米沢 長南の声なき声


ホームへ戻る


日本に米軍基地・安保条約はまだ必要なの?
2018年10月30日

 「日米安保体制は国民の多くが支持し、米軍基地を受け容れている」と思われている。
 「総じて日本人は日本が攻撃される蓋然性は高いと思っている」とか、
 「日米同盟が日本の平和憲法とセットとして一体不可分になっている」とか、
 「(日本は)『米軍に守られている』という通念」などといった思い込みがあるが、本当はどうなんだろう?

 そもそも、日米安保条約はどうしてできたのか。アメリカは何のために日本と安保条約を結んだのか―日本を守るためなのか。それとも?
日米安保条約の成立と現在に至るまでの経緯を辿ってみると―
 第2次世界大戦―日独伊などの侵略国対米ソなど連合国の戦争―ドイツとともに日本軍が降伏  (1945)。日本は米軍によって占領。日本領となっていた朝鮮半島は米ソが南北分割占領
 1946年、新憲法制定(9条で戦争放棄と戦力不保持、それは日本がアメリカと安保条約を結んで米軍基地を置くことを想定して定めたわけではない)。
 米ソ対立―アメリカを主とする西側資本主義諸国とソ連を主とする東側「社会主義」諸国との体制間対立による二大陣営の冷戦、
 中国―国共(国民党軍対共産党軍)内戦→共産党軍が勝って中華人民共和国成立(1949年)、敗れた国民党軍は台湾に逃れて政権維持。
 朝鮮半島に北朝鮮と韓国とが建国して1950年朝鮮戦争・開始―アメリカが国連軍(安保理はソ連が欠席中に派遣決定)の名の下に韓国軍を支援・参戦(日本の基地から出撃)、それに対して北朝鮮をソ連が支援・中国が参戦、
 その最中の1951年、アメリカなど西側諸国だけで日本と講和条約―日本占領解除、同時に日米安保条約―「極東の安全のため」米軍が引き続き日本の基地に駐留することを認めるも、「日本の安全に寄与することができる」としているだけで、日本を守る防衛義務の定めはなかった。
 (アメリカと西側諸国だけの「単独講和」に対してソ連・中国・インドなども加わった全ての交戦国との「全面講和」とすべきだという運動もあり、日本は非同盟・中立でいくべきだという主張もあったのだが。)
 朝鮮戦争で在日米軍出撃にともない日本国内の治安上の不備を補うために(1950)警察予備隊を創設→保安隊→(1954年)自衛隊へと改称(再軍備)へ
 1959年砂川事件で東京地裁(伊達裁判長)「日米安保条約に基づく駐留米軍の存在は憲法前文と9条の戦力保持禁止に違反し違憲である」と。ところが最高裁は「駐留米軍は憲法にいう日本の戦力には当たらない」とし、また「安保条約のような高度の政治性をもつ条約については、その内容について違憲かどうかの法的判断を下すことはできない」(統治行為論)として判断を避ける。
 1960年安保条約改定―日米共同防衛義務(アメリカも日本を守ること)を明記、日米地位協定(米軍への基地の提供と使用・運用の細則―日本の法律に縛られない米軍の特権を定める)も。
 1962年キューバ危機(キューバ革命―カストロらが親米独裁政権を打倒、それに対してアメリカが経済制裁、革命政権打倒を画策、それに対してソ連が革命政権を支援、キューバにミサイルを持ち込み基地を建設しようとするも、アメリカは海上封鎖―米ソ激突(核戦争)の危機―日本では沖縄基地でアメリカが核ミサイル発射準備態勢―寸前でソ連がキューバからミサイル撤去して危機回避。
 1964年ベトナム戦争―日本が米軍の出撃前進基地および後方支援基地に。
 1987年、米ソが中距離核戦力全廃(INF)条約
 1989年冷戦終結―米ソ首脳会談で宣言(しかし、朝鮮半島では北朝鮮が米国と休戦状態にあるものの、その後も核・ミサイル開発など冷戦が続く)
 1991年湾岸戦争―イラクに対してアメリカ等多国籍軍が―日本から米軍出撃
 同年、ソ連解体・WATO(ソ連・東欧諸国が米・西欧側のNATOに対抗して結んでいた軍事同盟)も解体。
 2001年アフガン戦争―日本から米軍出撃、海上自衛隊インド洋で洋上給油支援
 2003年、イラク戦争―日本から米軍出撃、陸上自衛隊サマワに派遣、航空自衛隊も空輸支援
 2014年、新安保法制―集団的自衛権行使の容認―日本が直接攻撃を受けていなくても、我が国と密接な関係にあるアメリカなど他国に対する武力攻撃でも、場合によっては自衛隊が武力行使できることに。

 最近、北朝鮮に対して韓国・アメリカともに休戦状態にある朝鮮戦争の終結と非核化に向け対話(南北首脳会談・米朝首脳会談など)の動き。その一方、米ロや米中の間で「新冷戦」(ウクライナの政変に伴うロシアのクリミア併合に米欧が反発して経済制裁、最近トランプ大統領のIMF条約離脱表明、中国との「貿易戦争」など)。日本は中国とは首脳会談で「自由で公正な貿易体制」「競争から協調へ」「脅威でなくパートナー」と接近(融和へ)。
 いずれにしても、冷戦とは互いに相手の軍備を構えて睨み合っている状態でだが、もはや国家間では戦争(大量破壊・殺傷をもたらす核戦争など)できる状態ではなくなっている。(テロ・武装集団・海賊などの出没や局地的紛争はあっても、軍事同盟を必要とするような戦争はない。)

 日本にとって、国によっては我が国との間で領土問題など困難な問題を抱えている国はあるが、だからといって日米安保条約や米軍基地がなければ日本に武力攻撃を仕掛けてくる必要性のある国、国際社会からの非難・制裁を被る不利益を冒してまで武力攻撃を仕掛けてくる国などあるのだろうか。
 中国・ロシア・北朝鮮などの核軍備は、我が国から見れば脅威だが、これらの国から見れば、米軍の基地と軍港を置いて、自衛隊が米軍と一体的に軍事行動を共にする日本の方が脅威で、自国の軍備固めをしているとも考えられよう。(軍備は「抑止力」というよりも、むしろ脅威なのであって、これらの国―ロシア・中国にしても、北朝鮮にしても―核軍備を持つその理由(動機)は唯一つアメリカの核戦力に対する脅威の故なのだろう。)
 米軍基地を置く日本の国民にとってはその経費(「思いやり予算」などまで)に対する財政負担、それに基地周辺住民にとっては様々な被害と敵国から標的にされるリスク負担を強いられている。
 そのように考えれば、日米安保や米軍基地などない方が、日本とこれらの国との間では互いに脅威はなくなるし、国民・基地住民の負担もなくなるわけである。
 近隣諸国にとって日米同盟の脅威がなくなれば、これらの国々との平和友好協力関係は深まり、領土問題など懸案の問題も平和裡に(外交交渉に集中・徹して)解決に努めることができることになろうというもの(懸案問題は、これまでは日米同盟などに頼った力に訴える姿勢がむしろ外交交渉の妨げとなってきただろうし、アメリカの軍事力に頼るあまりアメリカの意向に縛られ、平和憲法に相応しい主体的な外交力を発揮することができなかっただろうからである)。

 「備えあれば憂いなし」ということで、台風や地震・津波など、いつか必ず襲来するという必然性を持つ自然災害ならば備えが必要不可欠であり、それが万全であれば憂いなしだが、中国・北朝鮮など、いつか必ず攻め込んでくるという必然性があるわけでもない国に対して「備え」(日米同盟や米軍基地などの軍備)があれば「憂いなし」というのは的外れであり、それどころか、そのような軍備は相手からは脅威に感じられ、かえって敵愾心をかきたて攻撃を誘う動機となり基地は標的となる。そのように考えれば、日米同盟・安保条約などないにこしたことはないのでは。つまり、日米安保条約などいっそうのことなくした方が合理的であり、かえって安全・安心だということにならないか。
 日米同盟や米軍基地が日本を守ってくれているというのは錯覚だろう。ソ連にしても中国にしても、或は北朝鮮にしても、アメリカ等に対抗して強がり(大国意識や強国意識)はあっても、日本に攻め込まなかったのは、攻め込んでも得るものはないばかりか、かえって損失・不利益を被ることが分かりきっていて、その気(日本に戦争を仕掛ける意志)がなかったからにほかならない。朝鮮戦争に際して北朝鮮が、或はベトナム戦争に際して北ベトナムが、日本の基地から出撃した米軍に攻め込まれても、日本が報復攻撃を受けずに、何の危険も及ぶことなくて済んだのは、彼の国が弾道ミサイルや重爆撃機などの攻撃手段・能力を持ち合わせなかったからにすぎない(あの時もし彼の国がそれを持っていたら日本は報復攻撃を受けていただろう。北朝鮮は、今はそれ―核ミサイル―を持ち始めており、もし朝鮮戦争が再開されたら、今度は報復攻撃を受けずに済むというわけにはいかないだろう。日米同盟・米軍基地がかえって危険を招くということだ。)

 要するに日米安保条約は何のためになっているのかといえば、アメリカが「日本を守る」という名目で日本に米軍基地を置いて、対ソ・対中・対北朝鮮・対ベトナムその他の軍事作戦に際する前進基地として利用するためであり、自衛隊は米軍基地を守らせ、後方支援のかたちで手伝わせるなどアメリカがそれを利用するためにほかならない、ということだ。
 アメリカから「日本を守ってもらえた」といっても、ロシア(旧ソ連)も中国も北朝鮮も、日本を侵略し日本国民に戦争を仕掛ける意図など初めからあったのかといえば、あったとは考えられまい。
 ロシアは大戦中占領した千島列島を未だに返還せず、日本と平和条約も結んでいないが、列島を返したくないだけで(それを日本に返せば、日米安保がある限り、そこに米軍基地が置かれ米軍が駐留することになるからと警戒)、北海道にまで侵攻してくるとは考えられまい。
 中国は、尖閣諸島の領有権にこだわって、諸島周辺の領海や接続水域で公船や漁船の侵犯問題でトラブルがあるが、そのために中国が日本に戦争を仕掛けてくるとは考えられまい。
 北朝鮮は、日本が米韓に組みし、朝鮮戦争以来アメリカに出撃・後方支援基を提供してアメリカと同盟し、韓国とだけ国交して過去(植民地支配)の清算をおこなったことに反発や怨念があり、拉致問題(拉致した日本人から工作員に日本語を教え込ませて、日本人になりすました工作員を韓国に潜入させてスパイをさせるとか、米韓との「冷戦」におけるスパイ作戦に日本人を利用する等ために拉致したと思われている問題)を起こし、核ミサイルで東京を「火の海にする」などと脅したりもしてきたが、米韓との朝鮮戦争の再開がないかぎり、日本を攻撃するとは考えられまい。
 もしも、中・ロ・北朝鮮が日本に核ミサイルを撃ち込んで武力攻撃をかけてくるとすれば、これらの国がアメリカと戦争になった時であり、それは日本が日米安保を結んでいて、米軍基地を置き、自衛隊に米軍支援をさせるからにほかなるまい。
 だとすれば、日米安保条約を解消し、日本に米軍基地がなくなれば、そのようなことは(日本がこれらの国から攻撃されることなど)あり得ないことになるわけだ。
 これらの国にとっては、日本が憲法9条(戦争放棄・戦力不保持・交戦権の否認)をそのとおりに守って、日米同盟を結んで米軍基地を置いたりなどしていなければ、日本を武力攻撃しなければならなくなる事態はあり得なくなろう。
 平和憲法は日米安保などとセットにしてはならないのであって、日米安保・米軍基地はもう要らない(ないほうがいい)ということだ。平和憲法とセットにするなら、日米安保ではなく、非軍事の日米友好協力条約とし、それに切り換えたほうがよいのだ、とおもうのだが、如何なものだろうか。


ホームへ戻る