米沢 長南の声なき声


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「辺野古移設が唯一の解決策」なる言い分には正当性ない
2018年12月19日

 普天間―宜野湾市の住宅密集地にあって危険極まりなく住民から撤去が迫られている飛行場を、その「唯一の解決策」だとして同県内の名護市辺野古に「移設」すべく「代替施設」建設するのだというのが日本政府。
 宜野湾市の住民にとっては、とにかく同市以外のどこへでも撤去してほしいところなのだろうが、沖縄県民にとっては同県に在日米軍施設の大半が押し付けられている、その過重な危険負担をいつまでもそのままにして、普天間飛行場を撤去するにしても同県内に移設するのではなく、そこは無条件に撤去・閉鎖して基地負担を縮減すべきだというのが筋なんだろう。
 その普天間飛行場は米軍でも海兵隊の基地。海兵隊とはそもそも事に臨んで戦地の最前線を移動し続ける出撃部隊なのであって、駐留基地にずうっと居ついてその周辺地域(沖縄はもとより日本)だけを守るという部隊ではない。沖縄は朝鮮半島や台湾、或は尖閣諸島など有事に際して前線拠点として地政学上有利な位置にあるとしても、平時そこでの演習・訓練は韓国など米国以外の同盟国を交えた合同演習は(日本では沖縄であれどこであれ)できないことになっていて、グアムか韓国・フィリピン・オーストラリアなどの同盟国のどこかでやっており、在沖海兵隊は一年の半分以上は沖縄の外に出ていて、そこにはいないのだ。
 米国にとって冷戦終結後の今は戦略上、対テロ戦争への迅速な対処とアジア・太平洋の紛争地域への即応体制が必要とされていて、米軍再編で海外基地を削減し米国領内(本土以外にはアラスカ・ハワイ・グアム等)に集約、在沖海兵隊も前線拠点はグアムに移され日本を守るための存在ではなくなっているということだ。
 ところが米国政府は、在沖海兵隊はグアムに移転すれば宜野湾市の普天間基地は不要で無条件で撤去してもいいはずなのに、普天間基地撤去には代替施設が必要だとしてグアム移転計画とは切り離して名護市辺野古に新基地建設を求め、しかもその新基地建設費を日本に全額負担させるうえ、グアムへの移転経費・基地建設費もその6割を日本に負担させることにし、辺野古の新基地建設に日本側が同意しないと、グアムへの移転も実施しない、両者はセットなのだとしている。
 米国政府にとっては、たとえ制約があって使い勝手が悪く、グアムに移転すれば不要になるような基地であっても日本がわざわざ建設費を出して、タダで仕えるのであれば、それでいいわけだ。
 それを日本政府は、普天間基地は撤去しても、その代替施設を辺野古に建設して、あくまで沖縄に米軍の海兵隊基地を維持することは日本の安全保障にとって必要な「抑止力」なのだ、と言い張ってその方針を押し通そうとしているのである。
 「抑止力」といっても在沖海兵隊は守備隊のように基地に踏ん張ってその地その国を防衛する部隊ではなく敵前に出撃する部隊なのであって、平時には演習・訓練に出かけて沖縄にはいないことが多く、沖縄はもとより、日本を守るために置かれている部隊ではないのであって、抑止力にはなっていないのだ。それにもかかわらず日本政府は、それを日本の安全保障に必要な「抑止力」だとして建設に着工し、埋め立てを強行しているのは、米国政府の立場からすれば、それらは日本政府が考える「日本のための措置」なのであって一義的には「日本の問題」なのだというわけである。
 だとすれば、沖縄県民にとって交渉は、やはり日本政府を相手とする以外にないわけだが、彼らからしてみれば、日本政府が主張する「辺野古移設が唯一の有効な解決策だ」という言い分には、どう考えても正当性があるとは思えないわけだ。


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