米沢 長南の声なき声


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野党共闘はどうなるのか
2021年11月08日

 自民党主導政権にとって代わって政権を目指す野党は、自民党とは異なる政治理念基本政策を持ち、政権を獲得したうえでその政治理念を基に政策実現をめざし、自公政権では実現できない課題(安保法制・秘密保護法などの違憲部分の廃止、核兵器禁止条約の批准、辺野古基地建設の中止、脱原発、選択的夫婦別姓制度の導入など)に取り組む。そしてそのために、野党間で基本政策には違うところがあっても、基本政策の大本・政治理念では共通する野党の間では共闘して自民党に対抗し、選挙協力ひいては可能な限り政権協力も行うのが賢明。
 与野党とも各党それぞれに政治理念(保守主義・自由主義・新自由主義・立憲主義・共産主義・社会民主主義・中道主義など)を持ち、基本政策も様々持っているが、重要なのは、現実にその政治理念が現行の日本国憲法に定めている理念(自由・人権・民主主義・平和主義・法の支配など)に合致していて、その諸政策・政治活動も憲法の条項に則して忠実に順守されているか否かである。(99条には国務大臣・国会議員などの憲法尊重擁護義務が定められている。)
 この点では、自民党現行憲法に対しては(1955年結党時から改憲ー「自主憲法制定」を党是としていて)忠実度において最も劣り、むしろ共産党などの方が(その綱領を見ると「共産主義」を標榜しているが、旧ソ連や中国の共産党のそれとは異なり、主要な生産手段の社会化や「搾取の自由」制限はあっても、個々人の生活手段は私有財産として保障され、思想・信条の自由も反対政党や政治活動の自由も保障されるなど、現行憲法に矛盾はしてはいないし)その政策も、やっていることも憲法に対する忠実度では優っていると言えるのではあるまいか。
 そこで、自公などの政権与党と維新の会(政権与党の政策や法案には「是々非々で賛成もするが反対もする」としている)などの政党に対して市民連合を介して共闘した野党(共闘派野党)を峻別するキーポイントは、まさにこの点(現行憲法の理念と条項に対する忠実度で、いわば「護憲派」か否か)にあるのでは、と思われる。
 野党共闘はこの点で、「護憲派」として、自民党が主導する「改憲派」に対抗して、分断を乗り越え、しっかりスクラムを組んで共闘体制を再構築すればよいわけである。
 今回の選挙に際して共闘派野党の共通政策の第一は「憲法に基づく政治の回復」であった。まさにこれこそが政権交代を挑む野党共闘の目指す諸政策の核心点だったわけである。
 パンデミックや気候危機それに核戦争の脅威などに直面しつつある今、我々国民が諸国民とともに、世界的危機に臨んで政権を託するに足る最も望ましい政党・政治家は、前世紀に自国が戦争を起こして世界的危機を招いた代償として「英霊の涙にかえて授かった」現行憲法をむげに変えてしまうような政党・政治家ではなく、その平和・民主憲法を最大限守り生かしてくれる政党・政治家である
 来夏の参院選をめざして、その護憲派野党は早急に共闘体制の再構築を果たし再チャレンジを期さなければならないだろう。

 それにつけても、野党第一党の立憲民主党は、今回の衆院選の「惨敗」で枝野代表が退き、新代表を選ぶ党内選挙に当たって、その共闘路線を巡って揺れているが、大企業労組を主とする最大労組センター組織で反共意識の根強い「連合」の意向に従って共産党との共闘に見切りをつけて、同じく「連合」を支持基盤にしていて既に共産党との共闘には加わらなかった国民民主党(選挙後は維新に接近)と連携する方向に道を選ぶのか、それとも維新の会ととに、それぞれ独自路線をとりながら「是々非々」で与し合うのか、いずれにしても、自民党に対して「一強多弱」でバラバラ・分断された状態に甘んじる方向に向かうのかだ。しかし、これでは自民党主導の補完政党か万年野党しか未来がないことになってしまうだろう。それは護憲派の野党共闘にとっても、改憲を望まない国民にとっても最悪で、改憲勢力にとっては思うつぼ
 こうなると、それは立憲民主党一党のみならず、共闘派野党と市民連合など改憲を望まない国民にとっても、今や正念場ということにもなるわけだ。

 今回の衆院選の当選者で改憲(「自衛隊の保持を明記」「緊急事態に関する条項を新設」など何らかの改正)を(「どちらかと云えば必要」と合わせて)必要と思っている人は76%だが、政党別に見ると次のようだ(朝日新聞と東大の谷口研究室の共同調査から)。
 投票日前の候補者から聞き取った各党候補者の考え(各党で平均すると)(社—社民,共—共産,れ—れいわ,立—立憲民主,国—国民民主, 維-維新,公—公明,自—自民)
憲法改正
反対(必要ない)←―                    ―→賛成(必要ある)
共社        れ    立       公     国        自維
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防衛力強化
 社                
 共                 れ 立 公   国       自  維  
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敵基地攻撃
社        立                  自
共   れ    公      国           維
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辺野古移設
社     

れ     立         国           維公    自 
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 当選者のうち改憲「必要」派は自民党96%、維新と国民民主は全員、公明党は50%。
「必要ない」派は立憲民主53%、共産と社民は全員、れいわ67%
来夏の参院選では改憲については「必要」か「必要ない」かとで、どちらの考えの政党・候補者が当選するかだ。
 改憲を望まない護憲派の立場の人ならば、立憲民主党は共産・社民・「れいわ」の各党とともに改憲阻止を目指す護憲派野党共闘の側に結集する方向に共闘体制再構築を求めるべきだろう。

 しかし、選挙後の世論調査(11月6・7日、朝日新聞が実施)では、改憲を望まない護憲派にとっては残念ながら、このような当方の考えとは反対の方向に向かう可能性の方が強いようだ。
 岸田内閣―支持45%、不支持27%
 政党支持―自民36%、立憲民主9、維新9、公明4、共産3、国民民主1、れいわ1、社民1、支持なし29
 自民党の議席過半数超え―公明党との連立政権が評価されたから19、野党に期待できないから65
 維新の議席の大幅増―維新への期待から40、他の政党に期待できないから46
 来年の参院選で、野党による候補者の一本化を進めるべきか―進めるべき27、そうは思わない51
 「立憲民主と共産党は、外交や安全保障などについて主張が異なります。参院選で両党が主張の異なるまま、選挙協力することは問題だと思いますか」―「問題だ」54、「そうは思わない」31
 「岸田内閣のもとで憲法改正をすることに賛成ですか」―賛成40、反対36
 
 このような状況では、護憲派にとっては逆風。立憲民主党は護憲派野党共闘から離れ、国民民主や維新の側(「是々非々」の改憲容認の側)に向かうのか。

 ここで一曲。沢田研二の『我が窮状
♪麗しの国 日本に生まれ 誇りを感じているが 忌まわしい時代に遡るのは 賢明じゃない 英霊の涙にかえて 授かった宝だ この9条救うために 声なき声よ集え
我が9条 守り切れたら 残す未来 輝くよ
 麗しの国 日本を核が 歯車を狂わせたんだ 老いたるは 無力を気骨に変えて 礎石となろうぜ 諦めは取り返せない 過ちを招くだけ この9条 救いたいよ 声を集め歌おう 我が9条 守れないなら 真の平和 ありえない
 この9条 救えるのは 静かに通る言葉 我が9条 守り切りたい 許し合い信じよう♪


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