米沢 長南の声なき声


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迫りくる改憲(その1)―手始めにどの条項から
2015年03月01日

安倍自民党は改憲を来年夏の参院選(自民党が3分の2以上議席獲得)後に照準。
(1)すでに国民投票法―18歳以上に投票権。
 問題点―最低投票率の定めなく、賛成が「有効投票総数の過半数」あれば成立。
    国民投票運動―公務員などは制限、NPOや宗教団体など組織による運動は規制。
           有料意見広告は野放し。
(2) 改正点―どういう条項を新たに設け、或いは削除、改変したいのか―次のようなこと。 
 ●「新しい人権」として環境権を書き加える(わざわざ新たに書き加えなくても現行憲法13条<幸福追求権・人格権>や25条<生存権>に含意されているというのが通説なのだが。)
 ●同じく「プライバシー権」を書き加える(すでに現行憲法13条の人格権の中に含意されており定着しているのだが。)
 ●同じく「知る権利」を書き加える(すでに現行憲法21条<表現の自由>の中に含意・定着しているのだが。)
 ●緊急事態条項を新たに設ける(武力攻撃の発生や大規模災害・感染症拡大など非常事態に緊急対処するため首相・内閣(行政)の権限を強化―国会の権限の重要部分を内閣に委譲、国民の行動・財産権・集会・デモ・報道の自由など人権を制限し、国の指示に従わせるというもの。わざわざこれを設けるのは廃止された旧帝国憲法下の非常大権や戒厳令を復活させるようなものであり、ナチスの全権委任法の悪例もあり、権力の暴走につながる危険。財産権などについては既に現行憲法12条に「国民はこれを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負う」とあり、非常事態に際して国民が権利の一部を公共の福祉のために利用に供することは可能なのだが。)
 ●私学助成(公金の支出)を認められるようにする(現行憲法は89条に「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない」と定めており、私学助成を認めていないとの考えであるが、憲法学界の大勢は認められるという考え。それは、私学教育は公立学校と共に公教育を担い国家の目的の達成に役立つものとして国家の規制の下にあり、「公の支配に属しない」とは言えないからである。それに、26条の「すべての国民は等しく教育を受ける権利を有する」および25条「すべての国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という定めからも憲法上要請されているもので、むしろ当然の措置として確立、私学振興助成法で制度化され、現に運用されているもの。なのに「なにをいまさら」というべきもの。)
 ●財政規律条項を新たに設ける(財政法で「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない」と既に定められている。それにもかかわらず政府が国債発行・借金を重ね国の財政を悪化させた原因が、憲法に財政健全化の規定がないからだとする主張は的外れであり、憲法に責任転嫁するもの。)
 ●裁判官の報酬引き下げを「できる」と改める(79と80条に「裁判官の報酬は、在任中、これを減額することはできない」とあるが、最高裁の裁判官会議では「人事院勧告に沿って国家公務員の給与全体が引き下げられるような場合には、裁判官の報酬を同様な内容で引き下げても司法の独立を侵すものではないことから、憲法に違反しない」旨、確認されている。)
 ●96条の改憲発議条項(衆参総議員の3分の2以上の賛成がなければならないのを、過半数であればよいと改めて、改憲しやすくしようとするもの。)
 ●前文の全面的改変とともに9条2項(戦力不保持・交戦権否認)の削除―実はこれこそが『本丸』。
(3)これらの改正点を衆参両院の憲法審査会が検討して憲法改正原案を審議 
  憲法審査会の構成(各党議員と学識経験者からなる)―衆院50名以内 参院45名以内
         各党委員は(議席数で比例配分)
             衆院―自民31、民主8、維新5、公明4、共産2
             参院―自民21、民主11、維新2、公明4、共産1、社民1、生活1、次世代1、元気1
  上記のような改正点の幾つかを一括して国民投票にかけるか、それとも個々にかけるか。
     安倍自民党は今のところ個々に国民投票にかける方針。
     まずは手始めに環境権・緊急事態条項・私学助成などから幾つかに絞って、賛成が得られやすい方から4~5回「改憲国民投票」をやってみて慣れさせたうえで、最後に「前文と9条改憲」に持ち込む作戦。  
(4)国民投票は有効投票総数の過半数が改正に賛成であれば改憲成立ということになるが、問題は投票率―半分以下あるいはたった1割でも「有効投票の過半数」であれば改憲が成立することになるのかだ。
 賛成か否かどちらとも言えないとか、わからない、どっちでもいいという人は棄権し、わざわざ投票所に足を運んで投票する人は「はっきりと賛成」で是非とも通したいという自覚的賛成派か、「はっきり不賛成」で是非とも通したくないという自覚的反対派(「環境権」などの枝葉な部分的「加憲」や改正は、実は本命の9条改定に至る国民投票の予行演習的なもので、これを通してしまったらそれが突破口・「蟻の一穴」となり、現行憲法の核心部分までも全てが壊れてしまうということを分かっているが故の不賛成)のどちらかであり、「環境権」保護のためだとか「私学助成」を促進するためだとか、災害など非常事態に対処するために必要な緊急事態条項だといえば、自覚的反対派以外の人にとっては、反対する理由がないように思えて、反対し難いわけであり、投票する人は自ずから賛成票を投ずる人が多くなり、「有効投票の過半数」を得やすいことになるだろう。それが安倍自民党のねらい。
(5)護憲派は、このような安倍自民党など改憲派の戦略に対して、はたしてどう対抗するのか?が問題。
 世論調査は、「憲法改正」自体は賛成の方が上回っている。9条については今のところは「改正」反対のほうが上回っているが、はたしてどうなるか。自民党・改憲派は世論形成に最大限力をいれるだろう。既に各都道府県で憲法対話集会を(米沢では昨年5月)開いて改憲への機運を高めており、若者や子育て中の主婦たちにはマンガ(12年に発表した自民党の改憲草案の内容を説明したマンガ)などで啓発しようとしているのだそうだが、これらに9条の会その他護憲派はどう対抗するのかだ。


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