8月29日、中距離弾道ミサイル、北海道上空軌道を飛び太平洋上に着水
この間、米韓は定例の合同軍事演習
9月3日、核(「水爆」)実験
11日、国連安保理、経済制裁決議
15日、中距離弾道ミサイル、北海道上空軌道を飛び太平洋上に着弾
(飛距離は前回を超え、グアム島に向ければ、そこに達する距離)
対応―米日韓は圧力重視(「圧力をかけて北朝鮮を対話のテーブルにつかせる」、「外交努力で失敗すれば軍事的選択肢しかなくなる」と)、特に日本政府は圧力一辺倒(安倍首相「今は対話の時ではない」「対話のための対話は意味がない」「必要なのは対話ではなく圧力だ」と。
韓国大統領は圧力強化の一方、「戦争だけは防ぐ」と―大統領の外交ブレーン(特別補佐官)は「制裁と圧力の限界を認めるべきだ。現実的に核の廃棄を前提にした対話は難しく、核開発の凍結(これ以上の実験・開発は止める)から対話を始めるべきだ」と対話による解決を訴えている。
中ロは対話重視(あくまで対話による外交的解決を望む)
制裁圧力のジレンマ―オバマ前大統領の「戦略的忍耐」(北朝鮮が核放棄・非核化の意思を示さないかぎり交渉には応じない)方針は失敗だった(かえって北朝鮮が核・ミサイル開発を進める結果になってしまった)、とトランプ大統領も思っている。
カーター元大統領(1994年の朝鮮半島危機の際、訪朝して解決)9月12日アトランタで演説して、米国は北朝鮮の指導者と直接話し合い、朝鮮戦争の休戦協定に代わる平和条約を議論するべきだとし、北朝鮮が望んでいるのは、北朝鮮が米国あるいはその同盟国が攻撃をしない限り、米国は北朝鮮を攻撃しないということを保証する条約だと指摘。「米国が北朝鮮に話しかけ、彼らを人間として尊重して扱わない限り、我々はいかなる前進もつくれないだろう」と。
18日、米国防長官、韓国に射程の短い戦術核兵器を再配備する可能性(否定せず)、サイバー攻撃で北朝鮮の首脳以下の指揮系統を混乱させることも検討?(20日付け朝日新聞)世論調査
9月11日発表
*北朝鮮の行動に不安を感じるか 「大いに感じる」 52
「ある程度感じる」 35
「あまり感じない」 7
「まったく感じない」2
*安倍首相は「今は対話の時ではなく、圧力強化が必要だとして国際社会の連携を呼びかけているが、そうした対応を評価するか
「大いに評価」 21
「ある程度評価」 48
「あまり評価しない」 18
「まったく評価しない」7
*制裁に石油の輸出禁止が必要か 「必要」 49
「必要ない」 12
「どちらともいえない」32
*安倍内閣への「支持」44「支持しない」36
9月8~10日
*北朝鮮のミサイルについてどう感じているか
「大きな脅威・不安」 49.7
「脅威を感じているが、差し迫ってはいない」41.7
「感じていない」 5.3
「わからない、答えない」 3.6
*北朝鮮に核やミサイルの開発をやめさせるために、どのような対応がのぞましいか
「対話を呼びかける」 29.4
「経済制裁など外交的な圧力」 49.7
「軍事行動など武力行使」 10.6
「わからない、答えない」 10.3
*北朝鮮情勢に安倍政権は、どのような外交的対応をとることがよいと思うか「アメリカや韓国との連携を柱にする」 31.9
「中国やロシアの協力も得られるように対応」56.4
「わからない、答えない」 11.7
*今後の日本の防衛政策はどうするべきだと思うか
「差し迫った脅威なら相手の基地への先制攻撃を本格的に検討」12.3
「ミサイル迎撃システムの強化など防衛力を高める」56.7
「特段の対策は必要ない」17.7
「わからない、答えない」13.4
*安倍内閣への「支持」42.1 「支持しない」41.0 「わからない」 17.0
<読売新聞> 9月8~10日
*北朝鮮の核実験やミサイル発射をやめさせるには対話と圧力のどちらを重視すべきか
「圧力重視」51
「対話重視」38
*北朝鮮もんだいへの対応をめぐる安倍首相の一連の首脳外交を「評価する」 50
「評価しない」37
*イージス・アショア(地上型迎撃ミサイル)導入方針に「賛成」64
「反対」22
*安倍内閣への「支持」50「支持しない」39
<朝日新聞> 9月9・10日
*北朝鮮のミサイル発射や核実験に対する、安倍内閣の一連の対応を
「評価する」 39
「評価しない」39
*北朝鮮が弾道ミサイルを発射した際、日本政府や自治体による国民の情報提供のあり方は、適切だったか 「適切だった」 42
「適切ではなかった」39
*北朝鮮のミサイルや核実験に対して、日本政府は次のどちらにより重点を置く方がよいか
「圧力の強化」40 「対話の努力」45
*安倍内閣への「支持」38「支持しない」38これらの世論調査では、いずれも支持率は上がって、朝日は不支持と同率だが、他は3ヵ月ぶりに不支持を上回っている。
庶民感覚では、ただ闇雲に「脅威だ、脅威だ」「とんでもないことをする、何をするかわからない怖い国」「無法者政権」「極悪非道なならず者国家」「狂人国家」、「(むやみ)やたらだ」「聞き分けがない、駄々っ子みたい」「バカなことをするもんだ」「迷惑なこと、この上ない」などといった印象をもち(そう見られてもしかたない側面も多々あることも確かだが)、「こっぴどくこらしめてやればいいんだ」「戦争になったらなったで、しかたない」といった思いをもつ向きが多いのでは。(トランプ大統領の国連演説は、そのようなタカ派的庶民感情ウケするポピュリストのアジ演説の如きもの。安倍演説はこれに呼応。)
しかし、我々は「奴らはどうかしている」「(まったくやたらで)どうしようもない」などと(彼らのやていることには何らかの理由があるはずなのに、そこまで考えが及ばない)思考停止に陥らず、想像力も働かせ、もっと冷静な理性的な目で見なければ。彼らはいったいどうしてそんなに核・ミサイル開発に執着するのか、そもそも、彼ら(北朝鮮の為政者)の(核・ミサイル開発の)目的・意図はどこにあるのかを。
思うに、先の大戦で日本が降伏して、その植民地支配から独立することになりはしたものの南北別々に建国し、統一を巡って両軍が激突、南の韓国軍をアメリカが支援(司令官はマッカーサー、司令部は東京、米軍は日本の基地からも出撃)、それに対して中国は北朝鮮を支援して、3年間にわたって激戦(朝鮮戦争)(犠牲者は400万人前後、この間、アメリカは原爆使用を企図、大統領は断念、マッカーサーは投下実行を主張したが解任)、休戦協定が結ばれ結局元の境界に戻って両軍の対峙は未だに続いている。米軍は未だに韓国と日本にも基地に居座っている。
北朝鮮にとっては、米韓との戦争は休戦状態ながらも、未だに終結してはいない。彼らからしてみれば、未だ戦争は続いているのだ。だからこそ、武器は捨てるわけにはいかず、米韓の新兵器に対抗するにしても、かつてのようにソ連や中国から(両国とも韓国と国交して)支援(武器援助)も見込めなくなって独自開発にとりくまなければならず、通常兵器では到底適いそうにないとなれば、核・ミサイルで対抗するしかないとならざるをえないわけである。(アフガニスタンのタリバン政権も、イラクのフセイン政権も、リビアのカダフィ政権も核兵器がないばかりにあえなく崩壊した、その二の舞を踏みたくないと思っている。)
このあたりを考えれば、そこには、彼らなりに必要やむをえない事情があり、或は彼らなりの正当性(大義名分・言い分)があってことなのだろう。(それは、アメリカが、自らの核・ミサイルは「抑止力だ」として正当性を主張しているのと同じなのであって、もし北朝鮮の核・ミサイルは不当であり、放棄すべきだというならば、アメリカの核・ミサイルも不当であり、放棄すべきだということになる。核兵器禁止条約では、核兵器は大量破壊・虐殺をもたらす残虐兵器であり、どの国の核兵器にも正当性はなく放棄すべきだとして多くの国が合意したが、その立場から言えば、北朝鮮の核兵器にもアメリカの核兵器にも正当性がなく、ともに放棄すべきだ、ということになるのだが、日本政府は条約に反対してアメリカの核兵器は容認し、その「核の傘」を利用していながら、北朝鮮の核は不当なものとして放棄を迫っているのだが、その言い分は説得力を持ちえず、受けつけられていない。)
それを、北朝鮮に対してだけ、核・ミサイル開発・保有は不当であり放棄せよと一方的に非難・制裁圧力を加えるようなやり方では、かれらは納得し難いのだ。彼らからしてみれば、もし、そこで、核・ミサイルを放棄してしまったら、通常兵器・核兵器ともに圧倒的な米韓の軍事力の前に、たちまち無力化して、協議・交渉に入るにしてもアメリカ側のペース・思惑どおりに話が進められ、事が運ばれてしまうことになる、それは未だ決着のついていない戦争に降伏したも同然というものだろう、と彼らには思えてしまうのだ。(原爆を喰らって無条件降伏して未だにアメリカ言いなりに軍事的従属に甘んじている日本のような屈辱には到底耐えることはできない、という威信へのこだわりもあるのだろう。制裁圧力に屈して、核・ミサイルを放棄させられ、その上で米韓側の思うがままに話しが進められ、事が運ばれる、そのような対話・交渉では、彼らにとっては、それこそ意味がない。対話・交渉は、あくまで対等な立場で行われなければならないと思っているのである。(だから、国連安保理でどんなに制裁決議を繰り返され強化されても、屈服せず核実験・ミサイル発射実験は続行し開発をやめない。「北朝鮮は雑草を食べてでも、自国の安全が保障されないかぎり、核開発はやめないだろう」とロシアのプーチン大統領が言ってるように。それでその欠乏に国民が耐え切れず、脱北者が激増し、不満を爆発することも考えられるが、その矛先が権力者に向けられる前に、権力者や軍は「死なばもろとも」とばかり、自暴自棄的に対米戦争に走る可能性の方が高いとも考えられるだろう。かつて日中戦争を展開した日本に対してアメリカは石油禁輸、イギリス・オランダ・中国などとともに経済封鎖、窮地に陥った日本軍は「苦し紛れ」というか「一か八かの賭け」に走って真珠湾奇襲攻撃から太平洋戦争に突入した、その前例?もある。その結果、降伏して大日本帝国は崩壊して民主化したが、戦災と犠牲者は悲惨を極めた。北朝鮮に対する制裁圧力は「政策の転換―核・ミサイル開発の放棄―を促すため」と言いながら、それで「ぎゅうぎゅう」追い詰めていけば、戦争なっても北朝鮮国家はもっと簡単に崩壊するのかもしれないが、限定戦争(或いはインターネット・コンピュータ上でのサイバー戦争もあるが)で犠牲者も戦災も軽微なもので済むのかどうか、核戦争となって韓国はもとより日本にまで惨害が及ぶという最悪の結果をも想定しなければならないだろう。
そのような北朝鮮に対して、あのような(アメリカや日本政府が主張するような、先ず北朝鮮が核・ミサイルを放棄するという前提条件がなければ話し合いには応じない、という)制裁圧力のやり方では、核・ミサイルを放棄させるのはどう考えても難しいし、戦争―朝鮮戦争再開―引き起こす結果を招きかねないという最悪のリスクをも伴うことを考慮に入れなければならず、徹底制裁を強行するならばそのことを覚悟しなければならない。要するに、事はそんな簡単なものではないということだ。そのことを考えれば、制裁の繰り返し強化とそれに対する反発・威嚇の応酬、緊張の激化、そのあげくの軍事衝突から戦争に発展する、などということないような方法で(「対話のための対話は意味がない」とか「核・ミサイル開発を放棄しなければ対話には応じない」などと言って「核兵器放棄入口論」にこだわらず)、「前提条件を付けずに、とにかく対話」に入ることだ。「何のための対話か」といえば、先ずは、朝鮮戦争―休戦はしているものの未だ終わってはいない―を終結させること(休戦協定から平和協定へ)。そこで、米韓は北朝鮮国家の存立を保証し、攻撃されない保証を与え、国交正常化。そうすれば敵対関係を解消され、北朝鮮は核もミサイルも不要となってそれらは放棄できることになり、朝鮮半島ひいては北東アジアの非核化(そこでは核兵器は使わず持ち込まない非核地帯とすること)も可能となる。
それに、日本も(小泉首相当時の日朝ピョンヤン宣言を再確認して)国交正常化すれば、日朝間に人的交流・往来が広がり、拉致被害者とその家族の相互往来・帰還への道も開かれる。
(*ピョンヤン宣言―日本の植民地支配を謝罪、日朝国交正常化交渉の再開、国交正常化後の経済協力約束、朝鮮半島の核問題解決のための国際的合意の順守、ミサイル発射の凍結など明記、この時の首脳会談でキム・ジョンイルは拉致を認めて謝罪していた。これらは、今は有名無実化しているが、局面が変われば、北朝鮮との交渉で基礎になり得る。)何が何でも「さらなる制裁(圧力)か核放棄に応じる(そのための対話)か」と迫るよりも、「とにかく、朝鮮戦争に終止符を打つための平和協定を主要テーマとする話し合い」、この方が先決であり、現実的で、戦争リスクを回避でき、核放棄へ導く早道でもあろう。
この視点が、安倍政権はもとより各党・マスコミにも、ほとんど見られず、論ずること報じられることといえば専ら「制裁強化」それに対して「さらなる核実験・ミサイル発射」、「(アメリカが軍事行動に踏み切る)レッドラインはどこに」「ミサイル防衛」「Jアラートでミサイル避難訓練」等々、それに自衛隊と日米同盟による安全保障と9条改憲。
しかし、今われわれ日本国民が叫ばなければならないのは「とにかく戦争するな!朝鮮戦争を再開するな!平和協定を結んで戦争を終結しろ!」ということなのでは。