米沢 長南の声なき声


ホームへ戻る


安倍首相とマスコミ幹部の会食問題
2015年01月01日

 ネット情報によれば、山本太郎議員が参院議長に安倍首相とマスコミ幹部の会食に関する次のような質問書を提出したという。
 「新聞報道によれば、安倍首相は・・・・全国紙やテレビキー局といった報道各社の社長等の経営幹部や解説委員・論説委員あるいは政治関係担当記者らと会食を頻回に行っていることが明らかにされており・・・・」「政権トップとメディア関係者の親密な関係、政治家とメディアの癒着が報道の中立公正公平、不偏不党の観点から批判の対象になることは、今や欧米などの先進諸国においては常識であり、安倍首相のこれらの行動は、国際的な常識から見ても極めて奇異である(云々)」。
 ライブドア・ニュースには、「この会合を唯一批判的に取り上げた『しんぶん赤旗』」として、同紙のこれに関する報道を紹介している。ネットで、その赤旗記事を調べてみると次のような事実関係が掲載されている。
 (いずれもこの2年間で、回数の多い順に挙げれば)
 「読売」の会長(ナベツネ)と8回、社長と2回、論説主幹と7回。
 フジテレビの会長と7回。「産経」の会長と4回、社長と3回。
 日テレの社長と4回、解説委員長と6回。
 「日経」の会長と2回、社長と1回、論説委員長と1回。
 「朝日」の社長と2回、政治部長と4回。
 「毎日」の社長と2回、特別編集委員と4回。
 テレ朝の社長と3回。
などとなっている。

 これらは政局の節目節目で行われた。秘密法強行の直後、集団的自衛権の検討表明の日、靖国参拝や消費税増税強行の直後に報道各社の政治部長らと。
これらの会食は、高級料理店で2~3時間、通常の取材と事が違うだろう。

 これらの行為には、明らかに為政者側のマスコミ各社に対する選別(ひいき)意図がはたらいている。
 これらの行為を禁止する法律はないので違法とは言えない。しかし、公器としての報道機関は特定の層(利益集団)だけでなく全ての国民にとって中立公正でなければならないというのが原則であり、権力の監視・チェックを本来の役割とするというのが厳然たるコンセンサス(常識)としてある。イギリスの「タイムズ」の往年の編集長ハロルド・エヴァンス氏は「首相と会食することはジャーナリストとして絶対に避けなければならない」と述べ、報道の独立性を強調しているとのこと(立教大名誉教授・門奈直樹)。

 
 為政者は自分たちの思想・政策に基本的に反しないか、同調的な書き方・報じ方をマスコミにたいして望み、自分の意に反した(自分の考え方や政策に批判的な)書き方・報じ方をするメディア・ジャーナリストを嫌う。
 また、メディア・ジャーナリスト側には、為政者・権力者の考え・真意(心のうち)やかれらが握っている情報を探り聞き出すために、その懐に入って彼らに近づき直に接触しようとする。(しかし、為政者の側は狡猾。ちゃんと選別して話す。相手―所属する社や局―を選び、話しておいた方が都合いいか、話してもかまわない情報と都合のわるい情報を選り分けてしか話さない。)
 それにメディア側には政権に対して消費税の軽減税率を適用してもらいたいという思惑もあるだろう(ジャーナリスト・斎藤貴男)。

 このようなそれぞれの思惑から、会食の場や機会を為政者・マスコミ双方とも利用したがるのだろう。
 だからといって、法律で禁じられていないから、なんでも自由というわけでもあるまい。
 必要不可欠なのは、そうすることが自分たちに有利・有益かどうかだけではなく、国民のために有用かどうか、全ての国民にとって中立公正・不偏不党であるべき原則に照らしてどうかである。

 この問題は、マスコミの誤報問題に劣らない大きな問題として取り上げられて然るべきだろう。
 会食にはカネ(代金)がかかるが、それをポケットマネーならいざしらず(私費ならば誰と会食しようが勝手だという言い分は通るが)、公費(国民の税金)からそれが支払われているとなれば、合法では済まされまい。
 いずれにしても、山本太郎議員がこの問題を取り上げて質問・異議をとなえているのは理の当然であろう。


ホームへ戻る