くに至ったが、ウクライナとしてはロシアの脅威に対して安全の保障を得ようとしてNATOに頼ろうとしたわけであるが、ロシアはロシアでNATOの東欧への拡大に脅威を感じ、ウクライナのNATO加盟阻止にやっきとなったわけである。そしてウクライナに中立化・非軍事化を求めた。しかし、もし、それにウクライナが応じたら、ロシアからも他の(NATOに加盟している)隣国からも侵攻されないように安全の保障を必要とする。
 日本も、憲法には不戦・非軍事を定めたものの、冷戦下、ソ連を脅威としてアメリカを頼り安全保障条約を結んで米軍駐留基地を認めてきた。しかし、それは北朝鮮・中国・ロシア等のとっては脅威。だから中国・ロシアは核軍拡を続け、北朝鮮も核・ミサイル開発・保有にやっきとなり、ロシアは千島(北方領土)を日本に返還すれば、そこに米軍基地が置かれては、それこそが脅威だとして返さない。
 こうして安全保障を自国の軍備と他国との軍事同盟に頼る。
本来なら国連が全ての国々に安全を保障する立場で、そのために集団安全保障機構として結成された。ところが侵略行為が発生して国連警察軍などの阻止・制圧行動がとられるまでの間の暫定措置として自国軍隊による個別的自衛権行使と同盟国との集団的自衛権行使を認めた。そのために各国の軍備と軍事同盟が当たり前であるかのようになり、侵略された当事国が最大限戦わなければ、国連のどの国も助けない(つまりどの国も自国の軍隊か同盟国とで守れるだけ守らなければ、国連は助けようがない)かのような考え方になってしまっている。しかしそれはおかしい。
 自分の身は自分で守れ、といってアメリカなどのように市民に銃所持を認めるのが安全とは思えず、日本のように銃刀法で禁じている国の方が安全で殺人は圧倒的に少ない。
「警察に頼らず、自分の身は最大限自分で守れ」、「国連に頼らず、自分の国は最大限自国の軍備(攻撃能力)で守れ」などというのはおかしいし、そのように武器・核兵器・敵基地攻撃能力まで持ち合ったら、安全どころか戦争の危険この上ないだろう。
 国連は核保有国であれ非保有国であれ非武装中立国であれ、どの国の安全も保証するのが当たり前なのでは。
 そもそも核兵器禁止・軍備全廃なくして恒久平和はあり得まい。それは「理想卿」なんかではなく、そうすれば世界に戦争はなくなるというのは当たり前のことなのであって、日本が憲法9条で軍備不保持・戦争放棄を定めたのは「夢想」でも「独りよがり」でも「他力本願」でもなんでもない。どの国もそうすべきだし、国連もそう仕向けるべきなのだ。少なくとも。核保有国は非核国を攻撃してはならないことにし、さらには核兵器全廃。さらには、軍備保有国は非軍備国を攻撃してはならないことにし、ひいては軍備全廃にすべきなのだ。
 今でも、「無防備地域」宣言をしている都市などには、①そこに固定した軍事施設がない、②そこに職業的兵士がいない、③そこ住む人々が戦争を望んでいない、という3つとも条件がそろっている限り、そこを攻撃してはならないことになっているのだ(攻撃すれば国際法違反―ジュネーブ諸条約第1追加議定書)。 
 非核地帯条約では非核地帯の国々には、5大核保有国は(議定書に署名・批准)核攻撃も核威嚇もしないことを義務付けている。非核地帯条約とは①東南アジア非核地帯条約(核保有国は未だ議定書に参加していない)、②アフリカ地域の非核地帯を定めたペリンダバ条約(核保有国は議定書に、米国は署名のみ、その他は批准も)、③ラテン・アメリカの非核地帯を定めたタラテロルコ条約(5大核保有国とも議定書に署名・批准)、⓸南太平洋の非核地帯を定めたラロトンガ条約(核保有国は、米国以外は議定書に署名・批准)、⓹中央アジア非核地帯条約(核保有国は、米国以外は議定書に批准)、⑥モンゴルは単独に非核地帯宣言(国連総会でその地位が承認されている)
 東南アジア非核地帯条約があるになら「東北アジア非核地帯条約」(日韓・北朝鮮も非核国として、それらの国に対して米中ロ核保有国が核攻撃をしない約束。但し北朝鮮は核放棄、日韓は米国の「核の傘」から離脱)もあって然るべき(米韓の前大統領―トランプ・ムンジェインと北朝鮮のキムジョンウンはそれぞれ首脳会談を行って朝鮮半島の非核化について話し合っている)。
 長崎大学客員教授で平和運動家の梅林宏道氏は非核地帯条約案で「核爆発装置によるか通常兵器によるかを問わず、東北アジア非核地帯に対して武力攻撃を加えない。また武力攻撃による威嚇を行わない」と規定している。つまり単に核兵器による武力攻撃のみならず、通常兵器による武力行使についても禁止として、この条約案に不戦条約としての意味合いも持たせている。
 国連が、これらを特定の都市や地域だけでなく全世界にわたって、全加盟国に義務付けるようにすればよいのだ。


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