米沢 長南の声なき声


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PCR検査について―ウエブ・サイトとワイドショーから4つ
2020年07月31日

(1)6月11日の「倉重篤郎のニュース最前線―日本の奇跡は完全に虚構だ!山梨大学長・島田眞路が怒りの告発」
 山梨大学(医学部付属病院がある)学内でコロナ対応に取り組み、PCR検査のためドライブスルーを大学構内に設けるなど医療体制を整備。
 日本の特殊なコロナ対応―PCR検査抑制策―「37.5度・4日間以上の発熱」などの症状がないと診察を受け付けず検査してもらえないとされ、「検査を増やすと、軽症感染者まで入院させることになり、医療キャパがもたなくなる」(検査すると陽性が増え、入院患者が増えてベッドが足りなくなる)という理屈から、クラスター対策に終始し、PCR検査の資源を重症化ケースに集中―そのやり方で「日本は新型コロナの感染者数・死亡者数とも圧倒的に少ない」として、それを安倍首相は『日本モデル』と自賛した。
 しかし、「PCR検査はコロナに感染か否かを唯一診断できる検査法で、偽陰性率が高いとの批判もあるが、これをやらない限り、『この病気』と診断できないわけである」。
 検査上限は世界水準からかけ離れた低値にとどまり、途上国並みの実施件数。そうしておいて「欧米に比べて感染者数・死者数が少なかったことをジャパニーズミラクル(日本の奇跡)」と奇異の目で見られているが、それはまさに「虚構」。感染実態が隠蔽された危機的状況にほかならない。
 感染者数についていえば、PCR検査件数をOECD諸国の中でも最低水準にとどめることで、数字に表れる感染者数を低く抑え込んでいるだけで、相当数の陽性患者が見過ごされてきた。死者数も、検査自体が少ないだけに実数を網羅できていないと見るのが常識で、表面化したのは氷山の一角だと考えるべきだ」と。

(2)7月21日のヤフー・ニュースで「校内感染検査 対応にばらつき 保護者ら不安『PCR対象拡大を』」という神戸新聞(電子版)の次のような記事が出ていた。
 「神戸の市立中学校で教諭がコロナ感染。担任生徒と教職員79名に限定してPCR検査。学校では検査対象(同教諭から授業を受けている他クラス・他学年も)拡大を求めても、保健所は『簡単にできない』と慎重で、保護者の不安を招いている。
 PCR検査は保健所が主体となって対象を決めている。国の基準は濃厚接触者のみだが、国は感染拡大第1波の経験をふまえてPCR検査数の拡大を推進しており、検査対象の線引きは曖昧。文科省も、学校で感染が判明した際の検査対象について明確な基準を示していない。
 行政側からは『PCR検査は一定の割合で誤判定もある。やみくもに増やせばいいわけではない』との意見も。学校からは『国は、指針ぐらいは示してほしい』との声は上がっている。」

(3)7月23日テレビ朝日の羽鳥モーニングショーで、「日本ではPCR検査がなぜ増えないのか」(そのわけ)について取り上げ、玉川レギュラーコメンテーターが、経済学者の小林慶一郎(東京財団政策研究所主幹で、かねて「PCR検査の体制拡充が最も有効な経済対策」と提言、政府新設の有識者「コロナ対策分科会」メンバー)にインタビューをしてきてレポート。
 それによれば「コロナ対策では厚労省の医系技官(医師免許をもった役人)と国立感染症研究所(感染研)などの専門家が感染症対策のコミュニティー(いわば「感染症ムラ」)をつくっている。彼らがPCR検査は『精度が低く、高確率で偽陽性・偽陰性が発生する』として、『偽陽性だった場合は隔離することになる。ハンセン病対策への批判が強い中、隔離で同じように人権侵害と言われたくない』と主張しているという。」(つまり厚労省医系技官と感染症研の専門家らが、ハンセン病患者が強制収容されたのに対する国家賠償請求訴訟のように、後で偽陽性なのに強制隔離したとして人権侵害で訴えられ、追及され、裁判で負けるというような結果を恐れてのことにほかならないわけだ。)(ハンセン病の場合は、誤認といっても国全体が病気そのものを「治らない病気」で「伝染性が強く」「遺伝病だ」などと誤認し、患者を全て療養所に終生隔離するという根本的な誤りを犯したのであって、その人権侵害と、コロナウイルス感染の偽陽性・誤判定で2週間程度の隔離措置がとられて被むる損害を「同じように」人権侵害と考える方がおかしいだろう。)
 そんなことが、厚労省がPCR検査の拡充に後ろ向きであることの理由。(厚労省は「PCR検査を狭めているのか」との質問に答えて「例えば日本国民にPCR検査をすると一定の割合で偽陽性が出るだろう。その場合、陽性になることで入院したり、医療資源をひっ迫させてしまうことを考慮しなければならない」からだと。つまり「国民の命」よりも「医療資源」の維持・確保の方にこだわっているわけ。)
 「検査すると一定の割合で偽陽性・偽陰性が出る」というが、その割合は、偽陽性は、海外では10万人に1人、武漢では3人(0.03%)であり、偽陰性も1%以下にすぎないのだ、という。

(4)東京でも世田谷区は23区のうち最多人口94万人で、感染者数も新宿区に次いで多く920人超。その保坂区長が30日テレビ朝日の羽鳥モーニングショーに出演して、同区でPCR検査を誰でも(無症状でも)予約なしにいつでも何度でも定期的に受けられるようにする方針(「世田谷モデル」)を打ち出した(ニューヨーク市が1日7万件検査の実施に取り組んだのを参考に)。特に医療・介護・保育・学校などのエセンシャルワーカーの人たちには「社会的検査」として、また理容・美容室・スポーツジムそれに飲食店などの人と接する特定の職業に携わる人たちに対しても積極的な検査を実施するように準備しており、今は検査件数1日300件だけなのを2000~3000件に一挙に拡大したい、とのこと。(世田谷区の区医師会が導入を検討しているPCR検査機は、1日最大1000件の検査が可能で、24時間稼働でき、最短3時間で結果が出るという。)
 本来なら国や都がこのような検査を拡充できる制度を作ってくれたらいいのだが、それができないのだったら区がやるしかない。公費負担の方向で財源を検討し、都とも交渉しているが、政府はマスクを追加配布するとかGo Toキャンペーンなどに予算をつぎ込むよりも、こちらのほうに予算を割いてもらいたい、とも。

 その折(ニュース)、7月30日、東京都医師会の尾崎会長が「怒りの会見」―「PCR検査を都内1400か所(人口1万人に一か所、都内の小学校と同じくらい)に拡大」との方針表明―PCR検査によって感染者を見つけて隔離する(症状の軽重に応じて入院もしくはホテルなど宿泊施設で療養か自宅療養させる)ことから始め、①先ずは(新宿のような)感染が集中している地域―エピセンター(感染震源地)―で集中的にPCR検査を実施し、無症状者も含めた感染者の洗い出しを徹底する。そしてエピセンターからその周囲への感染を防ぐ。②そのために地域を限定して14日間ほど休業補償を伴う強制力のある休業要請を行う、というもの。
「コロナに夏休みはない。国会を開き、国がすべきことを国民に示し、国民、都民を安心させてほしい」と早急な対応を訴えた。(国会は6月に通常国会閉会以来1カ月超休会―毎週1回の「閉会中審査」はあるも散発的な限られた時間で首相は答弁に立っていない。7月31日野党4党が臨時国会召集を求める要求書を提出。)

 行政側は、PCR検査は「やみくもに増やせばいいというわけではない」というが、学校の一斉休校こそやみくもにやればいいというものではないだろう。
 マスクは、N95などの防塵マスクならともかく、一般に使われている布マスク・ガーゼマスクやウレタンマスク(マスクの周囲を押さえて測定すると漏れ率89.58%)、或いは不織布マスク(フィルター部分のろ過性能の試験を通ったタイプなら52%)にしても、ただ普通の着け方だといずれも漏れ率100%で、フィルター効果はゼロ。「マスク着用、着用、着用」と促し、数百億円もの税金を使って国民全世帯に配っているが、それこそ「やみくも」も甚だしい愚策。


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