米沢 長南の声なき声


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中国・北朝鮮には日本に戦争を仕掛ける理由・必要性あるのか(加筆修正版)
2022年02月03日

 中国・北朝鮮を「脅威だ」「脅威だ」という。向こうは、かくいう日本をどう思っているのだろうか。向こう側にしてみれば、日本は(日清戦争以来)戦前・戦中は脅威そのものだった。戦争直後は日本が新憲法で「戦争放棄」「戦力不保持、交戦権否認」を定めて脅威は全くなくなったはずが、だんだんとそうではなくなって「自衛隊」の名のもとに「再軍備」、アメリカと同盟を組み、それがますます強大化して、再び脅威になってきている。 
 そうなると中国・北朝鮮には、軍備をもち増強しなければならない理由・必要性はあるわけである。それは最大の核軍事力を持つアメリカが日本・韓国・オーストラリアなどと同盟を結んで軍事基地を置き、台湾政府とその軍を支援(武器売却・軍事訓練など)しており、それらが中国・北朝鮮にとっては脅威となっているからである。
 中国・北朝鮮は「脅威」だといっても、向こう側にしてみれば、こちら(日米韓豪)側の方が脅威なのだ。だからそれに負けないように軍備を増強しなくてはならない、ということにならざるを得ないわけである。中国・北朝鮮の軍備に対して、こちら側のそれは「アメリカの核の傘」も、敵基地攻撃能力も、「抑止力」だというが、向こう側は向こう側で自らの軍備は核もミサイルも「抑止力」のためだと同じことを称しているわけである。

 中国は、同胞が住む中国の一部だと思っている台湾(そこは日清戦争で日本から奪われ、日中戦争・太平洋戦争後、日本からは取り戻したものの、大陸での内戦に共産党軍から敗れた国民党軍が台湾に逃れて政権を維持、それが台湾政府だが、政権交代が行われるようになり、現在は民進党が政権に就いている。一方、大陸の共産党現政権は、台湾との統一を宿願としているが、武力統一は避け「平和統一」をめざして「一国二制度」―台湾は大陸の中国と同じ一つの国であるが、現状の政治・経済・社会制度・生活方式は別々でも、そのままそれを認め合い、台湾自治政府の存在と独自の軍隊も容認―を採ることを一貫した基本方針としてきた)。しかし、その台湾政府が、もしも全く別の国として独立を強行するようなことがあれば、それを制圧するべく台湾侵攻はあり得る(共産党政権トップはそれも「辞さない」と言明している)。その際、そこにアメリカが介入、台湾軍を支援して日本にある米軍基地から出撃し、日本の自衛隊がその米軍を支援すれば、それらの在日米軍基地や自衛隊が攻撃される、ということは当然あり得るわけである。

 また北朝鮮は、今、休戦中で決着のついていない朝鮮戦争が再開される事態となった場合なら、日本にある米軍の出撃基地や米軍を支援する自衛隊が攻撃されることはあり得る。

 しかし、それ以外には、中国にしても北朝鮮にしても、日本に攻撃・戦争を仕掛けたりする理由・必要性はないわけである。
 *尖閣諸島については?人の住まない岩だけの小島の領有権を中国が主張し、海警船が領海侵入を繰り返しているが、それに対応する海上保安庁の巡視船を中国海軍が攻撃して島を占領・強奪するなんてあり得るだろうか?仮に日米同盟軍が反撃・奪還戦に出なくても、日本から国交断絶という制裁を被り(それによる貿易ストップ等で中国が被る経済的不利益は島を強奪して得られるメリットに比して全く割の合わないものであり、その貿易ストップによって日本側も多大な経済的不利益を被ることはあっても、戦争して被る人的・物的損害に比べればまだマシ)、そのうえそのような横暴な行為・暴挙は国際的非難・制裁を被ることは必定。そのようなリスクを冒してまで尖閣諸島を奪うために中国軍がわざわざ日本に攻撃・戦争を仕掛けるなんてあり得まい。

 要するに中国にしても、北朝鮮にしても、台湾有事や朝鮮半島有事に際して、それに関わる在日米軍基地や自衛隊が攻撃対象となる以外には、日本が武力攻撃されることはあり得ない、ということなのである。

 こうしてみると、日本が米軍に基地を提供し、自衛隊に米軍と組んで中国・北朝鮮・ロシアなどに対抗するという軍事的安全保障体制に頼り、それを正当化するために9条を改憲するというのは的外れ。日本は憲法を変えることなく、これを堅持して、軍事などより平和外交の方に力を注ぎ、核兵器禁止条約に参加して核保有国に放棄を説得、ASEANのTAC(東南アジア友好協力条約)の「北東アジア版」結成や「北東アジア非核地帯」締結を主導するなど、その具体的な在り方を組み上げていくことこそが必要で、それによって緊張緩和(軍備増強による脅威の除去)、国際的評価と信頼が得られ、尖閣問題や拉致問題など紛争案件も粘り強く外交交渉・対話を重ねることによって解決をはかるという、このやり方こそが賢明なのではあるまいか。


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