1(1)昔―敵対する主要人物を特定して殺害(暗殺)―政治目的
シーザー暗殺、リンカーン暗殺、本能寺の変、幕末・維新の要人暗殺、伊藤博文の暗殺、サラエボ事件、ガンジー暗殺、浅沼稲次郎の暗殺、ケネディ暗殺など
(2)無関係な一般人を殺害―無差別テロ―国家・社会(体制)に対する反抗で、目的はそこに住んで生業に従事している構成員(国民・市民)に恐怖・不安をかき立てること。
①我が国での「地下鉄サリン事件」―カルト教団の宗教目的―警察が対応―収束
②イスラム過激派アルカイダによる「9.11同時多発テロ」事件→米軍が主導する有志連合軍によるアフガン戦争~イラク戦争へ
③パリの風刺週刊紙(シャルリー・エブド)襲撃事件―その時は、標的特定
④イスラム過激派ISによる「パリ同時多発テロ」事件→イラク・シリアにおけるISに対する有志連合軍による空爆の激化。
同月にレバノンのベイルート、マリのバマコ、チュニジアのチュニスでもテロ・襲撃事件
⑤米カリフォルニア州サンバーナディーノで銃乱射事件―容疑者はISの支持者と見られ、テロ事件とされている。
⑥ロンドンの地下鉄駅でナイフ刺傷事件―犯人は犯行時「シリアのために!」と叫んでいたということで、警察は「テロ事件」として捜査。
(数年前、秋葉原であった殺傷事件は単なる「通り魔事件」として扱われたが、今後、仮にもし、犯人が政治的・宗教的な大義めいた言葉を発して殺傷事件を起こせば、それも「テロ事件」とも見なされるようになろう。)
国家・社会の現体制下で疎外され、或いは虐げられていると感じている者たちが、その国家・社会の支配層やそこに安住している(と見なす)市民に対して憎悪に駆られ、或いは煽られて攻撃。
①(日本における「オウム事件」)以外は未だ収束せず、さらに激化―憎悪の連鎖・報復の悪循環が続いている。Ⅱ原因
(1)直接の原因
アルカイダを生み出したのは―1978年以降のソ連のアフガニスタン侵攻に対抗してアメリカ中央情報局(CIA)がイスラム義勇兵(ムジャーヒディーン)を訓練・育成して生まれた。それが1990年湾岸戦争(イラク対多国籍軍)を機に、イラクの脅威を口実にサウジアラビア国王が米軍の駐留を認めたため聖地が冒瀆されたとして反米に転じ、その後、2001年彼らによる9.11同時多発テロ事件が引き起こされた。
そこには中東の産油国の君主たちと欧米の石油企業に対する反発があり、標的となったニューヨークの世界貿易センター・ビル(ツインタワー)はスタンダード・オイルの創始者ロックフェラーの3代目が創建に関わり、世界の銀行・証券など金融会社が入居する資本主義のシンボルとも見なされたものと思われる。ISを生んだのは―①イラク戦争・フセイン政権の崩壊によるイラクの体制崩壊(警察権力の解体・無法地帯か―マリキ政権(シーア派)の宗派主義に基づく弾圧・統治に対する反発―スンニ派の旧フセイン政権の軍人・官僚・部族がアルカイダ(反米・反シーア派)に引き寄せられる(「イラクのアルカイダ」)。(「ISはブッシュの『申し子』」とも)
②チュニジア・エジプトなどでの「アラブの春」(反独裁政権運動)波及→シリアでアサド政権に対する武装反乱―内戦―イラク・シリア両国の空白を突いて「イラクとシリアのイスラム国」樹立へ―カリフ制国家(カリフ=ムハンマドの後継者制度を復活、バグダーデイが自称カリフ)→かつてのイスラム帝国(インドネシアからスペインに至るまで)の復活をめざす。
初期イスラムの時代を模範とし、それに回帰すべきであるとしてコーランとイスラム法を厳格に施行(サラフィー主義)。(佐原徹哉明治大学教授はイスラム過激派のテロ組織は「イスラム教と関係のないカルトで、オウム真理教を仏教というのと同じレベルだ」と指摘。)武力行使やテロを聖戦(ジハード)として肯定―手段を選ばない―残虐性―恐怖政治。
西洋文明(欧米の価値観)に対する異議、「反近代・反帝国主義・反資本主義」―イスラムが西洋文明を脅かすような脅威と見なされることを、むしろ歓迎―挑発・憎悪を扇動(テロ―恐怖を煽る)
「イスラムの下に平等」―国籍・民族・人種・貧富などの差別を否認。
現在の国境(第一次大戦中に英仏ロが決めたもの)も否認。
油田を支配下に―原油・密輸―資金源
戦闘員は中東・北アフリカ・ロシア(チェチェン人・タジク人)・欧米(「移民街」)から参陣した若者―母国で職に就けず、生活難、居場所がなく、抑圧・偏見・差別・不公平・迫害・疎外・怒りを感じ、大義と居場所・死に場所(殉教)を求めて(―ソーシャル・メディアなどで勧誘され)「ホーム・グロウン(欧米など地元育ち)・テロリストやローン・ウルフ(「一匹狼」―単独犯)」となる。
彼らは戦うこと自体が「アッラーのため」という大義のための「聖戦」であり、あちこちでテロ事件や惨殺行為を起こし、それを世界中でマスコミ・報道機関がクローズアップして取り上げ続けてくれるほど宣伝効果が得られ、或いはネットを通じてシンパシー(共鳴)を広げて同調者を獲得でき、戦闘員をリクルートできることになるというわけ。(2)根本原因―食料・エネルギー資源・富の偏在、格差・貧困・差別(機会の不平等)
中東ではサウジアラビアヤカタールなどの石油君主国(中東全体の人口の10%足らず)が中東地域のGDPの60~70%を占める(その君主・首長ら一族と欧米の石油企業がオイルマネー(石油収入)独占
Ⅱテロを無くするには
(1)即時・短期的には―テロ対策
軍事―攻撃・掃討・空爆→憎悪・報復の連鎖・悪循環
「対テロ戦争」―非対称戦争―ISには戦闘機も地対空ミサイルもなく、空爆を受けても向け撃つことできず、一方的に爆撃されるだけ―それで別の戦い方をするしかなく、戦闘員を敵国に送り込み、或いは敵国にいる同調者を潜伏させて、コマンドやゲリラとして特攻攻撃をさせる。
(通常の国家間戦争なら、やってもいい行為とやってはいけない行為とがあるが)この場合はテロリスト集団が相手であり、テロリストは犯罪者で無権利者(或いは人間でさえなく「エイリアン」同然)であり、言い分を聞く必要なく問答無用に攻撃、それは刑の執行であり、殲滅(殺害)あるのみ。
空爆・掃討作戦でテロリストを確実にしとめるため、一人殺害するために多数の住民を巻き添えにして犠牲にし、それは「副次的被害」に過ぎないとして済まされる(放置される)。
欧米人(兵士)の犠牲者数に対してムスリム側の圧倒的な犠牲者数(イラク戦争では米兵の戦死者4千人余に対してイラク人犠牲者・約50万人)―欧米に対する憎しみ・怒りの広がりへ。空爆→地元住民の被害→子どもが1人殺されるたびに新たなテロリストが生まれるという結果をもたらす・・・・無人機攻撃―標的外に多数の民間人が犠牲(殺害された人々の9割とも)。
支配地域の奪還は地上軍なしでは不可能であり、それとても短期的には一部掃討はできても、中長期的にはかえって根強く存続
取り締まり―盗聴・ネット上の情報監視・令状なしの家宅捜査など捜査権限の強化
謀議グループの解散命令、憲法改正して国家非常事態を明記も企図
封鎖―テロリストの出入りを断つ(出入国の禁止など)法的措置
資金(イラク・シリアなどの支配地域の住民から徴収、石油密輸収入、湾岸の篤志家からの援助、国外へ逃亡する難民が残した財産の没収などで)
武器(既得のものはイラクやシリアの武器庫から強奪したか、穏健派反政府軍に米軍から供与された武器を奪取したか横流しされたもの)―湾岸諸国からの武器供給の停止
トルコ国境封鎖による戦闘員の流入阻止「有志連合軍」―欧米・ロシア・トルコなど国々それぞれの利害・思惑―自国本位(ロシアにとってはアサド政権支持しているし、反政府武装勢力の中にチェチェン人やタジク人がいるかぎり彼ら反政府勢力とISを区別しても意味がない)
空爆などかけても出口戦略(どう収束をつけるか)を立てられず。
ヨーロッパ各国でムスリムに対する態度が01年の9・11以後厳しくなる―彼らは遅れている(「普遍的価値」を解さず)とか、キリスト教社会であるこの国にイスラム教を持ち込むな、ここに居てもいいが居場所はない、と国内のムスリムを厄介者として敬遠、排除へ。
難民受け入れ―欧米ではそれをめぐって各国で拒否派と容認派に二分(EUには共通の移民政策がない)
ムスリムと非ムスリム(キリスト教徒・ユダヤ教徒など)、それにムスリム同士(スンニ派・シーア派その他で)分断・いがみ合い―ISにとっては思うつぼ―異教徒の中に暮らしているムスリムたちに対して、信仰を捨てるのか、それとも我々(IS)の側にくるか、と迫る。(2)中長期的には
「終わりのない戦争状態」へ「戦時体制」が常態化―「テロを未然に防ぐため」として「安全保障」という名の恒常的な予防体制(国民を監視・管理・統制、自由の権利を制限)が国家によって正当化→「自由と民主主義の国だ」と言いながら、むしろ「イスラム国(IS)」の体制に似てくる―若者は自発的に国家の為に進んで身を捧げる特攻戦士に志願するようになり、ISの戦闘員と似てくる―人間が非人間的状態に。それとも国家を超えた(国家単位に構成される国連とは異なり、自国の国益にとらわれることのないNGO「国境なき医師団」や「国境なき記者団」のような)国際安全保障機構が必要―地球環境保護機構とともに―個人の有志連合
社会構造の改善―食料・エネルギー・水資源・その利権・富の偏在、格差・貧困・差別(機会の不平等)の解消・縮減
国民的和解へ対話―膿みを出しきって、許し、手をさしのべる
相手をよく知り、相手との「違い」ではなく、似ている共通点を見出して、それを共有し合う。
宗教対話―ローマ法王のアフリカ(ケニア・ウガンダ・中央アフリカ)訪問―宗教間融和を訴え、イスラム教礼拝所(モスク)で演説「我々は憎悪や報復、そして神や宗教の名の下に実行される暴力に対してNOと言わなくてはならない」と。
世界宗教者平和会議(5年ごとに開催)―「暴力的な目的のために宗教を悪用することに反対し、立ち向かう」(06年8月京都での世界大会)教育―非軍事的な「テロとの戦い」―無知(反知性主義)との闘い―命の教育・人権教育・平和教育―マララ(パキスタンのノーベル平和賞最年少受賞者)「世界のすべての子どもたちに教育を」「戦車より学校を」「一人のこども、一冊の本、一人の教師、一本のペンでも世界は変えられる」
アントワーヌ・レリス(パリ同時多発テロで妻を殺されたジャーナリスト)「もし神が自らの姿に似せて我々人間をつくったのだとしたら、妻の体に撃ち込まれた銃弾の一つ一つは神の心の傷となっているだろう。だから、けっして君たちに憎しみという贈り物はあげない。君たちの望み通りに怒りで応じることは、君たちと同じ無知に屈することになるから」と。
寛容な社会づくり
公正な社会発展モデルの実現Ⅲ我が国の対応―安保法による有志連合軍への後方支援(参戦)(アメリカから支援協力を要請されると断れなくなる―法律ができたのだから自衛隊派遣はできるはずだと)
緊急事態条項を盛り込むための改憲、
「共謀罪」法案―市民社会の自由制約―などに要警戒
安保法で自衛隊の海外派遣など行われれば、日本人がテロの標的になる危険性が高まる。
難民受け入れがが問題。
平和・中立国家として中東その他における混乱の政治的解決(収拾)と国民的和解の助言・仲介に役割を果たせるかが問題。