米沢 長南の声なき声


ホームへ戻る


政治道徳の退廃―モラル崩壊
2017年04月18日

 「政治」というと統治や外交にあたって相互の利害を調整し、人をまとめ、事を治めることで、その力量・手腕がある人のことを「政治力がある」とか「政治的手腕がある」という。その際、かけ引きや権謀術策を弄して自分に有利な結果を導こうとし、或は力(武威)によって自分の利益・意見を押し通して人々や相手国を承服させるといったことが行われ、あたかもそれが常態で、政治とは、とかく、「綺麗ごと」ではない非道徳的なものと思われがちだ。しかし、ビジネスには商業道徳があるのと同様に、政治には政治道徳というものがある。
 日本国憲法前文には「我らは、いずれの国家も自国の事のみに専念して、他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は普遍的なものであり、この法則に従うことは自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務である」という文言がある。その政治道徳は国家間の外交関係のみならず、国内政治においても踏まえなければならない政治原則だろう。
 その政治道徳(ポリティカル・モラリティー)が今、国内外で踏み外される傾向にあると思われ、次のような諸点でそれが見られる。
(1) 独善的なパワーポリテクス―武力による威嚇と行使
 アメリカ―圧倒的な核軍事力占有、超大国特権自認国家―それがテロや弱者(貧者)の兵器開発を招く 
          国際法―国連憲章は安保理の制裁決議がある場合と侵略された場合の自衛権行使以外は武力行使を認めていない。核兵器や化学兵器など大量破壊兵器を保有・使用の疑いがあるからといって、自国が侵略されてもいないのに、また安保理決議もなしに勝手に「懲罰」攻撃を行ってはならない―なのに、それを無視
             イラク戦争
             シリアにミサイル攻撃(化学兵器を使用したとの理由で)
             北朝鮮(GDPは山形県のそれに相当する程しかない。アメリカに対して求めてやまないのは平和協定と体制存続―生き残り)に対して平和協定の締結(朝鮮戦争以来の戦争状態の完全終結)の交渉要求にアメリカは応じない、北朝鮮はそのアメリカに対して対決政策―核・ミサイル開発と瀬戸際政策(挑発的な外交)、その核・ミサイル開発・実験に対して経済制裁とともに軍事圧力―トランプ政権は先制攻撃も選択肢だと威嚇・・・・「北朝鮮が脅威」というが、先方から見ればアメリカこそが脅威で、米韓合同軍事演習には「斬首作戦」も組まれていて、政権トップにしてみれば何時寝首をとられるかもしれず、夜も眠れないほどの恐怖も。

         国連における核兵器禁止条約に反対、その交渉会議に不参加(ボイコット)―英仏中ロなど5大核保有国とNATO諸国などのアメリカの同盟国も反対・不参加
    日本も、唯一の被爆国でありながら、アメリカに追従して反対・不参加
    日本はアメリカにべったり(「100%共にある」)寄りそい、核の傘に。
(2)公平性の欠如―権力の私物化
  忖度政治・行政―首相がその教育観に共鳴する一学校法人に異常な安値で国有地売却が行われたのは、首相(或いは夫人)の意向をくんだ財務省などによって行政が歪められた結果ではないか、という疑惑がもたれている。
  官僚の勝手な忖度も問題だが、首相自らが(4月17日銀座の商業施設の開店行事で、売り場の紹介原稿に書かれていない自分の出身県・山口県の物産を店頭に置くように)冗談半分とはいえ、ぬくぬけと「よく私が申し上げたことを忖度していただきたい」などと発言したという。まるで「忖度」の催促であり、悪代官が商人(あきんど)に対して「言わずとも分かろうというものよ、のう」とやるようなもの。
(3)権力の乱用・・・・「共謀罪」法案(組織的犯罪処罰法の改正案)
 市民に対して監視・通信傍受・盗聴・盗撮・スパイ・密告情報の収集―官憲による(嫌疑ありや否やの)判断しだいで市民がいつのまにか監視・捜査対象にされ、実際監視はされなくても、どこかで監視されているかもしれないと委縮してしまう。
(4)ポスト真実―不都合な真実の隠ぺい、フェイク情報流布、デマゴギー

  問題は、そのような政治・政権に対して国民が無批判で、それに支持を寄せている向きが多いこと。そういう国民にも問題―主権者としての責任感・真面目さ・道義心・政治的リテラシー(政治的教養)など―政権与党に無批判に追従・迎合(野党軽視)―お任せ民主主義―政権寄りのマスコミにも問題―「一強」は「野党がふがいがないからだ」(19日の報道ステーションでコメンテーター)という向きがある(それはそうかもしれない)が、そうさせている国民(主権者)の側にも責任があるのではあるまいか。それにマスコミの責任も―野党には応援もせず、期待もせず、「激励の喝」もない。野党共闘を求める「市民連合」の動きがあるも、マスコミはそれには冷ややかで、ほとんど取り上げることもなく、政権与党寄りの報道が多い。

 朝日新聞が4月20日付「憲法季評」に蟻川恒正・日大教授の「真実に生きる―自らの言葉と歩む天皇」と出する評論が掲載されていた。それに天皇の言葉として「やはり真実に生きるということができる社会をみんなで作っていきたいものだと改めて思いました」「今後の日本が、自分が正しくあることができる社会になっていく、そうなればと思っています。皆がその方に向かって進んでいけることを願っています」という言葉(2013年に10月熊本県水俣市を訪れて水俣病患者の話を聞いた後に述べた言葉)を紹介していた。
 ”live true”(真実に生きる)"do justice”(自分が正しくある)―これは天皇の言葉だが、安倍首相やトランプ大統領、それに日本国民・米国民すべてに、そうあってほしいものだと思い知らされる。


ホームへ戻る