選挙の結果は岸田政権与党が過半数を確保し、補完政党の維新の会が躍進。市民連合を介して野党共闘を組んだ立憲民主・共産両党は苦杯を喫した。民意は現体制のまま政権交代も変革も望まず現状のままでいいんだという結果となったわけ。どうしてこうなったか。
安倍・菅継承政権にはコロナ対策で不満・不信が強まっていたはずが、選挙が近づくにつれ政権党にはタイミングよく感染者数が下降の一途をたどって激減、医療の危機的状況も解消し、営業や行動制限も緩和・解除されて不満は沈静化。また折から中国や北朝鮮の軍事的脅威を駆り立てるニュースが相次いだことなども影響したか。
それに現政権に対しては「緩やかな諦めと甘え(依存)」、野党には「民主党政権が一時あったもののネガティブなイメージが強く残り、自公政権には何かと不満はあっても、へたに政権交代なんかしてこれ以上悪くなってほしくないから、今のままでいいか」とか、若者の間には「知識もなく正解が分からないのに投票する方が無責任だと思われるから」とかで低投票率も影響した、といったこともあるのだろう。
いずれにしても、自公連立政権の強固な安定感に対して野党側の共闘体制には(与党側からの反共・分断攻勢のみならず、国民民主党それに立憲民主党の支持基盤でもある連合系労組が根強い反共意識から共産党との共闘に背を向けるなど)結束・安定感の点で「受け皿」として欠けるものがあったし、野党でも共闘には加わらない維新の方が「漁夫の利」を得る結果となった。(しかし、野党共闘の戦略自体は間違っておらず、自公に対抗して政権交代を挑むうえでこれ以外の上策はないわけであり、反共などに屈して共闘戦略を転換しまうようなことがあってはなるまい。)
岸田自民党の改憲公約に対して共闘派野党は「憲法に基づく政治の回復」を共通政策の第1にあげて対抗したが、結果は改憲勢力(自・公・維新3党)が3分の2を制し(国民民主党や立憲民主党などの「改憲は必要だ」と考える当選者と合わせれば76%)、護憲派は劣勢に追い込まれることになった。参院は、今は3分の2には達していないが、来夏には改選の選挙がある。維新などはその投票日と同日に改憲の国民投票を実施すべきだとさえ言い立てている。
改憲問題に対する国民世論はどうかといえば、今回の投票前・公示の時点で行われた朝日新聞の世論調査では、「自民党は憲法9条を改正し、自衛隊を明記する公約を掲げています。こうした憲法の改正に賛成ですか」の質問に、賛成が47%で、反対(32%)を上回っていた。
このように改憲に傾いている人たちをどのように説得するか。先ずは国会の憲法審査会で議論が展開され、「国民的議論」が唱導されるだろうが、改憲志向の人たちを護憲派はどのように反論・説得するのか、はたして改憲を思い止まらせることができるのか。