「12条、この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。」
首相はじめ国会議員には憲法擁護尊重義務(99条)があり、国民には上記の「この憲法が国民に保障する自由及び権利を不断の努力によって保持しなければならない」という努力義務がある。
今、首相はじめ国会議員および国民に求められてやまないのは、このことであって、それを差し置いて、改憲のために憲法審査会を推し進めようとか、国民投票をやろうとか言い立てる向きがあるが、本末転倒なのでは。
今、問われなければならないのは、首相はじめ国会議員が現行憲法の擁護尊重義務を果たしているか、それを怠ってはいないか、それをこそ審査しなければならないのではあるまいか。必要なのは、国会議員で構成する改憲のための憲法審査会ではなく、政府と国会議員を審査する「国民」審査会だろう。(裁判所に違憲立法審査権はあるが、違憲に当たる何らかの行為によって不利益を被ったという具体的事実があって訴えを起こした訴訟がある場合にしか行われない、そのようなものとは別の、より実効性があって、一般市民からくじ引きででも選ばれた委員で構成する、そういった審査会もあって然るべきなのでは)。
それに、我々国民も、自らの自由・人権を保持するべく不断の努力に努めているのか、怠ってはいないか、各人とも自問自答して然るべきだ。
18才以上の有権者(選挙年齢の引き上げには改憲のために若い人を動員したいという不純な動機が見え隠れ―精神科医の斎藤環氏)を改憲のための国民投票に駆り立てるよりも、憲法が保障する自由・人権を保持する努力義務をしっかり果たすことのほうが先決だろう。
学校では、そのために必要な教育(主権者教育・政治教育)―知識の提供と学習・習熟を保障、メディア(ツイッターなどネット情報をも含めて)による情報提供が充分おこなわれることが不可欠だが、現状では、次のような問題が指摘されている(9月30日、朝日新聞オピニオン欄の『若者の与党びいき』と題するインタビュー記事で学習院大法学部・平野浩教授、中央大学文学部・山田昌弘教授、高校3年生・安永彩華さん3氏が指摘)。
① 受験勉強や部活・バイト・その他で忙しいあまり、政治問題にはじっくり取り組めない。
② 「政治的中立」にこだわるあまり「事なかれ教育」―そのために生徒はよく分からないまま、疑問を抱かなくなり、現状を追認することが多くなる。
③ メディアの問題―「この十数年、有権者への露出度(ニュースなど話題として取り上げられる頻度)は自民党が高く、記憶の質も量も自民党が圧倒的」。その結果、若者の与党支持が強まっているかのようだが、それは、若い有権者は、自民党以外はよく知らない(知りようがない)という状況にあっては、結局自民党しか選びようがないからにほかならないのでは。
どうにかして学習機会を増やし、政治参加の機会を日常生活の中に埋め込むようにする手立てが必要だということだ。