特定秘密法で公安警察がクローズアップされている。
警察というと無邪気な庶民にはパトカーやパトロールのお巡りさん、泥棒や強盗・傷害・殺人・詐欺事件など犯罪を取り締まるお巡りさん、交通整理のお巡りさん。暴力団や暴走族の乱闘に出動する機動隊、デモなどを警備するお巡りさん等々、市民を守り犯罪を取り締まってくれるお巡りさんのイメージしかないという向きが多いだろう。
しかし、これら刑事警察や交通警察のほかに、警察にはもう一つ、公安警察(警備公安警察)というものがあるのだ。戦前生まれの年配者には戦前・戦中あって終戦とともに廃止された「特高」(特別高等警察)というものを知っている人はまだいるだろう。
これらはどんな警察かといえば、それは体制転覆・破壊活動を企む政治犯・思想犯・テロリスト・スパイなどを取り締まる警察のこと。「取り締まる」とは言っても、普通の警察官のように犯人を摘発・検挙することよりも情報収集活動を主たる任務にしている。情報収集活動には、警察当局がその可能性があると見なしている団体・個人をリストアップして監視(監視カメラのようにどかで、或いはブログなどネット監視も)・聞き込み(情報提供「協力者」から、或いは密告者から)、或いは潜入してスパイ・盗聴も。
公安警察は冷戦終結(ソ連・東欧陣営崩壊)後衰退、95年オウム事件までは多くの人員を抱えていたが事件以後縮小傾向にあったのが、9・11(米国での同時多発テロ)をきっかけに再び盛り返したという。
今回の特定秘密法には4分野があり、防衛・外交に関する事項と「特定有害活動」(スパイ活動)・テロ活動の防止に関する事項とがあるが、そのうち後者に関わるのが公安警察なのである。そしてその情報収集活動で得た情報の全ては特定秘密に指定されることになるわけである。
これが怖いのは、善良な市民が、いつの間にか悪者扱い(政治犯・思想犯・テロリスト・スパイか、それらにつながる人物と疑われ)監視され、付け狙われることである。(石破幹事長でさえ、デモで声を上げ叫んでいる市民をテロリストと同然だと思っている、そういう意識なのだから、公安警察官の多くはそのような判断をするのだろう。)
これが怖いのである。
日本社会の雰囲気はこれでおかしくなる。戦前・戦中の我が国やどこかの国では今なおその真っただ中にあるような「監視社会」・「密告社会」、どこかの国のように「過激な軍事・警察」ではなくとも「穏やかな(じわりじわりと進行する)軍事・警察国家」にこの先向かっていきかねないのだ。
<参考文献:「世界1月号」>