どのマスコミも「自公圧勝」という見出しで、あたかも安倍政権は圧倒的支持で信任されたかのように国民に思い込ませる論調。
しかし、よく調べて(分析して)みると、議席は3分の2維持で優勢は保ったが、自民党は4議席減らしており、得票は昨年の参院選に比べ80万票減らし、公明党も25万票減らしている。
その得票率をみると、全有権者に占めるその割合(絶対得票率)では自民党は小選挙区では24%、比例区ではわずか17%にすぎない。
投票率は戦後最低で52.7%だが、無効票を除いた有効投票率は50.9%で、実に半数の有権者が選挙に参加しなかったというのが実態。
これらに対するマスコミ報道は誤報とは言えないまでも極めて正確性欠くものと言わなければなるまい。正確なところは「自・公・維新はほぼ現状維持、民主は微増、共産は躍進、次世代・生活の党はともに激減」のはず。マスコミは民主党にたいしては「二大政党の第二極」、維新の党にたいしては「第三極」として未だ期待をつなげ、「野党再編」に望みをつないでいるふしがある。
小選挙区制の欠陥など選挙制度の抜本的見直しを正面から取り上げている新聞・テレビは一つとしてない。
小選挙区制では、各選挙区で最大得票の候補者1人しか当選しない。そのため、それ以外の候補者の得票は「死票」となり、捨て票となる。
今回の選挙では、死票は全国で2540万6240票(小選挙区票の48%)。その死票率(候補者の得票のうち議席に結びつかなかった死票の割合)が50%以上の小選挙区は全体の4割強(295選挙区のうち133選挙区)、40%以上の小選挙区は8割(237選挙区)にものぼる。
自民党は小選挙区で、有効投票総数に占める自民候補全員の総得票(相対的得票率)は48%
だが、獲得議席(議席占有率)は76%。近年4回の衆院選はいずれも4割台の得票で7~8割もの議席を独占している。一方(小選挙区では)少数政党は得票率に見合った議席が得られない、ということでどうしても「一強多弱」状況とならざるを得ない。それが小選挙区制なのである。政党助成金についても然り(マスコミは正面から取り上げていない)。
総額320億円。そのうち(2013年)自民党に232億9801万円で同党の本部収入の64.6%、民主党に94億2654万円で同党本部収入の82.5%、公明党に142億6705万円で63.8%、維新の会に40億9876万円で72.1%、みんなの党には27億4776万円で73.8%だった。共産党(受け取り拒否)以外の各党はこのカネに依存し、それに囚われることになる。政党はこれによって堕落・劣化。
納税者・国民にとっては、このような政党助成金は、支持も投票もしていないのに、共産党以外の各党へ、それも大部分(73%)が自民党の手に渡ってしまう。
各党への助成金は所属議員の人数に応じて分配されるので、各党とも議員の頭数を確保することにやっきとなる。(生活の党は今回の衆院選の前後で激減し衆参合わせて4人となって、助成金が分配される政党要件5人以上を確保するため、無所属だった山本太郎議員を勧誘した。)各党でその使い道に制限はなく、何に使おうと勝手放題。
中には、助成金の分配を受けるその都合で、綱領や政策そっちのけで離合集散を繰り返す―民主党・維新・生活などはまさにそれである。
政党助成金は企業献金の廃止と引き換えだったはずが、企業献金は未だに温存されている。自民党は両方から巨額のカネを二重取りしているわけでる。小選挙区制といい政党助成金といい、どう考えても不合理。こんなのをいつまでも存続させていいものか。
90年初期の細川政権当時おこなわれた「政治改革」でのこれらの導入にはマスコミがそれに加担(選挙制度審議会や民間政治臨調に財界代表らとともに大手マスコミ関係者がメンバーに加わって主導―審議会では読売新聞の社長が会長だったり、委員27名中11名が日本新聞協会の会長と各紙の社長・論説委員らマスコミ関係者)―二大政党間で政権交代しやすくするためとか、「政治とカネ」の問題を解消するためにと称して、マスコミは「政治改革」大キャンペーンを展開したものだ。細川元首相と当時自民党総裁の河野氏は、双方が合意して成立させた小選挙区導入などそれらの政治改革は「失敗だった」と認めている。河野氏はそれが「政治劣化の一因となった」と。しかしマスコミ界のその反省は見られない。
開票の二日後、首相が大手新聞・テレビ局の幹部と寿司店で会食(完全オフレコで話し合い)したことを取り上げているマスコミもない(ネットで調べれば分かる)。
国民の多くはこれらの事実を知るまい。マスコミがそれを伝えないからだ。