米沢 長南の声なき声


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抑止戦略―個別的自衛権と集団的自衛権
2015年07月02日

 軍事的抑止戦略か非軍事的抑止戦略か―どちらが賢明か
 その前に先ず、そもそも現代世界では、戦争というものが在るのが当たりまえなのか、ないのが当たりまえなのか。国々には敵もあれば味方もあるのが当たりまえなのか、当たりまえでないのか。人や国は戦うのが当たりまえなのか、当たりまえでないのか(世界価値観調査では、「もし戦争が起ったら国のために戦うか」という質問に『はい』と答えた人の割合は、日本が最低だという)。 
 考え方の違いがあると思われるが、実際問題として(実態は)どうなのか、である。
 (中東ではイスラエルとパレスチナ国家その周辺諸国との間の根強い対立・抗争があり、シリアとイラク両国にまたがってイスラム過激派と政府軍の戦乱、アフガニスタンでは未だ戦乱が続いている。アフリカではリビア・スーダン・ソマリアその他で戦乱が続いていおり、ウクライナでは親ロシア派と政府軍との間で内戦があってそれにからんでロシアとNATOとの対立があるが)国家間の戦争は国連憲章で違法とされ禁止されている。
 (第一次~第二次大戦後、自衛権行使と国連による不正な武力侵攻・武力攻撃に対する軍事制裁以外は禁止。自衛権行使も、安保理事会が措置をとるまでの間に限った暫定的なもので、集団的自衛権はもとより個別的自衛権も例外的なものとされているのだ。国連は、国連の目的に軍備を利用する以外には、国ごとの個別的な軍備は制限・縮小するなど軍備の規制目指している。
 集団的自衛権とは、本来の自己保存の本能に基づく自然権としての正当防衛権たる自衛権とは言えず、そもそも集団的自衛権なるものは国連憲章51条に書き込まれた経緯から見ても、米国などの政治的思惑による後付けされた概念にすぎない。(自然権としての正当防衛権には当たらない。個別的自衛権は個人の正当防衛権と同様に自然権で「固有の権利」といえるが、集団的自衛権はそもそもが「固有の権利」などではないのだ、ということ。)
 第一次大戦後、戦争違法化の流れの中で、自衛権の考えが生まれたが、それは自国が攻撃を受けた場合にのみ実力で阻止・排除する「個別的自衛権」を意味するというのが国際法上の常識だった。1944年、国連創設にさいするダンバートン・オークス会議における国連憲章原案にも「集団的自衛権」などという文言はなかった。
 ところが45年3月アメリカ主導で開かれた米州諸国会議で軍事同盟(米州機構)を合理化するため、加盟国のいずれか一国に対する攻撃を全加盟国への攻撃とみなすという決議(チャプルテペック決議)がなされ、それを同年6月に採択された国連憲章成案にアメリカが盛り込むことを提案、ソ連が同意して憲章51条に個別的自衛権とともに「集団的自衛権」なるものも「固有の権利」として記されることになった。というわけで、「集団的自衛権」とは「後付け」された概念にすぎないのだ。
 このように、集団的自衛権とは、そもそもが軍事同盟を合理化するものであり、軍事同盟は、国々を戦争に巻き込んだという、とりわけ第一次大戦の苦い経験から望ましくないものとして否定されてきたものなのだ。(セルビアの一青年がオーストリア皇太子を暗殺したことをきっかけにオーストリアがセルビアに宣戦布告して開戦したが、双方それぞれの同盟国が次々と参戦し、日本までが日英同盟のよしみで参戦、世界大戦となった。)

 このように現代世界では原則として戦争は禁止されていて、実際、(イラク戦争以後、主権国家間で正規軍が激突し合う戦争は)近年はほとんどなくなっているし、戦争があるのが当たりまえだなのではなく、むしろないのが当たりまえなのだ。

(1) 軍事的抑止戦略
 それは、国々には敵国が存在し、その国から武力攻撃があり、戦争はあるもの、という考えを前提に、仮想敵国を(それが存在するものと)想定し、戦争・武力攻撃(があるものと想定して、それ)に備えて軍備、「抑止戦略」をたてる、というもの。
 軍備―より強大に・・・・軍事費かさむ―費用対効果が問題
 敵味方を峻別―同盟国・友好国(アメリカ・オーストラリア・NATO諸国など)と非同盟国・非友好国(中国・ロシア・北朝鮮など)と分けて対決→緊張→戦争やテロを呼び込む(テロの標的になる) 
 同盟政策―「集団的自衛権」行使―同盟国or「密接な関係にある国」を攻撃した国(A)を攻撃―そうすれば、その相手国(A)から見れば我が国による攻撃は先制攻撃したことになり、それに対して(A)は反撃してきて我が国との戦争になる
 同盟国(の戦争に)軍事支援―たとえ「後方支援」でも、相手から見れば、また国際法上は武力行使と一体な「兵站」行為として参戦と見なされる―武器使用は自己防衛につもりでもあっても、武力行使と見なされる
  
(2)非軍事的抑止戦略(安倍政権の安保政策・抑止戦略に対する対案になるもの)
 「諸国民の公正と信義に信頼」(醸成)、9条(世界に普及)を基調に
 どの国とも友好・協力―敵をつくらず、どの国も味方か敵にあらずとして―平和友好条約or中立保障条約
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