米沢 長南の声なき声


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改元の政治利用―改憲へ
2019年05月11日

 元号制や天皇制自体にも問題はあるが(世襲制は理論的には民主主義と矛盾し、天皇代替わりの度に年号を変えて時代を区分するというやり方も、年代を数えるのには不便だとか)、それらはさて置くとしても、今回、問題なのは安倍首相が改元ムードを煽って、それを政治利用していることだ。
 まずは安倍首相が新元号決定に関与―一専門家に色んな案を出させ、有識者が検討、衆参両院正副議長の意見聴取、全閣僚会議で協議、といった手順を踏んではいるが、最終的には首相に一任されて「令和」と決した。
 4月1日官房長官がそれを発表し、その直後に首相が記者会見を開いて自ら説明。マスコミはそれを大々的に報じ、直後(共同通信社)の世論調査で新元号「令和」に好感をもった人は73.7%と高評、内閣支持率は40%台から50%に急上昇し、5月1~2日調査でも50%を超えた(不支持は30%余)。
 そして4月30日の前天皇退位の儀式で安倍首相が「国民代表の辞」。明くる5月1日、新元号に切り替わる瞬間に群衆がカウントダウン。その日、新天皇即位の儀式で再び安倍首相が「国民代表の辞」。そして4日一般参賀で大群衆が万歳。その前後10連休。その間、奉祝ムードが盛り上がって改元フィーバー。(令和の「和」って付和雷同の「和」なんでは?)
 安倍首相は自ら演出したそれら天皇代替わり・改元イベントと「新時代到来」の気運を、自らの野望実現に最大限利用。その野望とは―それは改憲にほかなるまい。
 前の平成時代の間、(NHKの世論調査では)改憲は、最初の頃(平成4年)は「必要なし」(42%)が「必要あり」(35%)を上回っていたのが、間もなく逆転し、半ば過ぎ(平成17年)には改憲「必要あり」(62%)の方が「必要なし」(17%)を大幅に上回り、後半にはその差がしだいに縮まっていった(平成29年には「必要あり」が43%、「必要なし」が34%)。安倍首相はそれを、改元とともに改憲ムードを煽って再び盛り返し、一気に改憲発議・国民投票にこぎつけて、祖父(岸元首相)の遺志実現を果たそうというわけだ。
 4月23日、改憲派国会議員らが開いた「新しい憲法を制定する推進大会」に安倍首相がメッセージを送り、「令和元年という新しい時代のスタートラインに立って国の未来像について真正面から議論を行うべきときにきている」と。そして自民党改憲推進本部長の下村元文科省は「令和の時代が始まる。このときこそ、国民と憲法改正のうねりをつくるときだ」と。その会場で採択された決議には「令和の憲法大改正を切に願う」などと唱っている。
 改元には、もう一つ「リセット」効果もある。これまで引きずってきた嫌なこと、都合の悪いことは、きれいさっぱり忘れてもらい、無かったことにするという効果だが、モリカケ問題―国政の私物化問題など忘れてなるものか。それに今度は天皇の代替わり改元イベントの政治利用、いわば、それも私物化だ。そんなことは許してなるものかだ!


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