米沢 長南の声なき声


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自民党と安倍内閣の支持率 なぜ高いのか(加筆版)
2019年03月01日

 朝日川柳(2月20日)から一句―「不気味です何があっても動かない―内閣支持率」
世論調査 2月12日発表のNHKと19日発表の朝日新聞で ()の方はNHK <>の方は朝日
  政党支持率―自民(37.1)<37> 立憲民主(5.7)<6> 国民民主(0.6)<1> 公明(3.3)<3> 
共産(3.1)<2> 維新(1.2)<1> 自由(0.2)<0> 希望(0.0)<0> 社民(0.4)<0>
           その他(0.1)<1> 支持なし(41.1)<41> わからない・無回答(6.7)<8>
  内閣支持率―支持(44)<41>   不支持(37)<38>
    朝日の調査では、世代別―40代以下の若年層は支持率が不支持を上回り、
                60歳以上の高年層は不支持率が上回る。
    支持する理由―「他の内閣よりよさそうだから」(51)<52> 首相が安倍さん<11>
              「実行力があるから」(16) 「政策の面」<20>
              「支持する政党の内閣だから」(12) 「自民党中心の内閣」<14>
    不支持の理由―「他の方がよさそう」<9> 「人柄が信頼できないから」(39)
              「首相が安倍さん」<17>
              「政策に期待がもてないから」 (35)「政策の面」<48>
              「実行力がないから」(8) 「自民党中心の内閣」<21>
  厚労省の統計不正問題について
    政府が発表している統計―「信用できる」(5) 「信頼が揺らいだとは思わない」<21>
                     「信用できない」(52) 「信頼が揺らいだ」<67> 「どちらとも」(37)
    問題の真相解明について安倍政権の対応は―「適切だ」<15> 「適切ではない」<61>
 統計不正の発覚後も、首相は、雇用や所得の環境が改善しているとの判断に変更はない、と説明しているが―「納得できる」<20> 「納得できない」<64>
  児童虐待について―政府の取り組みによって虐待が減っていくと思うか
            「減っていく」(23) 「減っていかない」(36) 「どちらとも」(32)
  消費税率10%引き上げ―賛成(31) 反対(41) 「どちらとも」(21)
                  引き上げに伴う対策「手厚いすぎる」(20) 「妥当」(21) 「不充分だ」(35)
  「戦後最長の景気回復」―「実感している」(8)<16> 「実感していない」(66)<78>
                   「どちらとも」(20)
普天間飛行場の名護市辺野古への移設―賛成<34> 反対<37>
   沖縄の米軍基地は日本の安全保障にとって、どの程度必要だと思うか―
      「大いに必要だ」<20> 「ある程度必要だ」<53> 「あまり必要ではない」<18>
      「まったく必要ではない」<6>
いま停止している原発の運転の再開―賛成<32> 反対<56>
  「国民民主党と自由党の統一会派結成―評価(12)  評価しない(34) 「どちらとも」(44)

 これらの世論調査から見て、自民党・安倍内閣の支持率が高止まりして、野党の支持率が低迷しているのは何故なのか、その原因には次のようなことが考えられる。   
 (1)「戦後最長の長期・安定政権」(第1時安倍政権は短命で終わり、その後、福田、麻生、民主党政権の鳩山、菅、野田と替わったが、いずれも短命で終わったのに対して第2次安倍内閣以降は安倍首相の大叔父・佐藤栄作に次いで歴代第2位の長期政権)。この間、アベノミクスと称する経済政策で「戦後最長(74ヵ月以上)の景気回復」を果たした(日経平均株価が上昇。就職氷河期と云われた数年前に比べ新卒採用が売り手市場になって雇用は改善した)と喧伝されている(しかし、それは人口減・少子高齢化にともなう人手不足によるもの。景気回復といっても、実質賃金と家計消費は低迷、庶民には実感がない)。
 (2)そのもとで人々は、安倍自公内閣には不満な(納得できない)ところも、不安なところもあるが、我慢ならないほどの切羽詰まった窮状にあるわけでもなく、その日その日はどうにか食いっぱぐれることなく暮せていること。(内閣府の2018年6月の調査―74.7の国民が今の生活に満足。18~29歳では83.2%が満足と答えている。(経済同友会代表幹事の小林喜光氏は、それに「心地よい、ゆでガエル状態なんでしょう。日本全体は挫折状態にあるのに、挫折と感じない。・・・・カエルはいずれ煮え上がるでしょう」と指摘。)
 (3)野党は、いっとき民主党政権(社民・国民新党との連立政権)で政権交代(小渕~小泉・安倍~麻生と長らく続いた自公政権と交代)を果たしたものの、沖縄の普天間基地移設問題での迷走、尖閣諸島中国漁船衝突事件などもあったが未曾有の東日本大震災とそれに伴うフクシマ原発事故に遭遇して対応に混迷を極めたあげく、あえなく自公の政権奪還を許してしまうことを余儀なくされた。それが「悪夢」としてイメージ付けられ、そんな民主党政権と比べれば、こんな安倍政権でも「はるかにまし」だというわけだ
 実際、民主党政権も連立政権だったが、普天間問題(移設は「最低でも県外へ」と言っていながら辺野古移設を容認してしまったこと)で社民党が離脱、消費税増税問題で国民新党も離脱するなど、もろさを露呈した。それに比べれば自公の連立は盤石で、揺らぐことのない「安定政権」として評価を保っているのだろう。
 (4)いずれにしろ、野党が、強固な自公連立政権にとって代わり得るだけの結束力をもった連合を結成し、それが国民の目に「しか」と認められないかぎり、内実がバラバラな野党のままでは、(「他の内閣よりよさそうだから」という理由での)安倍内閣支持は減らないし、(「他(野党)の方がよさそうだから」という理由での)安倍内閣不支持は増えないわけである。
 (但し、政党支持率は「一強多弱」で自民党<37%>が、それ以外の各党(野党で最多の立憲民主党は6%)に比べれば抜きん出て多い、とはいっても、最多は「支持する政党なし」<41%>で、「わからない」と無回答と合わせれば半分近くは、どの党も支持してはいない、というのが実態。)
 (5)要するに自民党と安倍内閣の支持率が高止まりしている最大の理由は、安倍内閣や自民党が「他よりよさそうだから」というよりも、「他(野党の中)に代われる政党がないから」ということと、どの党、どの政治家も、1党だけ(単独)では、これといって期待でき支持できるような政党はなく、政治家にも期待・支持できるような人物がいないから、という消極的な理由からなのであるまいか。
 自民党でさえ、単独ではダメで、公明党と組み、その政策を摺り合わせて意見・提案を取り入れ、或は引っ込めたりもすることによってその補完を得、政策合意のうえで、選挙協力を行って両党で多数を制し、「連立政権」でやっているわけである。野党がその自民党に対抗するには、小党分立して単独あるいは考え(理念)や政策が近く似通っている党派同士だけで組んでやったところで、同じ反自民野党なのに理念・基本政策などに違いがあるからといってその野党を排除・除外しては、選挙でその野党からも候補者が立てられれば反自民票は割れ、与党に対して勝ち目はない。したがって同じ反自民野党でありながら、特定野党を排除・除外して分立するのではなく、可能な限り政策を摺り合わせて合意に達し、候補者を調整して野党候補を一本化して(統一候補を立て)「オール野党(反自民・立憲野党)」の形で立ち向かうのでなければ選挙には到底勝てない。また選挙の時だけの選挙協力で終わるのではなく、互いに政策を摺合せて共通政策合意(政策協定)のうえ、それを打ち出して選挙に勝ち、政権を獲得(連合政権樹立)して政策実現することを念頭にしながら、野党は互いに(その政策を摺合せ、意見を調整、提案を取り入れ或は引っ込めたりもして)補完し合わなければならない。そのような相互に補完し合う関係で「オール野党」で共闘を組んで対抗しない限り、強力な自公連合には到底勝ち目がなく、受け皿として支持を獲得することはできない
 自民党側には公明党以外にも維新など補完政党があるが、それら以外の反自民野党は、自公の盤石(緊密で安定的)な連合体制に比べ、バラバラで結束できていない、という現実とともに、「一強多弱」イメージが国民の多くを支配している、それが安倍自公政権の支持率高止まりの原因なのでは
(一橋大の中北浩爾・政治学教授は1月31日付け朝日のオピニオン&フォーラム欄に「自公連立20年、野党は学べ」と題して寄稿し、次のように指摘している。     
 「自民党は公明党との連携によって、『一強』の地位を確保しているにすぎない。」「なぜ自民・公明は政策距離が小さくないにもかかわらず、安定的な連立の枠組みができているのか。その理由は、①政策調整の仕組み―閣議決定前に両党の了承を得なければならず、この事前審査制を通じて自民党は公明党に譲歩を重ねてきた。②選挙協力―両党は、衆院の小選挙区を中心に完璧な候補者調整を実現。参院選でも、公明党が候補者を立てている3人区・4人区で自民党は公認候補の数を絞り込んでいる。両党で票の融通―衆院の1・2人区で自民候補が公明党の支援を受ける代わりに、『比例は公明』という呼びかけを行う、等々。
 野党が連立政権を本気で樹立しようと考えるならば、民主党政権の失敗<社民党との選挙協力の不十分さ―票の融通は行われず、候補者調整も限られていた。その社民党との連立政権という現実を軽視、事前審査制を否定し、社民党の離脱を招いた等>を反省し、自公政権から学ばなければならない」と。)
 (6)以前の社会制度(企業と家族に依存した日本型生活保障システムなど)や(国家と個人の間に介在していた)中間集団(家族・コミュニティー・学校・会社・組合など共同体的組織)による支えが失われ頼れなくなって社会が「個人化」(集団的一体性が失われ人間関係が希薄に)。
 終身雇用・年功序列が否定され実力主義・成果主義の競争社会が肯定される風潮が強まり、勝ち組と負け組にわかれ、富貧格差が拡大。勝も負けるも自分の実力(能力・努力)しだいであり、自分の境遇は貧富も幸不幸もその実力競争の結果であり自己責任だと見なされ、多くの人がそう思い込むようになる。自己責任なんだから、国(政府)や自治体には頼れない、頼ってもしょうがない。「国が悪い」とか「政治が悪い」「与党が悪い」「野党が悪い」などと「いくら口説いてみたところでしようがないんだ」、となって政治には無関心なノンポリとなるわけである。政治に対する無関心層が増えているのは、そういったところに原因があるのでは。
 (7)政治に無関心ということは、政治権力者(政府・与党政治家)からどうされようと(消費税を増税されても、原発を再稼働されても、憲法を変えられても、沖縄に新基地が建設されようと)おかまいなしで、疑問は抱かず、批判も反対もなく「どちらでも」結構ということになり、為政者・政権にとっては実に都合がよく、有利なこととなるわけである。
 (8)競争社会では誰しも強者・勝ち組となることが望まれ、弱者・負け組になることを恥じる。そして誰しも強がりをもち、「自分はそもそも弱者、負け組なんかではない」とか「負けたのは頑張り(努力)が足りなかったせいだ」或は「つき(運)が悪かったせいだ」とか虚勢を張り、国のセーフティーネット(援助)なんかに頼るのは「格好わるい」といってやせ我慢する。(アメリカでいえば、トランプ大統領のコアな支持層となっているプア・ホワイト<白人労働者>たちが、黒人その他のマイノリティーに対して、いくら貧しくても、彼らのような政府の福祉政策に依存して暮らしている生活困窮者などとは違うんだという優越意識をもち、黒人差別には白人富裕層よりも熱心であるようなもの。)
 (9)また強者に組することによって、自分が勝ち組にいるつもりでいられるわけだ。そして強者・勝ち組が天下を制し社会を制するのは当たり前で、弱者・負け組がそれに服すのも当たり前。政界の勝ち組は自民党であり、その最強の強者は安倍首相。その権力に組して、それに従い同調するのも当たり前。それに同調せず、対抗しようとする野党や他国(中国や韓国・北朝鮮など)を「抵抗勢力」「反日の国」として排撃しがちとなる。このところの若年層の右傾化傾向はそういったところからきているのではあるまいか。
(10)若者については、麻生財務大臣は「いちばん新聞を読まない世代だ。新聞を読まない人は全部自民党なんだ」と述べたというが、それはあながち的外れでもなく、10~30代は自民党支持率が高いことも確かのようだ。(新聞通信調査会の「メディアに関する全国世論調査では昨年、新聞を毎日読む人は70代が79.3%なのに対して18・19歳は5.7%、20代は6.4%、30代は13.0%。朝日の昨年7月調査では、内閣支持率は、政治や社会の出来事を知る際にSNSを参考にする層が48%で、新聞を参考にする層32%より高い」となっている。)
 朝日新聞の曽我豪・編集委員は、「いまどきの若い者は、とは言えない」としながら、「総じて感じるのは、決め付け型の言論に対する極めて強い拒否感である。」「野党は反対だけだと聞く耳持たぬ政権にも、政権をただ完全否定するだけの野党にも、等しく懐疑的だ。その上で野党にも自民党のポスト安倍の面々にも明確な対案が感じとれないから消去法で現政権支持だと説明する声が少なくない。」ある調査(大阪市の私立高校教員の田中智和氏が、自校の3年生を対象にした政治意識・知識調査)から「安倍内閣の支持は堅調だが比較優位に過ぎないことが分かる」と(3月24日付け朝日「日曜に想う」)。
(11)統計不正問題が発覚しても内閣支持率は下がらないのは、森友・加計問題以来相次ぐ公文書やデータの改ざん・隠ぺい・ねつ造に、国民は慣れてしまっているからなのでは?(3月5日付け山形新聞・社説「公的文書、データの不祥事―国民も慣れてはならぬ」)
 このことは、国民が安倍自公政権に慣れっこになってしまっている、ということでもあるのでは?いうなれば「アベボケ」。

 以上のような諸点に、自民党と安倍内閣の支持率が下がらない理由が考えられ、またそこから野党の課題が考えられよう。


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