米沢 長南の声なき声


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法治国家ならぬ違憲放置国家だ!(加筆版)
2015年04月03日

●安全保障・防衛政策―自衛隊の海外活動の拡大へ安保法制の整備―9条違憲立法
   防衛省では対中戦争計画(中国と名指しした戦争計画)を作成―有事では沖縄の南西諸島を中心に本土からの「機動展開」や「対着上陸・奪回作戦」による地上戦に加え、「弾道ミサイル防衛も想定。平時では、活動範囲を南シナ海・グアムまでの西太平洋・インド洋等での警戒監視活動を明記。
   辺野古新基地建設強行
   装備・兵器の増強
   首相の「我が軍」発言
  これら軍事―憲法73条(内閣の行う仕事)にない仕事―に邁進
  憲法擁護義務(99条)違反
  「安全保障法整備」と称して一連の関連法改定―自衛隊法の改定、武力攻撃事態法の改定、周辺事態法の改定、恒久法の新設、PKO協力法の改定等々―違憲「戦争立法」―憲法98条「憲法は国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令・・・国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない」はず
  裁判所は「一票格差」問題だけでなく9条違憲も、放置せずに違憲立法審査に意を注ぐべきなのである。   

  このような首相や政府の違憲行為(というよりは憲法破壊ともいうべきもの)を放置しているのは国民、それに無批判なマスコミだ。

 違憲審査制にはアメリカ型の付随的違憲審査制とドイツ型の憲法裁判制とがあって、アメリカ型の場合は具体的な事件で訴訟が起きて、その訴訟解決に必要な限りにおいて通常の裁判所が違憲審査を行うやり方であり、ドイツ型の場合は憲法裁判所があって、そこで法令その他の国家行為の違憲審査を行うやり方。我が国はアメリカ型で、憲法裁判所はなく、閣議決定した集団的自衛権の行使容認は違憲だとか、それに関連する安全保障の諸立法は違憲だと正面から審査することはできず、政府のその決定や法令に基づいて具体的にある行為をやらされて不利益を被った当事者が訴訟を起こさない限り違憲判断は行われず、無効と断ずることはできないのである。これまで次のような6例があるだけ。
 ① 1959年砂川事件―米軍基地の拡張に反対するデモ隊の何人かが立ち入り禁止の柵を壊して立ち入ったとして刑事特別法違反で起訴された事件
 東京地裁(裁判長・伊達)では日本政府が米軍に駐留を許したのは9条2項(戦力不保持)違反と。
 しかし、上告審で最高裁は「外国の軍隊は戦力に当たらない。国家統治の基本に関する高度に政治性をもつ条約の内容について違憲かどうかを司法が判断を下すことはできないと(統治行為論)、原判決を棄却、差し戻し審(違う裁判長)でデモ隊の方が有罪に。
 ② 1967年恵庭事件―北海道恵庭町の酪農家兄弟が陸自演習場の電話通信線を切断して防衛器物損壊で訴えられるも、札幌地裁は、通信線は「防衛の用に供する物」には該当しないとして無罪判決。憲法判断は必要ないとして済まされ「肩すかし判決」
 ③ 1973年長沼ナイキ基地訴訟―ナイキ基地建設のための保安林指定解除が違憲だと地域住民が訴え、札幌地裁は違憲判決。控訴審・札幌高裁は「高度の政治性を持つ国家行為は明白な意見・違法でない限り司法審査の対象ではなく、立法・行政部門の判断に従い、国民の政治的判断にゆだねるべきだ」という統治行為論によって原告住民の訴えを却下。上告審・最高裁判決は「保安林解除による洪水や渇水の危険はダムなどの代替施設の設置によって解消、原告の訴えの利益は無くなったとして棄却(「門前払い判決」)
 ④ 1977年百里基地訴訟―茨城県(現)小玉市にある空自基地の建設に際して反対派住民が建設予定地の土地の所有権の帰属を主張しつつ自衛隊違憲訴訟。水戸地裁は「9条は自衛のための戦争まで放棄したものではない」「自衛隊は一見明白な戦力だとは断定できない」としつつ「自衛隊は裁判所の審査は対象にはならない」として(統治行為論)訴えを却下。
控訴審(2審)・東京高裁は「本件は民法レベルで解決できる」私法上の行為だとして、9条適用を回避。最高裁は2審を支持、上告棄却。反対派は敗訴。
 ⑤ 1975~02年小松基地騒音公害訴訟―石川県小松市の空自基地。基地周辺住民が騒音公害で訴訟。02年金沢地裁が国に賠償命令下すも違憲判断はなく、飛行差し止めは認めも認めず。
 ⑥ 2004年~08年イラク派兵差し止め訴訟―箕輪元防衛政務次官・郵政相が札幌地裁に提訴をきっかけに、その後、集団訴訟が全国10地域で(原告、一時5700人)。うち9地域ではいずれも憲法判断は避け、「民事上の請求権はない」と原告敗訴。
  08年、名古屋高裁は違憲判決―「空自の活動のうち少なくと多国籍軍の武装兵員を戦闘地域であるバグダッドに空輸するのは他国による武力行使と一体化した行動であり、武力行使を禁じたイラク特措法に違反し、憲法9条に違反」と。(但し、「原告らの平和的生存権は侵害されたとまでは認められない」として損害賠償は認められず、「訴えの利益を欠く」として差し止め請求は却下)。上告なく確定。

 これから新たに安保諸法令が決まったら、その法令に基づいて自衛隊が派遣されるようになり、隊員や家族その他の関係者が不利益を被る事態が次々と生じるようになれば訴訟も頻発するようになるだろう。

 「違憲状態の選挙で選出された議員は国会活動を行う正統性の無い議員」であり、「現在、国会活動を行う正統性の無い議員が、憲法改正の国会の発議をするための議論をしている。しかし、そもそも国会活動を行う正統性の無い議員は憲法改正を発議する正統性が無い。」(久保利英明弁護士ら『一人一票実現国民会議』の意見広告)


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