米沢 長南の声なき声


ホームへ戻る


公正中立の基準は政府方針ではなく現憲法
2014年02月01日

 NHKなどのジャーナリストや学校の社会科・歴史教育を政権与党から見て「偏っている」とか「公正中立でない」と言い立てて、NHKの経営委員や会長に自らの考えに近い人物を据えたり、教科書に政府の見解を必ず書き入れて教えるようにしようとしたり、日の丸・君が代を学校に押し付けたりしている現政権。
 選挙で「圧倒的多数」議席を獲得して政権を取った「最大多数政党」とは言っても、その得票率は投票率を勘案した絶対投票率(有権者数に占める割合)から見れば、選挙区では24.67 %、比例区では15.99%に過ぎず、国民の大多数がこの政党と同じ考えで支持を寄せているというわけではなく、小選挙区制のおかげで少ない得票率でも多数議席(わずか2割台の得票で8割もの議席)を獲得できてしまうという選挙制度(小選挙区比例代表並立制)のしかけのおかげで政権を獲得しているに過ぎないのであって、彼ら政権党の考えが国民の大多数の考えと一致しているわけではないのである。
 自民党は現行憲法をずうっと気に入らなくて、安倍政権は今度こそ是非ともとばかり改憲を果たそうとやっきになっているが、ジャーナリストや教師が公正中立か否か、「偏っているか、いないか」は、自民党など政府・政権党の考えが基準なのではなく、現行憲法こそがその基準にほかならないのである。
 現行憲法は、制定過程からみれば(改憲派がよくいうところのアメリカの一方的「押しつけ」ではなく)いうなれば「日米合作」とはいえ、半世紀以上にわたって国民は概ね憲法の諸原則を支持しつつ、その原則の下で民主主義と平和・繁栄を享受してきており、改憲せずに「そのままにしておこう」というのが国民大多数の本音だろう。
 天皇も総理大臣も国会議員も含め公務員たる者すべてに憲法遵守義務があり、この憲法に違背してはならず、ジャーナリストも教師も、すべての国民はこの憲法に従わなければならないのである。
この憲法、その核心(根本原則)は民主主義(主権在民)・基本的人権・平和主義それに立憲主義(憲法は国民の人権を守るため国家権力を縛るものという原則)、これらを基準にしてジャーナリズムや学校教育が公正中立か否か、「偏っているか、いないか」を測るべきなのである。
 安倍首相の考え方に近いNHKの籾井会長や安倍首相や田母神氏を応援する百田氏・長谷川氏らの経営委員の考え方とそうでない人たちのどちらの考え方が偏っているのか。
 マスコミや学校の先生が反戦・非軍事・非暴力・反軍国主義・反軍事同盟・反基地・反核・反原発などの主張やデモを好意的もしくは肯定的に取り上げるのと、そんなのは取り上げないか取り上げても否定的に取り上げ、安倍政権の軍事同盟体制強化、秘密保護法制定、集団的自衛権行使容認、改憲路線、靖国参拝や歴史認識を好意的もしくは肯定的に取り上げるのとでは、どちらが偏っているのか。
 NHKも、その他のマスコミも、学校の先生も教科書も、公務員も守るべきは憲法を基準とする公正中立なのであって政府の方針を基準として「偏っているか、いないか」ではあるまい。
 憲法の基準からすれば、それにより忠実で擁護に努めている党派(共産党や社民党など)やメディアが偏っているのではなく、むしろ憲法基準に背き改憲してしまおうとする党派やそれに同調するメディアのほうこそ偏っているとかんがえるのが妥当なのだ。


ホームへ戻る