安倍首相―加計学園の理事長(加計孝太郎)が友人(「腹心の友」)
昭恵夫人―加計学園が運営する保育施設の名誉園長
森友学園が新設しようとした小学校の名誉校長に就任
①戦略特区(愛媛県今治市)に加計学園岡山大学の獣医学部開校が認定、その特区指定、開校認可に際して優遇措置(特別扱い)(選定・認可にいたるその間のプロセスが「加計ありき」で進められたと思われている)―それに首相の関与が疑われる。
文科省―元事務次官(前川)が「総理の意向」などと証言、省内に記録(担当職員が記したメモ)残る。愛媛県庁にも(職員が記した記録・メモに「総理案件」とか、「首相と学園理事長が面談」し、学園の獣医学部新設計画に首相が「いいね」と言っていたなど)。
②森友学園が開校を計画した小学校の用地に国有地を破格の値引きで払下げ、その優遇措置に首相夫人の関与が疑われる。それを管轄する財務省で用地取引に際する交渉記録、決裁文書など大量の公文書改竄・隠ぺい(財務省担当局長が記録・文書は廃棄して「残ってございません」などと答弁したり、首相が「私や妻が関係していたということになれば首相も国会議員も辞める」などと言った答弁に沿うように改竄・隠ぺい・口裏合わせ等)が発覚。
いずれも首相は指示・関与を否定。しかし、それがたとえそうだ(首相は直接には指示・関与しておらず、秘書や官僚が勝手に忖度してやったのであり、首相に法的責任は問えない)としても、首相には道義的・政治的責任はあり、「忖度」せざるを得ない彼の存在がある(彼が首相でいる)限り、その「忖度」(首相をかばい、政権を守るために自発的に口裏合わせ・公文書改竄・隠ぺい)は止むことなく、このような不正・違法の再発をくい止めることはできない(官僚や職員たちの職務心得や公文書管理などをいくら厳しくしても、それだけでは再発防止はできない)。したがって安倍首相から辞任してもらうしかあるまい、ということだ。
「忖度(相手の意向や意図を推しはかる)」という場合、それには公務員が全体の奉仕者として公正・中立に徹して国民の意向を忖度するというのであれば、国民に対して無私の忠誠心と認められよう(財務省の中にも、そういう良心や正義感をもつ職員が一人いたものの、違法行為を強いられ、それに耐えかねて自殺している)。国会議員とともにその最上級の公務員たる総理大臣こそが公正無私に徹しなければならないはず。なのに、自分の「腹心の友」(加計学園理事長)には特区を指定してそこに学部新設・開校を認可、夫人の知り合い(森友学園理事長)には夫人を名誉校長とする新設小学校の用地に国有地を格安で払下げるなど、友人や夫人の知人に有利なように財務省・文科省等において行政事務の処理が為された。そして、それにともなって数々の公文書改竄・隠ぺい・虚偽説明が行われた。それに対して首相は(「私や妻が関係していれば総理大臣も国会議員も辞める」と言って)自らの関与を否定している。しかし、官僚たちが指示もなく勝手に忖度してやったものだとしても、「忖度されるリーダーは、それだけで辞任に値する」、と豊永郁子・早稲田大学政治学教授は論じている(19日付朝日新聞「政治季評―辞めぬ限り混乱は続く」)。
豊川教授によれば、リーダーへの忖度は一見「忠誠心による無私の行為」のように見えるが、それには様々な個人的・利己的な思惑や欲望(出世・昇進欲、金銭欲、将来の利得、競争心など動機)が伴っているものだ、という。その「小さな悪」が積み上がって巨大な悪のシステムとなる。「あるリーダーの周辺に忖度が起るとき、彼はもはや国家と社会、個人にとって危険な存在である。・・・・リーダーの意向を忖度する行動が、忖度する個人の小さな、しかも油断のならない悪を国家と社会に蔓延らせる。」「安倍政権の統治下の下では、忖度はやまず、不祥事も続くだろう。安倍氏が辞めない限りは。」とのことである。佐川前理財局長ら財務省の担当者らに対する市民の告発に応じて大阪地検特捜部が捜査に乗り出したものの、このほど(5月31日)「嫌疑不十分または嫌疑なし」として全員不起訴とされた。(これも検察上層部の人事権を握る政権への忖度による「初めから不起訴ありき」の決定なのでは、との批判もあり、告発した市民たちによって検察審査会への審査申し立てが行われるも、その結果どうなるかだ。起訴して裁判にかけても「疑わしきは罰せず」で、いくら疑わしくとも「証拠が十分」でなければ有罪にはできない。それが司法判断というもの。今回の不起訴判断をした大阪地検特捜部長は「佐川さんは(嫌疑不十分ではあるが)『嫌疑なし』という証拠はない」とも語っている。)
このように不起訴となって、刑事事件としては誰も罪には問われず、法的責任が課されることはなくても、この間の経緯と結果はどう見ても異常・不公正であり(森友学園には国有地を8.2億円値引きして1億3,400万円で払下げ、加計学園には京都産業大学などライバル校を排する有利な特区選定をして、その愛媛県今治市に新設する獣医学部の校舎建設用地・評価額36億7,500万円を市が無償譲渡、建設費補助金に県と市が合わせて約96億円もの税金がつぎ込まれる)、誰よりも公正無私が求められる首相の政治的・道義的責任を問わずには済まされまい。それは、単なる些細なスキャンダルとして片付けられるようなものではなく、国民に計り知れない政治不信を招き、社会のモラル(社会全体の規範意識)を掘り崩す結果を招くからである。6月4日森友学園問題について財務省が内部(職員の聞き取り)調査結果と関係職員の処分を発表した。但し、そこでは国有地取引きの違法性については問うてはおらず、文書改ざん等のことだけを調査対象にしている。そこでは、財務省理財局長だった佐川氏が文書改竄の事実上の指示を認定(昭恵夫人や政治家の名前が記載されている文書は「このままでは外に出せない」、「最低限の記載とすべきだ」などと指示。それは大臣に一切報告せぬままに、自らの国会答弁とつじつまを合わせ、国会審議で野党などの質問につながり得る材料を極力少なくして紛糾を回避するために行われた、としている。)安倍首相夫妻への忖度の有無、「私や妻が」云々の総理答弁が改竄のきっかけとなったか否かについては、「調べた範囲では、それはない」と事実を否定しているが、実は、そのことは職員に質問してはいないとのことだ。処分は佐川氏(停職3か月)をはじめ省内の職員20人だけ。肝心なのは、その改ざん等は何故、誰のために行われたのか、だが、それは明にされていない(麻生大臣いわく、「それが分かりゃ、苦労せんのですよ、どうしてそうなったのか分かりません」と。それは大臣たる彼に責任能力が欠如しているということであり、他に替ってもらうしかないということだろう。それに「分からん」なら、昭恵夫人と夫人付政府職員や財務省幹部を証人喚問して訊けばいい話だ)。
安倍首相は「膿を出し切る」というが、その膿の源は他ならぬ彼自身にあり、その根を絶たないかぎり、膿を出し切るにも尽きることはあるまい。このような首相の下で、リーダーに信を置く政権党(自民・公明)の議員の多数決で「重要法案」(働き方改革法案・カジノ法案・TPP関連法案など悪法)が強行採決されるのは良心的な国民にとっては到底納得し難いところだろう。
世論調査では、森友・加計問題について首相の説明には「信用できない」が7割(12・13日共同通信の調査)、安倍政権が疑惑解明に「適切に対応していない」が75%(19・20日の朝日新聞の調査)で、大多数の人々が不信感を持っている。ところが、内閣支持率は朝日調査では36%(前回31%)で下げ止まっている。その支持する理由で一番多いのは「他よりよさそうだから」が51%で、要するにそんな自民党内閣でも野党よりはマシだろうから、ということなのだろう。政党支持率では「支持政党なし」が39%で一番多いが、自民党支持は36%(前回33%)で、立憲民主が9%、公明党・共産党がともに3%、維新が1%、それ以外の野党は0%と「一強多弱」であることには変わりない。
しかし、「市民と立憲野党の共闘」を頼みとして、諦めずに頑張ってもらうしかあるまい。