米沢 長南の声なき声


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中国の防空識別圏設定と秘密保護法
2013年12月04日

 中国の防空識別圏の設定―「日中衝突のリスク」・「軍事的緊張」高まる―だから日本版NSCも秘密保護法も必要だというのか?
 いや、このような時こそ、秘密保護法などによって情報が機密(特定秘密)にされ国民がこれに目・耳・口が閉ざされて何することもできないなどということになってはならないのだ。
 この空域での中国軍機の動き、これに対する空自や米軍機の対応活動とその情報が機密にされ、国民が実態を知らないうちに「不測の事態」・軍事衝突が引き起こって、反中感情だけが激化して「第二次日中戦争に突入」などということにでもなったら・・・・。
 イラク戦争はブッシュ政権がありもしない大量破壊兵器とアルカイダに関する情報操作(虚偽情報)から始まったし、ベトナム戦争もトンキン湾事件(湾内で米艦が北ベトナム軍の魚雷攻撃を受けたというでっちあげ事件)の情報操作から始まった。それに日本軍(関東軍)による南満州鉄道爆破謀略事件に始まる満州事変、真珠湾奇襲攻撃に始まる対米開戦も秘密裏に行われた。いずれも戦争は秘密から始まっているのである。
 中国や北朝鮮の「脅威」を口実に、我が国の安全保障のためだとして秘密保護法を制定しようとしているが、「脅威」の実態・真実を国民はよく知らなければならいのであって、「脅威、脅威」と煽られるだけで、実態・真相を見極める情報は秘密にされて、訳も分からず再び戦争へ引きずられるようなことがあってはならないのである。菅官房長官は「秘密漏えいが脅威だ」というが、むしろ「秘密隠しこそが脅威」なのだ。

 ところで、そもそも防空識別圏(ADIZ)とは
 領空・領海(海岸線から12カイリ=約22キロ)とは違って国際法上のルールが確立しているわけではない。高速飛来(22キロは旅客機なら1分、超音速の軍用機なら数十秒で領土上空に到達)して接近する航空機に対して侵犯をくい止めるには領空侵犯を確認してからでは手遅れになるので、予め領空の外側にライン(「防空識別圏」)を設定して、(事前に飛行計画の提出なく、防空チャンネルによる相互通報が機能しない国籍不明機が)そこを超えたら警戒態勢に入るという基準(目安す)線のこと。
 警戒態勢とは警戒機が{スクランブル(対領空侵犯措置)発進→並列飛行→進路変更を促す→領空侵犯寸前になると曳光弾を発射して警告→侵犯すれば誘導して強制着陸を促す→従わない場合は撃墜も}という段階をとって行動(日本の航空自衛隊は、これらの措置を「交通規則ROE」に定めているといわれるが、それは防衛機密)。
 1950年代アメリカが真っ先に設定し、その後、海岸に接する国々がそれぞれ設定、韓国も。しかし中国は設定していなかった。
 日本の防空識別圏は、1945年にGHQが設定したものを1969年に引き継いだもの。そこへ近年、中国軍機が侵入、2012年度だけで306回(自衛隊機がスクランブル発進)。
 中国によるこの度の防空識別圏の設定は、これに対抗したものとも見られる(但し、中国側は「日本に対抗しようとしてそうしたわけではない」「20ヵ国以上が設けている、正当な権利だ」としている。
同国国防省は「識別圏内を飛行する航空機は国防省の指令に従うこと。従わなかったら、その航空機に対して中国の武装力は防御的緊急措置を講じる」と。
 これに対して日本政府は「隣国(日本・韓国)に対して一方的(勝手に)にそれぞれ(日韓)の防空識別圏に重ねて(食い込んで)設定し、日本が実効支配している地域(尖閣など)に対して力によってその変更を迫るものだ」と非難。
 アメリカ政府は「防空識別圏を設定すること自体は新しいことでも特別なことでもない。が、事前の調整がなく、識別圏内(航行自由な公海上)を通るだけで事前通告を求めるなど手続きに問題があり、一方的だ」と。とは言うものの、撤回要求までは踏み込まず。日中間に「不測の事態」「意図しない衝突」の危険を懸念。



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