米沢 長南の声なき声


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9条に自衛隊明記は軍事を合憲化するもの 
2018年11月05日

  最近、首相は自衛隊の高級幹部たち或は観閲式で自衛隊員に向かって「今や国民の9割は自衛隊を認めています。」「全ての自衛隊員が強い誇りを持って任務を全うできる環境を整える。」「私は(その)責任をしっかり果たしていく決意です」と訓示。「環境を整える」とは自衛隊明記改憲のことにほかなるまい。
 国民の多くが自衛隊を必要と感じ、高評価しているといっても、それは、必ずしも「防衛」(軍事)上の役割り故の評価というよりも災害救助活動や領海・領空警備など自衛隊の非軍事活動に対しての評価なのでは?
自衛隊は違憲だという憲法学者や政党も、災害救助や領域警備などの活動分野まで違憲で無用だなんて思っているわけではなく、違憲と言っているのは自衛隊の軍事機能についてだろう。
 ところが、安倍首相が「自衛隊違憲論争に終止符を打ち」「全ての自衛隊員が強い誇りをもって任務を全うできる」ようにするためとの理由で改憲しようとする、その狙いは9条に自衛隊保持を書き加えることによって自衛隊の軍事を憲法上正当化するところにある。そうすることによって堂々と胸を張ってやれるようになるのは、自衛隊員よりもむしろ首相をはじめ防衛大臣・自衛隊幹部など隊員を命令・指揮する側のほうだろう。それで首相はじめ指揮官たちは堂々と臆することなく(これまでのように9条2項の禁止・制約にとらわれることなく)自衛隊員を戦闘など軍事活動に駆り立て、隊員がその犠牲になっても憲法違反の責任を問われることもなくなるだろうからだ。要するに自衛隊員よりも首相以下の指揮官たち(自衛隊を号令し動かす側)の都合による改憲だということにほかなるまい。
 そもそも自民党の自衛隊合憲論は13条(「生命・自由・幸福追求権に対する権利については国政の上で最大の尊重を必要とする」という規定)を根拠として、自衛隊はそれら国民の権利を外敵の侵害から守るために9条の下でも例外的に個別的自衛権に限って武力行使が認められる実力組織なのであって違憲ではないとしてきた。なのにそれを「限定的」ながら集団的自衛権の行使(日本が直接攻撃を受けていなくても、我が国と密接な関係にあるアメリカなど他国に対する武力攻撃でも、場合によっては自衛隊が武力行使できるということ)までも容認する解釈改憲を既にやってのけた。今度はそれを、9条に自衛隊を明記・加憲することによって、それまでも全て異論を差し挟む余地なく合憲化しようというわけだ。しかも、そのように改憲しても、「自衛隊は今までとはなんら変わることはないのです」などとうそぶく。
 そんなごまかし改憲にだまされてはなるまい。


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