朝日新聞は新有権者(18・19歳)対象に世論調査(2~4月)、4月8日にその結果を発表していた。
とそこで思ったのは、このような世論調査を行う前に、彼らに政治情報・知識を充分に提供し周知してもらうことが先決だということ。
政治の知識は新有権者に学校でしっかり教え学ばせることとともにマスコミ・メディアもきちんと知識・情報を提供した上ででなければ、ただ単に「世論調査」などを行っても「単なる意識調査」にしかなるまい(それはそれでいいんだというだろうが)。マスコミには民主社会を支える上で主権者国民に選挙権・投票権を行使するために必要な知識・情報を提供する責務がある。
そのことは、彼らに選挙権を認めたからには学校で主権者教育・政治教育をしっかり行ったうえで、その権利を行使(投票)できるようにするようにする、ということと一緒だ。
尚、今回のこの調査では「選挙でどの人や政党に投票するか決めるのに必要な知識を、学校でどの程度教わったと思いますか」と問うているが、「十分に教わった」が3%、「ある程度教わった」が36%、「あまり教わらなかった」が43%、「まったく教わらなかった」が15%(「あまり」と「まったく」と合わせて「教わらなかった」が58%)。
それに「選挙でどの人や政党に投票するか、自分でしっかりと判断できるという自信がありますか」との問いには「自信ある」が28%、「自信はない」が68%。
また、「選挙で投票に行かないことは、よくないことだと思いますか、必ずしもそうではないと思いますか」の問いには、「よくないことだ」が38、「必ずしもそうではない」が61で、投票に行かないのは必ずしもよくないことだとは思っていないという人の方が大半を占めいる。
マスコミは教育機関ではないが、単なる報道機関や広報機関であるだけでなく、オピニオン・リーダーとして(意図的な世論誘導やミスリードがあってはならないが)の役割があり、「社会の公器」として公民知識・政治情報を主権者・市民に提供して民主社会を支える公共機関でなければならない。
とかくテレビやインターネット(SNSなど)で断片的・恣意的に目にする程度の生半可な知識・情報では、ほとんどイメージやフィーリングだけの判断になってしまわざるを得まい。
この朝日18・19歳世論調査では「政治や社会の動きについて、どこから情報を得ていますか」と問うているが、その「情報源」はテレビ86%(信頼度は52%)、「ネットのサイトやSNS」58%(信頼度は8%)、新聞28%(信頼度は9%)、「学校の授業や先生」26%(信頼度は7%)、友人11%(信頼度は1%)。
調査で政党支持や「どの政党に投票するか」など問われても、それらの政党はそれぞれ、いったいどんな基本理念・基本政策を持っているか(特にその党はどんな憲法観、現行憲法に対してどんなスタンスを持っているかは、その党の性格を推し測る指標だろう)、それが解っていなければ判断のしようがないわけである。
今回の調査では「いま、どの政党を支持していますか」の問いでは、自民20 民主5 公明2 共産1 維新1 おおさか維新1 元気1 その他の党0 支持政党なし64 「答えない・分からない」5。「支持政党なし」と「答えない・分からない」合わせて69%で大半を占めているということだ。
参院選の比例区では、仮に投票するとしたら、どこに投票したいかの問いには、自民46、 民主18、公明4、共産2、維新2、おおさか維新5、元気2、生活1、新党改革1、その他の党9、「答えない・分からない」17。
支持する党・投票したい党ともに突出して多いのは政権党。それはテレビや新聞が、国政を担当する首相や大臣・予党幹部の発言や行動に格別注目して焦点をあて、たえず映像露出時間と記事スペースを割くので、それをちょっとでも見聞きする人々には、政権党の彼らが野党の党首や議員を差し置いていかにも一生懸命やっているかのように印象付けられて、この党になんとなく「支持」を寄せ「投票したい」となるのが当然と言えば当然なわけである。しかし、その自民党は改憲を党是としていて、現行憲法の9条をはじめとして全面的に変えてしまいたくてやっきとなっている政党なのだ。
ところが、この世論調査では「憲法9条を変えるほうがよいと思いますか、変えないほうがよいと思いますか」には、「変えるほうがよい」が20 、「変えないほうがよい」が74 。
「集団的自衛権を使えるようにしたり、自衛隊の海外活動を広げたりする安全保障関連法に賛成ですか、反対ですか」では「賛成」41、反対50。
「いまの日本の憲法は、全体として、よい憲法だと思いますか、そうは思いませんか」では、「よい憲法」が59、「そうは思わない」が30。
「いまの憲法を変える必要があると思いますか、変える必要はないと思いますか」には、「変える必要がある」が33、「変える必要がない」57。いずれも、自民党が改憲を目指している政権党で、それに圧倒的に支持を寄せていながら、現行憲法を「よい憲法」で、「変える必要はない」と思っている人のほうが大半を占め、9条を変えることには反対な人のほうが圧倒的に多い。これはまったく矛盾しているが、それはいったいどっから来ている現象なのか。
それはやはり、各政党はどういう基本理念・基本政策・憲法観を持ち、現行憲法に対してどういうスタンスをとっているのかが年若い有権者には充分解っていないところからきていることは明らかだろう。
そこには主権者教育・政治教育の不徹底という学校の責任もあろうが、マスコミが有権者に対して公民知識・政治情報の提供機関としての役割を十分果たしていないという責任もあるのではあるまいか。
支持政党や投票先を問うなら、それぞれの政党の基本理念・基本政策・憲法観(現行憲法に対するスタンス)等を整理・解説した記事を掲載して、それらを有権者が周知するようにすべきなのだ。
選挙前に一回だけ配布する選挙管理委員会の選挙公報(候補者の氏名・経歴、候補者および政党の政見をなど、原稿は候補者本人・その政党自身が書く)とは別に、新聞が各政党それぞれの基本理念・基本政策・憲法観などを偏見なく客観的な立場で正確に解説した一覧票を適宜掲載して然るべきなのでは。尚、今回の調査の設問に「アメリカが好きですか、嫌いですか」「中国が好きですか、嫌いですか」「韓国が好きですか、嫌いですか」などと問うているが、こんなことを訊いてどうするのか、だったら何だというのか、嫌いだったら付き合うなとでもいうのか。否、それは単なる意識調査だから、というのであれば、それはAKB48の「総選挙」(人気投票)と変わりあるまい。