米沢 長南の声なき声


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野党共闘に消極的なメディア―朝日の場合(加筆版)
2016年04月01日

 「一強多弱」状態の政党状況で昨年9月19日に安保関連法案が強行採決。その直後、共産党が「戦争法廃止の国民連合政府」(安保法廃止と集団的自衛権行使容認の閣議決定撤回の二つの目標に絞った暫定政権)の提案を行い、安倍政権に対抗する野党の結束と来るべき参院選での選挙協力を呼びかけた。その後一か月半余の間一部メディアには取り上げられていた(「サンデー毎日」・「毎日新聞」社説、外国特派員協会などに)。11月19日には朝日新聞にもインタビュー記事が載っていた。そして12月20日には安保法に反対してきたシールズなど市民諸団体の有志が「野党共闘」を望むとして「市民連合」を結成、参院選の一人区で市民と野党が協力して無所属の統一候補を擁立するよう呼びかけることになった。
 朝日新聞には「声」欄に11月7日「共産党の政権構想は現実的か」(異論)、12月2日「安保法廃止へ野党共闘を急げ」、今年1月28日「『立憲』旗印に野党結集を望む」、2月1日「安保法廃止へ野党結集が必要」、2月13日「共産党は考え方に幅あるのか」(異論)などの投稿を賛否両論併記で載せていた。
 2月19日5野党(民主・共産・維新・生活・社民)党首会談で参院選と衆院補欠選挙など国政選挙で選挙協力を進めることに合意、そこで①「安保法制の廃止と集団的自衛権行使容認の閣議決定撤回を共通の目標とする」②「安倍政権の打倒を目指す」③「国政選挙で現与党およびその補完勢力を少数に追い込む」④「国会における対応や国政選挙などあらゆる場面で出来る限りの協力を行う」の4点を確認し合った。(この会談直後、安保関連法の廃止法案を共同提出、朝日社説はこの方だけを「安保・野党案『違憲法制』正す議論を」として取り上げているが、選挙協力のことには触れず。)

 この間、朝日は世論調査で、このことに関連して次のように問うている。
 15年10月(17・18日)調査―次期参院選で「野党は自民党と公明党に対抗するために選挙で協力すべきだと思いますか」回答「協力すべきだ」48%、「そうは思わない」34%
 12月(19・20日)調査―参院選で「野党は自民党と公明党に対抗するために、野党同士で協力して、統一候補を立てるほうがよいと思いますか」回答「立てるほうがよい」42%、「そうは思わない」33%
 16年2月(13・14日)調査―「民主党と維新の党が解党し、一緒に新しい政党をつくったほうがよいと思いますか。それとも、いまのままでよいと思いますか」回答「新しい政党をつくったほうがよい」22%、「今のままでよい」49%。
 3月(12.13日)調査―「民主党と維新の党が合流することで合意しました。合流した後の新しい政党に期待しますか」回答「期待する」31%、「期待しない」57%。参院選で「野党は、自民党と公明党に対抗するために、野党同士で協力して、統一候補を立てるほうがよいと思いますか」回答「立てるほうがよい」47%、「そうは思わない」32%。(「統一候補を立てるほうがよい」と答えた人に)野党協力の枠組みに、共産党も入ったほうがよいと思いますか」回答「入ったほうがよい」46%、「入らないほうがよい」44%。
 この間(3月の調査では)、安倍政権の下で、「景気回復の実感あるか」(ある17 ない76)、「経済政策が賃金・雇用が増えることに結びついているか」(いる24 いない62)、「子育て支援政策に期待できるか」(できる26 できない58)、「首相の改憲姿勢を評価するか」(する38 しない49)、「震災復興の取り組みを評価するか」(する40 しない43)、「原発事故の教訓は生かされているか」(いる23 いない60)などついては、いずれも否という回答の方が多い。にもかかわらず内閣支持率(9月安保法案強行採決直後35%・不支持45%、10月41%・不支持40%、11月40%・不支持41%、12月38%・不支持40%、1月42%・不支持38%、2月40%・不支持38%、3月44%・不支持35%)も下がり続けてはおらず上がってさえいるし、政党支持率も(自民党のみ30%台、3月は40%、他党は民主党が9月だけ10%、あとはどの党も一桁台で)「一強多弱」のまま(「支持政党なし」は36~42%で最多)。
 要するに安倍政権の政策は支持されているわけではないのに、自公以外はバラバラで「一強多弱」、政権を託せる党がない状態
 そこで新たなオールタナティブ(もう一つの選択肢)として「野党連合」の存在が必要となる。それさえあれば状況は変わるはず。
 ところが朝日は、この「野党連合」(野党協力の枠組み)を選択肢として示さず、「民主と維新の党の合流(→「民進党」)に期待するか否か」(「期待する」31、「しない」が57で、「期待しない」が際立って多い)と、「野党は自民党と公明党に対抗するために、野党同士で協力して、統一候補を立てるほうがよいか否か」(「立てるほうがよい」47、「そうは思わない」32)を問うだけにとどまっている。しかも「統一候補を立てるほうがよい」と答えた人に、わざわざ「野党協力の枠組みに共産党も入ったほうがよいか」などと付け加えている(「入ったほうがよい」46、「入らないほうがよい」44)。今回「野党連合」を最初に呼びかけ、統一候補擁立・野党協力のためならばと、当初掲げた「国民連合政府」の旗を横に置いて一人区では独自候補を取り下げてもいいとして最も積極的だったのが同党だと分かっていながら、歴史的に醸成されてきた「共産党アレルギー」なるものに囚われているのだろう。これこそが分断に導く作為とならないか。この分断は政権与党を利するものであり、現に安倍首相はこの夏の参院選は「『自公対民共』との闘いであり、負けるわけにはいかない」と訴え、野党共闘に「民共合作」とか「野合だ」とか批判を加えている彼らにとって民共分断は思うつぼとなる。
 マスコミには「オピニオン・リーダー」として世論形成に果たす役割がある。作為的な世論誘導はよくないが、事実在るもの(実現はしていなくても、現にその動きがあり、蓋然性のあるもの)は在るとして示すことは国民にとって必要な情報である。その情報を詳しく示さないというのは如何なものか。
 3月26日の同紙は4面6段に「『集票競合慎む』自公が指針合意」という記事を載せていたが、前日NHKが若干報じていた5野党の幹事長・書記局長会談の選挙協力協議のことについては全く報じていない。
 
 このようなメディアの姿勢こそが結果的に安倍自民党の「一強体制」を許している原因となっているのではあるまいか。

 尚、ネットで調べてみると、3月27日結党した民進党は、28日テレビ朝日が報じたANN世論調査では、同党支持率は15.6%で、民主・維新両党合流前(15.9%)とほとんど変わらず、むしろ下回っていて、自民党支持率46.3%に大きく水をあけられおり、民進党一党だけではいくら頑張っても自民党には到底かないそうにない。
 また、ネット上には、4月3日の日付で、毎日新聞の調査として次のような野党協力合意の進捗状況が報じられている。
 「参院選の全国32の『一人区』のうち15選挙区(青森、宮城、山形、栃木、新潟、福井、山梨、長崎、「鳥取・島根」、山口、「徳島・高知」、熊本、宮崎、沖縄)で野党の候補一本化が確実(大筋合意)となっている。そのうち宮城・山形・栃木・新潟・山梨・長野の6選挙区で(13年の参院選の結果を基に試算すると)野党の合計得票数が自民党を上回る。
 民共両党による協議が進んでいる選挙区も10あり、統一候補はさらに増える可能性が高い。
 市民団体などが推す無所属の立候補予定者を各党が相乗りで支援する形が広がっている」と。

朝日新聞4月12日結果発表の世論調査
 
 設問に「民主党と維新の党などが合流し、民進党ができました。民進党に期待しますか、しませんか」との問い(「期待する」32、「期待しない」58)はあるが、民・共・社民・生活4党と市民連合の選挙協力については何も訊いていない。
 内閣支持率―支持45(前回比+1)、 不支持34(前回比-1)
 支持政党―自民38、民進8、公明3、共産3、おおさか維新2、その他の党0、支持政党なし34、答えない・分からない11
 参院比例区で投票する政党―自民40、民進15、公明4、共産5、おおさか維新6、生活1、社民0、その他の党2、答えない・分からない26
 安保関連法のことを判断材料として、重視しますか、しませんか 重視する54、しない32
 安保関連法に賛成ですか、反対ですか。 賛成35、反対46
 高校生の政治活動について、学校外で政治活動に参加する高校生に対して、学校が事前に届け出を求めることは、妥当だと思いますか。妥当だ43、妥当ではない42

NHK 4月11日結果発表の世論調査
 「民進・共産の選挙協力の動き」に―
   大いに評価8、ある程度評価30、合わせて38(前回1月段階「期待する」33と比べて増) 
   あまり評価しない30 まったく評価しない24、合わせて54(前回「期待しない」61)
 与党議席が増えたほうがよい23、野党議席が増えたほうがよい32、どちらといえない40
 支持政党―自民34.9、民進9.1、公明4.1、共産4.8、おおさか維新1.4、社民0.5、その他0、特になし                                                            33.1
 内閣支持率―支持42(前回比-4)、 不支持39(前回比+2)

 4野党の選挙協力については、NHKは世論調査の設問に「民進党と共産党の協力の動き」に ついて取り上げているが、朝日は依然として取り上げていない。 NHKも、安倍首相はじめ政権側が「自公対民共」という言い方をしている折から、自公に対抗して共闘・協力しようとしているのは「民進党と共産党」だけであるかにように誤解して受け取られるような取り上げ方をしているが、正確には「自公対民共生社」であり、さらに後者を「民進・共産・生活・社民4野党と市民連合」と正確に表すべきだろう。(市民連合とは学生らの「シールズ」と「ママの会」「学者の会」など市民団体が結成して、4野党に共闘を働きかけ、後押しする役割を果たしている。)



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