米沢 長南の声なき声


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県の革新懇に行ってきて思ったこと、考えたこと
2013年09月01日

 山形県革新懇総会に行ってきました。そこでは主として参院選への取り組みと、その結果について話されました。
 そのなかで、革新懇としては「3目標」(国民本位の経済、護憲、反安保)の観点から本県各候補に公開質問状を送って回答を公表するようにするといったこともあって然るべきだったのでは、との指摘がありました。
 人々からは共産党が舟山候補と反自民で連携すればという声もあったが、その点は第一に舟山候補の側に、近藤議員らTPPや原発・消費税でも意見が食い違う民主党の支援を受け入れ、共産党とは共同で闘う意思がなかったこと。それに「みどりの風」とは安保政策(日米同盟中軸路線)など基本政策で合わないところもあって、任期6年間のあいだにどう揺れ動くか分からないという疑問から同候補との選挙協力には無理があり、今後「一点共闘」でいくしかないと判断した、とのこと。
 それらの話を聞いてきて思ったことは次のようなことです。

 参院選は、自民党が圧勝、共産党が躍進。それは、民主党への失望、それに維新への違和感、「どうせ自民党が勝つに決まってる」との事前予測が投票率を下げ、民主・維新などから離れた票の大半が自民党に、残りが共産党に集まった、その結果だといわれる。(西谷修―東京外語大学院教授―は共産党が票を集めたのは反自民票の受け皿が他にないが故の「一時避難」で、同党の長期低落傾向は止まってはいない、との見方。同党自身も「実力以上の結果だ」としているが、「第3の躍進」の足掛かりとも。) 
 そこで問題は、今回の共産党の躍進が一過性に終わらず、同党が自民党の対決政党(反自民の「受け皿」政党)として多くの人々から信認を得て不動の地位を確保できるようになるには、国民の間に戦前から刷り込まれてきたマイナスイメージや「共産党アレルギー」ともいわれる誤解・偏見・風評を取り除く教宣(説明)が大いに必要となる、ということ。 
 (1)そもそも「共産党アレルギー」はどこから?
 この党は日本の政党としては一番歴史が古い(91年)が、結成と同時に非合法下に置かれ公然たる活動は禁止されていた。その綱領や主張は「主権在民」「大地主・財閥資本家の支配に反対」「反戦」など、天皇主権と地主・資本家の支配体制(国体)にまっこうから逆らうものだったから、国賊・非国民あつかいされて迫害を受け、治安維持法で徹底的に弾圧された。
 敗戦・米軍占領下で民主化が行われ、禁止が解かれて迫害・弾圧からは解放された(49年総選挙では共産党は4議席から35議席に大躍進)。しかし間もなく、列車転覆などの謀略事件(下山・三鷹・松川事件)が起き、それがいずれも「国鉄労組の共産党員の仕業」とされ、折から、ソ連や中国共産党の干渉(武装闘争路線の押しつけ)、それに呼応する派と反対派に内部分裂(「50年問題」)、それらに乗じたマッカーサーと吉田政府によるレッドパージ(職場から追放)にあうも、占領解除にともなって追放は解除され、統一を取戻し、干渉を排除して自主独立路線をとり続けるようになった。
 60 年・70年安保闘争など社会党と共産党が組んで革新共闘で盛り上がり、国政・自治体とも選挙で共産党は躍進した(72年総選挙で38議席、79年総選挙では39議席かくとく)が、80年社公合意(社会党が公明党と組んで共産党を排除)以後、あの手この手の反共作戦で封じ込められ、孤立へ追い込まれるようになった。
 それに、ソ連や中国共産党による革命モデル(武装闘争―暴力革命、革命の輸出―覇権主義)と社会主義モデル(一党独裁と統制経済)が悪い見本となって、共産主義といえば「自由がない」「民主主義がない」というイメージが人々の頭に焼きついた。
 この間、この党自身による微力な(非常に限られた)宣伝・広報手段(機関紙などは戦前は禁止され秘かに「地下」発行)に対して圧倒的なマスコミや多くのメディアによる反共宣伝と俗説の流布が行われ、これらのマイナスイメージがずうっと焼き付けられきた、その結果のアレルギーなのだ。
(2)よく聞かれる俗説
①「共産党」といえば「共産主義」、共産主義といえば「私有財産を認めない」という誤解。
 「共産」とは「共同で生産する」ということだが、それは、生産手段は共有しても、生活手段まで共有するということではなく、生活手段・享楽手段とも私有財産は保障されるということ。
 「共同で生産」ということは、旧ソ連のように国有・国営で国家・官僚が管理・運営するのではなく、生産者・労働者自身が管理・運営するやり方だということ。それに公有・公営だけではなく協同組合など多様な形態があるのだということ。
 資本主義は、生産手段の所有と企業の管理・運営が資本家(株主・投資家など)・企業経営者によって私的に行われるが、それは社会のニーズがあるからとか、労働者に収入を得させるためだけではなく、必要不可欠なのは利潤が得られることで、それが得られなければ成立しない。企業は、競争でリードを保ち追い越されないようにするため、たえず品質改善・製品開発・規模拡大・人材確保に努めなければならず、それらに必要な投資資金を確保するため、たえず最大限利潤を追求しなければならない。それに出資者(株主)に配当・利益を保障しなければならないのだ。だから、人々がたとえどんなに欠乏にあえいでいても利潤が得られなければ売らないし、代金引換えなしにタダで与えるなどというわけにはいかず、あくまで利潤が先行。環境公害防止費用や従業員の待遇改善(賃金アップ)などは二の次で、利潤を最大限確保するため、むしろそれら(環境コストや賃金コスト)を節約し抑えようとするので、環境公害と賃金(購買力)抑制が絶えず付きまとう。そして個々の私企業がてんでに最大限利潤をあげるべく競争しながら生産・販売を行うため、全体として生産過剰になり、(値下げしても売れ残り)恐慌や不況が避けられないことになる。
 労働は本来、人間にとって自己実現活動であり、喜ばしいものであるはずなのに、資本主義企業では労働の成果は資本家の手にわたってしまい(生産物は商品として売りさばかれ、儲け―利潤は会社と株主の手に)、労働者は一生懸命働けば働いただけ自分のふところが豊かになるわけではなく、働けば働くほど(サービス残業など)かえって辛い苦役となってしまうことにもなるのだ(労働疎外)。
 このように資本主義にはそもそもからして矛盾・不合理が付きまとうので、いつまでも最適な経済制度であり続けることなどあり得ず、いずれ社会主義(個人本位でなく社会本位)や共産主義のやり方に変わらざるを得ないのだということ。 
②「共産主義は独裁政治で自由がない」という誤解。
 そもそも共産主義(コミニズム)がめざしているのは「真に平等で自由な人間関係からなる共同社会(コミュニティ-)」「人間の自由の全面的な実現を本来の特徴とする共同社会」であり、あらゆる束縛・抑圧・搾取・差別・暴力・戦争からの人間の解放なのである。 
 平等を重視するが、それは個々人の自由・人権が万人に等しく保障されなければならないと考えるからである。
 旧ソ連や中国・北朝鮮などで行われてきた一党独裁のやりかたが、社会主義・共産主義のイメージを貶めてきたが、日本共産党の考えでは、これらの国のやり方は本当の社会主義・共産主義とは無縁のものであり、自由と民主主義こそが社会主義・共産主義の命であるという考え。反対党を含む複数政党制も選挙による政権交代制も当然あって然るべきだというのが、その考え方。
③「暴力・怖い」イメージ
  革命といっても、民主主義の遅れた国で強権政治・圧政下にあった国で、実力行使(暴動・武装蜂起)に訴えるしかなくて行われたロシア革命や中国革命のような「暴力革命」路線はとらずに、言論の自由や法の支配、議会制度・選挙制度など民主主義の発達した我が国では、あくまで平和的・合法的な革命(議会の多数を得ての革命)をめざす、ということ。
④「独善」「なんでも反対」「万年野党だから何でも好き勝手なことが言える」といった誤解。
 実際は、国会では6割以上の法案に賛成(先の国会では、出された法案の57%に賛成)。
 しかし、戦前来、侵略戦争・圧制・強権政治などには弾圧・迫害に抗して頑強に反対(だからこそ「お上」の言うことに逆らうのは「非国民」と思い込んでいる人たちからは嫌われる存在だったのだ。)今は改憲・原発再稼働・消費税増税・TPP参加などには「ならぬことはならぬ」とばかりに徹底して反対している。反対するにしても、建設的な対案を示したうえで反対しているのであって、けっして「反対のための反対」ではないし、それに、それらには、国民の多くも反対しているのであって、けっして「独りよがり」「好き勝手」などではあるまい。
 同党は革新懇のような基本目標(3目標)で同調する無党派の人々との共同や、保守の人も含め基本政策や立場の違いはあっても、憲法・原発・TPPなど個々の問題で一致する人々や諸党派・諸団体との共同(「一点共闘」)に努めることを基本方針にしており、けっして「独り我が道」ということにはならない。
⑤「のけ者」イメージ―いつも「蚊帳の外」
 1980年社公合意(連合政権めざす)―社共の革新統一を分断、共産党排除へ
それ以後なにかにつけて「共産党を除く野党協議」「非自民・非共産連合」あるいは「共産党を除く与野党協議」などと共産党だけがのけ者に。(共産党はやむなく無党派と革新懇を結成へ)

 その他いろいろあるだろうが、これらの誤解や偏見を解き、マイナスイメージ・風評を払いのけ、人々に本当の考え方と実態を大いに知らしめ広めなければなるまい。それにどれだけ成功するか、それこそが、同党が今後長らく自民党に対する対決政党として最有力の地位を保つうえで、カギとなるのではあるまいか。

 これからまた「野党再編」・新党結成・対自民「非共産連合」・自民vs非共産の「新二大政党」など新たな「受け皿」を作り出し、共産党に対するネガティブ・キャンペーンの展開と合わせて反自民票が共産党に向かわせないようにするあの手この手の反共作戦・共産党封じ込め策が講じられるだろうが、それにどれだけ抗しきれるか。

 改憲派は自民党をはじめ維新・みんなの党など、その勢力は圧倒的だ。それに比べて護憲派は(かつて社会党は自民党に対抗する野党最大勢力だったが)社民党は細る一方。こうなると共産党に賭けるしかないのでは、とも思ったしだいなのですが如何なものでしょうか。


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