米沢 長南の声なき声


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集団的自衛権行使の限定容認の矛盾
2015年08月04日

自衛隊の実力行使の3要件
 個別的自衛権の場合―①自国への急迫不正(武力による攻撃・侵略など)の侵害の排除。②実力行使以外に適当な手段がない。③必要最少限度の実力行使(その限界は「日本への侵害を排除することを超えて敵国に攻め入ったり、敵を追いかけて殲滅したりはしない」という一線)。
 それに対して、集団的自衛権の行使を限定的に容認した武力行使の新3要件―①我が国と密接な関係にある他国(味方)に対する武力攻撃をも排除。②他に手段がない。③必要最小限度の実力行使―問題点―公海上から他国領域のどこまで行って武力行使したら他国(味方)攻撃を排除したことになるのか、明確な一線が引けない。「海外派兵は一般的には認められない」と言って、「例外」として「ホルムズ海峡(或いは南シナ海)での機雷掃海等は受動的・限定的なので認められる」というが、それらの判断基準は明確な規定がなく、時の政府が実際に発生した事態の個別的な状況に照らして総合的に判断するということで、政府の裁量に任され、「限定的」といっても歯止めがなく、どこまで広がっていくか分からない。
 また、仮に他国(アメリカ軍)が攻撃された、それを我が国の存立危機事態(それで我が国の存立も危うくなり、国民の危険につながることも明白)と判断して自衛隊を出動させて反撃、その後、我が国への危機は去った(日本の安全は回復された)が、他国(アメリカ軍)の危機はまだ続いており、戦闘が止んでいない、そのような時に我が方の自衛隊だけが、さっさと打ち切って撤退することはできまい。だとすれば、他国(アメリカ軍)に対する攻撃全体を排除するまで戦闘を続けなければならないことになる。つまり、最初は我が国の存立危機事態との判断から参戦だったとしても、その後は自衛(自国防衛)ではなく他衛(他国防衛)のために、しかも他国(アメリカ軍)の戦略・戦術・作戦に従って戦闘を続けなければならないことになる、ということだ。
 未だ自国が攻撃されていなくても、他国が攻撃されて我が国の存立危機事態が予測されれば、我が自衛隊が出動して先に敵国を攻撃する、となると、それは「先制攻撃」ということにならないか、その質問(参院特別委員会で民主党の大塚議員)に、岸田外相は「国際法上は先制攻撃に当たります」と答弁している(国際法上、それが、攻撃が差し迫っていると判断される「自衛的先制」の場合ならそれは合法だとする説もあるが、その判断は主観に支配され危うい)。アメリカが、(ベトナム戦争やイラク戦争の時のように、或いはその以前日本がアメリカに対して行った真珠湾奇襲攻撃のように)「自衛的先制」と称して攻撃を開始(その決定に際する判断理由は自作自演のトンキン湾事件とか、ありもしない大量破壊兵器保有など事実のでっち上げに基づいていた)、そのようなアメリカが行う「自衛的先制」攻撃に対して、攻撃された国からアメリカが反撃されれば我が国の存立も危うくなると判断して、それを阻止しようと、我が国が攻撃されていないのに、我が国の自衛隊までも先制攻撃に加わる、そんなことまで許されることになるのか。こうなると、「何でもあり」といったようなことになる。
 こんなのは自衛権ではあるまい。「集団的自衛権」なるものは、自己保存のための正当防衛権たる個別的自衛権とは本質的に異なる「他衛権」にほかならないのだ。
 自衛隊に個別的自衛権に限って最小限の実力行使だけを容認してきたものを、他衛権まで、「集団的自衛権の限定的行使」と称して、その行使を容認することは憲法9条の単なる解釈変更にはとどまらない違憲立法であることが益々明らかになっているのだ。

 


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