そもそも改憲の手順
①衆参各院の憲法審査会で―何らかの改憲・加憲事項が「一定の合意に達した」ところで、その改正文案が作成され、それが衆参各審査会でそれぞれ半数以上の出席委員の過半数の賛成で可決すれば、それを(衆院では100人以上、参院では50人以上の議員の賛成を得た上で)憲法改正原案として国会に提出。
②それが国会本会議にかけられて衆参各院とも総議員の3分の2以上の賛成があれば憲法改正の成案として「発議」(国民に対して提案)。
③それが国民投票(特別の国民投票または選挙の際に行われる投票)にかけられ、過半数の賛成が得られれば国民がそれを承認したと見なされる。憲法改正手続法-その規定
①国民投票は国会が発議した日から60~180日の間に実施。
②この間、「国民投票公報」(選挙公報にあたるもの)配付。
「広報放送」(選挙のときの政見放送にあたるもの)が行われる。
国民投票運動(勧誘)―原則として自由(萎縮しないようにと)
・個人でも会社でも政党でも自由にでき、18歳未満の年少者も外国人も禁止されていない。
・集会・演説会を街頭でも屋内でも開けるし、宣伝カー・スピーカーを使った運動も自由。
・ビラやポスター(枚数)は無制限。手作り看板も。
・メディアに意見広告を載せるのも可。
・戸別訪問も、手紙やハガキ・電子メールもSNSなどネットの利用も可能。
・個人間でなら(組織が多くの人を対象に行うのでなければ)金品・飲食物を提供して投票を働きかけるのも、罪には問われない。
・運動費用の上限や収支報告の義務もない。
・CM(広告)は投票日前の14日間(2週間)は広告放送などに規制はあるものの、それより前の期間であれば規制はない。ネット広告の規制もない。(「私は賛成」などというだけなら投票当日も流せる。)
その一方、公務員・教職員の「地位利用による」投票運動は禁止。
③投票方法―投票用紙の記入方法―賛成か反対か、どちらかを〇で囲む。
④有効投票数の過半数の賛成で成立。問題点
(1)憲法をどう変えるのか―
①現行憲法の前文から11章全般にわたって変えるか、②部分的にある条文だけを変えるか、新条項を追加する(加憲)か―その場合、どこを、どう変えるのか、或はどんな条項を加えるのか。
自民党の2012年の改憲草案は①のような全面改正案だったが、2018年の改憲素案(「たたき台」案)は②で次の4項目に絞り込み―
(ⅰ)9条改正(9条に「2」を追加して自衛隊を明記,
(ⅱ)緊急事態条項(73条の「2」を追加して内閣が政令を制定できるようにし、64条に「2」を追加して国会議員の任期を延長)、
(ⅲ)参院選「合区」解消(42条と92条を改正、各都道府県から少なくとも1人選出できるようにする)、 (ⅳ)教育の充実(26条に3項追加―大学など高等教育の無償化、89条改正―私学助成の合憲性を明確化)。
これらを項目ごとに賛否を問うことになる。
(2)質問文(問い方)が不適切だった場合―曖昧だったり複雑だったりして解かりにくければ、判断のしようがなく棄権や白票が増える。或いは「誘導質問」の懸、念も。
(3)有権者に判断材料の提供・情報開示が充分行われるのか。
(4)勧誘運動は公正に行われるのか―(広告放送には数千万円から億単位の資金が必要であり)資金力に勝る側が有利(不公平)。
政党の資金力によってCM量・広告枠(時間帯)の配分に違いが出る。
(日本民間放送連盟は「表現の自由」の観点から「テレビ広告の量的な自主規制しない」との方針。)
(5)最低投票率の規定なく、どんなに投票率が低くても―たとえば投票率40%だったとすると、その過半数55%は、有権者全体から見れば22%。つまり、たった2割台の少数でも)成立することになる。
尚、この国民投票法を制定したのは2007年(第1次安倍内閣の下、自公の賛成多数で可決成立)(2010年施行)だが、
2014年―一部改正(投票年齢「18歳以上」に引き下げ)。
そして2016年公職選挙法改正にともない、2018年、自民党が国民投票法の改正を提案したものの、ずうっと継続審議となってきた改正案で、今、採決を急いでいる案は次のようなもの―
・駅や商業施設などへの共通投票所の設置。
・期日前投票の理由に「天災・悪天候により投票所へ行くのが困難の場合」を追加。
・要介護者の郵便投票の拡大。
・投票所に同伴できる子供の範囲―「幼児」から「児童・生徒その他の18歳未満の者」に拡大―など7項目。
立憲民主党は、これらに加えてテレビCMなど(広告費の上限設定や放送局に自主規制を求めること等)の規制拡大を提案。
共産党は改正案自体に反対。