米沢 長南の声なき声


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パワー・ポリティクスとピ-スフル・ポリティクス―どっちのやり方が適切か?
2017年02月16日

 「安全保障環境の厳しさ」―「中国の脅威」・「北朝鮮の脅威」・「テロの脅威」
 次の二つのうち、これらに対応するより現実的・効果的で確実な方法はどちらか?
(1) パワー・ポリティクス―権力政治・「力による平和」・覇権主義
 国益第一主義―自国の国益ファスト(優先)
 軍事・経済・政治的手段を弄して互いに牽制・せめぎ合い(挑発の掛け合い)で、自らの利益をはかる。
 「積極的平和主義」と称する「軍事に依拠した平和主義」―パックス・アメリカーナ・サブ・ジャポニカ?
 日米同盟ファスト路線
  日米同盟は「日本の外交・安全保障の基軸」だとか「アジア太平洋地域さらには世界全体の安定と繁栄のための公共財」(要するに「世界の警察官」―トランプは選挙戦では、それは辞めると言っていたはずだが)だと正当化。
  安倍・トランプ会談・共同声明で「核および通常戦力の双方によるあらゆる種類の軍事力を使った日本の防衛に対する米国のコミットメントは揺るがない」と。
  日米(トランプ・安倍)の「親密な信頼関係」なるもの―①敵対国に対して「抑止力になる」、それに対して「やっかむ国があってもいい」)と岡本行夫氏(外交評論家)―しかし、他の国々の間に、それを快く思わず、不信や敵意をつのらせる結果を招くようなことがあっていいものか?②「ノー」と言える信頼関係なのか、それとも決して「ノー」とは言わずに絶対に従う信頼関係なのか?
  米軍の駐留経費負担(74.5%を日本が―それが「手本」になっているとマチス国防長官)、沖縄基地など県民の大半が撤去を求めているのに(正当化)
  アメリカの核兵器保有を「核の傘」「核抑止力」として正当化―国連で加盟国が核兵器禁止条約の交渉に入ることに合意する決議に日米両国政府ともに反対―アメリカなど特定の国にだけ核保有を特権的に認めるようなことがあってよいのか。それでは世界中の全ての国が核兵器を持たなければ安心できないことになる。北朝鮮は「米国が我が国を脅す以上、我が国にも自衛のために核が必要だ」となり、日本も「北朝鮮が核を持つ以上こちらも必要だ」となるだろう。
 軍事的「抑止力」とは、要するに武力による威嚇にほかならず、「やるならやってみろ」と「挑発」することにもつながり、それで敵対国あるいは敵対しそうな国々を牽制できるのかもしれないが、彼らからみれば嫌がらせで反発を駆り立てるもの(北朝鮮の核実験・ミサイル発射実験も、自らは「抑止力」と称している)。日米同盟はそのような軍事的「抑止力」。   
 それ対する北朝鮮―朝鮮戦争は休戦状態にあるも未だ終結していない、その対戦国アメリカとその同盟国(日韓)に対して核・ミサイルを(抑止力あるいは戦争再開に際する備えとして)開発・配備(それに対して米日韓は自分側には全く非はないかのように、北朝鮮が核・ミサイル実験を繰り返す度に、一方的に「挑発行為」などと非難、制裁圧力を強めるも、北朝鮮は尚も屈服せず核兵器開発・実験を重ね続けている)―互いにチキンレース(「要求を受け入れるか、さもなかれば戦争だ」と迫る瀬戸際戦術)―暴発の危険。
   オバマ政権は「戦略的忍耐」と称して無視戦術(軍事作戦はひかえるも、平和協定の締結・体制存続などの要求にも応じない)―北朝鮮のチキンレースを断念させることできず(失敗)。
   それに対してトランプ政権は?―「戦略的忍耐」転換も、軍事作戦強行(空軍だけで核施設攻撃など)か、それとも平和条約の締結、北朝鮮の体制存続保証へ踏み切るのか
          
 中国は急速に経済力・軍事力を増強して日本を凌ぐほどの大国にのし上がり、東シナ海(尖閣諸島・ガス田の領有権を主張)、南シナ海(人工島建設など)海洋進出。それに脅威を感じ、それら(現状変更)を阻止・抑止すべく日米同盟を強化。島々や海域の権益を争う―軍事衝突の危険。
 
 人々や国々を民族・人種・宗教・政体などの違いでマジョリティー(多数派)とマイノリティー(少数派)、敵・味方に分断して敵対させ、互いに憎悪・排斥→テロ
 (藤原帰一・国際政治学者によれば、「社会を敵と味方に峻別する政治」―「国家の安全を脅かす敵国、あるいは国内に潜んで国民の安全を脅かす反政府勢力など、国家の内外から国民の安全を脅かす勢力に国民の目を向けさせ、そのような外的と内的との闘争によって政治権力を正当化する。恐怖によって国民の支持が動員されるのである。」)
 テロとの戦い―軍事介入→憎悪の連鎖から、かえってテロ拡散とその被害拡大を招く
   9.1同時多発テロ→対国際テロ組織アルカイダ―アフガン戦争・イラク戦争(数十万人の民間人犠牲→中東からアフリカ・ヨーロッパにテロ拡散、イラク~シリアにISと称するテロ国家建設、それに対するイラク政府軍・シリア政府軍による攻防、ロシア・アメリカなどが軍事介入→1,000万人超もの難民(フォトジャーナリストの安田菜津紀さんによれば「ISを生んだのはイラク戦争で、それを仕掛けたのはアメリカとイギリスです。支援したのは日本です。その責任を見つめることが必要」「戦闘を止めさせるためには、軍事対軍事ではなく、人道支援こそ必要」) 

 このようなポリティクスのやり方のほうが、戦争やテロが起きないようにし、安全保障にとって、より現実的・効果的で確実な方法なのか。

(2) ピースフル・ポリティクス―非軍事平和安全保障
 国民益ファスト―国益よりも自国民を含めて諸国民の利益と安全をはかる。
 世界の現実―経済活動・人の移動・環境・エネルギー・人権問題などグローバル化―国家間の競争・攻防より、むしろ人間としてお互いにつながりあった関係(普遍的なヒューマニティー)が求められる―「全世界の国民が等しく恐怖と欠乏から免れ平和の裡に生存する権利を有することを確認する。」「いずれの国家も自国のことのみに専念して、他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は普遍的なものであり、この法則に従うことは自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務である」という憲法前文の規定が重要性を増す。
 日本国憲法9条路線―戦争放棄・非軍備・非同盟―それによって他国の安全(他国への不可侵)を保証する(9条はその保証でもある)。
 真の意味での平和主義―平和を、目的として目指すだけでなく、手段においても(非軍事平和的手段で)。
 「最良の防衛手段は防衛手段を持たないことだ」(アリアス・元コスタリカ大統領―同国では憲法で常備軍としての軍隊は置いていない)
 「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」安全と生存を保持―どの国の国民をも敵視せず、ないがしろにせず、特別視もひいきもせずに等しく接する。
 分断・敵対から平和・協力へ―平和の地域共同体―米中など大国から自立、あらゆる紛争を平和的に解決(武力行使の放棄)―それぞれ平和地帯宣言、非核地帯条約
  東南アジア諸国―ASEAN共同体 結成・・・・南シナ海行動宣言(DOC)
  中南米カリブ海諸国―CELAC共同体 結成
 (北東アジアには未だ―日本・中国・韓国・北朝鮮・ロシア・アメリカなどが関わるが、構想段階)
 対テロ―人道主義的予防対応―難民支援、食糧・灌漑水利・医療・保健・衛生・環境保全・教育などの支援―民間のNGOと協力、国を超えた連携―丸腰でこれらの支援事業活動に鋭意当たる人たちや国に対してテロや戦争を仕掛ける国や勢力などあり得まい。

 このようなポリティクスのやり方のほうが、戦争やテロが起きないようにし、安全保障にとって、より現実的・効果的で確実な方法なのか。
 (1)と(2)のポリティクスで、より現実的・効果的で確実な方法はどっちなのだろうか?

  論点―非軍備(警備隊は別として軍隊は持たない)国に対して、それをいいことに侵略・攻撃を加えたりするだろうか―古代・中世の戦国(領地・覇権の争奪)時代や近代の帝国主義(植民地争奪)時代とは違う現代、国連はそれらの戦争・武力行使を禁止している。
  「もしも万一、ある国が武力行使をしかけてきたらどうするか」などと「たられば」の抽象的な仮定の話をしても現実性がない。軍隊を持たず、攻撃も仕掛けてこない国に対して、いきなり武力行使を仕掛ける国などあり得まい―もし、そんなことをしたら世界中の国を敵にまわし、(国連の集団安全保障によって)制裁を被ることになる。

  尚、北朝鮮はといえば、米日韓に対して隙あらば侵略・攻撃をかけようとして、虎視眈々としてチャンスを狙っているなどと一方的に決めつけることは間違いだろう。
  日本に対しては、かつての植民地支配をうけた怨みがあり、賠償を求めてはいても、そのために武力に訴えることなど国連で認められてはいないし、そのためにわざわざ違法を犯すことなどあり得まい(秘密工作員の潜入・拉致などはやっているが)。
  北朝鮮が米韓に対してひたすら求めてやまないのは食糧・資源・領土や権益(奪取)ではなく、朝鮮戦争完全終結の平和協定であり、米韓から不可侵の保証を得ることにほかなるまい(三村光弘・環日本海経済研究所主任研究員によれば「(12日の弾道ミサイル発射)日米首脳会談に合わせて打ったのかどうかわかりませんが、挑発というよりは、北朝鮮の存在を忘れないでくれという気持ちの表れのように見えます。北朝鮮は米国との関係改善を心底望んでいるのです」)。ところがソ連を後ろ盾(核の傘)にしてパワーバランスを保ってきたものの、冷戦終結後、そのソ連が、次いで中国までも韓国と国交する一方、北朝鮮は米国と平和協定も国交にも応じてもらえず孤立、韓国に対しても軍事力・経済力とも圧倒的に劣勢に立たされるようになった。かくて、その通常戦力を補うべく核兵器の自力開発に踏み切り、その核・ミサイル開発を振りかざして(平和協定に応じるか、さもなければ核武装するぞとばかり)瀬戸際外交で要求に応じさせようとするも、米韓側からは核武装を放棄しない限り応じられないと突っぱねられ、ならば核・ミサイルは手放さないとその核開発・ミサイル発射実験を繰り返ししているのである。しかし、その度に国連から兵器に関連するヒト・モノ・カネの取引や移動を禁止する制裁を受け窮地に陥って、それに耐えきれずに先制攻撃に走っりなどしたら、たちまち反撃を被って体制崩壊必至となることは重々分かっていよう。したがって、制裁圧力に対して苦し紛れに自暴自棄的攻撃に走る以外には、北朝鮮の方から先に撃って出るということはあり得まい。もっとも、攻撃に走ったらたちまち反撃されて崩壊するとはいっても、米日韓側にも被害は免れず、無傷あるいは軽微で済むとも限らないだろう。(核ミサイルを撃ち込まれたら、現状では迎撃ミサイルで撃ち落とすのは困難であり、着弾して被害が出ることは避けられまい。東京都心に着弾すれば死者100万人もあり得、原発に着弾すればどうなるかだ。)
  要するに、北朝鮮が米国なり日本なり韓国なりに攻撃を一方的に仕掛けることは(米日韓側が何もしない限り)あり得ないと言うことだ。

  また、中国はといえば、軍事費はアメリカ(世界全体の41.5%)に比べて、第2位とはいっても、国土面積の広さ、人口の大きさから見れば「その他大勢並み」とも言われ(あるサイトでは、日本は国土面積は中国の25分の1、人口は10分の1なのに軍事費は中国の55%もあり、その方が過大だとの指摘)。日本とは尖閣の領有権や東シナ海のガス田をめぐって対立があり、頻りに海域へ公船を繰り出し、軍機を飛ばしたりしているが、だからといって戦争をしかけてくるか、中国にその意図があるのか、蓋然性(必然的可能性)はあるのかといえば、それは考え難いだろう(偶発的な武力衝突の危険はあっても。)

 さて(1)と(2)とでどっちポリティクスのやり方がベターなのかだ。(戦争やテロが起きないようにし、安全保障を確かなものとするうえで。)


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