米沢 長南の声なき声


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安全保障―9条は護憲と改憲のどちらが現実的に合理的か(再加筆版)
2013年06月16日

軍事力と非軍事外交力のどちらに頼るのが賢明か
領土・主権を守るのにはどちらが確実か。
どちらが「枕を高くして寝られる」(安心)か。どちらが危険か。
どちらが、財政コスト的に有利か。
どちらに現実的合理性があるか
1、軍事力(「防衛力」「軍事的抑止力」)のほうに頼るやり方
 自衛隊(→国防軍)
 日米同盟(安保条約)―日米軍事協力・米軍基地・米軍の核戦力に頼る
 自衛隊が米国の軍事戦略の中に組み込まれる(役割分担)
 問題点
 ①日米側の軍事力は中国・北朝鮮などに対して圧倒的に優勢だが、核戦力については相対的な差の大きさ(核弾頭数はアメリカが8000発に対して中国240発、北朝鮮は不明なのだがせいぜい10発未満)は大して意味がない。なぜなら、仮に中国に対してアメリカが日本に加勢して核兵器を発射すれば、中国はアメリカのどこかの都市に報復攻撃を加え、100万人もの市民が犠牲になるが、それを覚悟でアメリカは日本のために核兵器を使うだろうかといえば、否だから(「核の傘」は機能しないということだ)。アメリカは日本を守るために何でもしてくれるというわけではないということだ。
 また、北朝鮮がノドンかムスダンに核弾頭をつけて東京に打ち込めば100万人が犠牲になる(ミサイル防衛で着弾前に迎撃して撃ち落とすといっても、そんなに巧くいくかわからない。実験で成功しているとはいっても、それは標的となる弾道ミサイルの発射の時間・場所・速度・落下地点などデータが分かっているからなのであって、実戦ではいつ、どこからどこへミサイルが飛んでくるかわからないのだから)。
 ②ある国・ある勢力(中国・北朝鮮など)に対して
              不信・対抗~敵対(「仮想敵国」視)することを前提
       ・・・・敵視政策―「敵をつくる」―友好・信頼関係を阻害
             それらの国の軍備増強・攻撃(軍事衝突)を誘発する危険
 ③互いに脅威―中国・北朝鮮が脅威といっても、むこうから見れば、こちら(日米)を脅威と―自衛隊は警察予備隊の名で発足して以来拡大増強してき、日米安保条約で超核大国アメリカと同盟関係を結んできた、それは大きな脅威―互いに不信・疑心暗鬼―一方的に相手の方に「軍備増強をやめよ」とか「核・ミサイルを放棄せよ」と言うだけでは、相手は応じない。
 ④米軍の核戦力(核抑止力・「核の傘」)に頼る―しかし、それがいかに強大であっても自暴自棄になって攻撃してくる(自爆テロのような)相手には抑止が効かない(北朝鮮は国家及び政権が武力攻撃で崩壊させられると確信した時には、あらゆる軍事的手段を尽くして反撃してくるからだ。それが核兵器の開発にもつながり、核兵器での攻撃にもつながる。)
 ⑤米国の戦略・軍事政策に左右される
     ―日本はアメリカの同盟国として軍事協力・共同歩調(自衛隊は米軍に追随)
       他の国々や勢力(反米勢力)からはアメリカが敵なら日本も敵とみなされる。
 ⑥ミサイル防衛―確実性に欠ける(百発百中 撃ち落とすことはできない)―「気休め」にしかならない。(たとえば北朝鮮は300発程度のミサイルを実戦配備しているといわれる。ミサイルは数分で飛んで来る。これらのミサイルが発射されたか否かすらほとんど掌握できないのだから、弾道の軌道計算はまずできない。それに、攻撃する側は、ミサイルから弾頭を複数―「おとり」も―発射してくるので、本物を見分けて命中させることは難しいし、複数のミサイルが同時に発射されて飛んできたら、それらを全て打ち落とすのは不可能<参考―元外交官・防衛大学校教授・孫崎亨「不愉快な現実」講談社現代新書>) そんなものに1兆円以上の巨額予算を米国に払っている。
 ⑦敵基地先制攻撃作戦―山中のどこにミサイル基地があるか詳しい位置が分からない(衛星打ち上げロケットの固定発射台と違い、ムスダンなどの実戦用のミサイルは山岳地帯に隠されたトンネルから、トレーラーの自走発射機に載せられて出てきて10分間で発射。偵察衛星―時速2万9千キロ近い速度で南北に地球を一周約90分で周回するから、昼間に1地点を撮影できるのは1日1回、せいぜい約2分間―で捉えるのは難しい。無人偵察機は、ジェットエンジン付きグライダーで長時間上空から監視できるが、飛行高度は約1万8千メートルだから対空ミサイルで撃墜される)。位置が分かったとしても間に合わない(日本海上の潜水艦などから「トマホーク」などの巡航ミサイルを発射したとしても時速880キロだから、内陸の目標まで約20分、ムスダンが10分で発射されるなら間に合わない)。
 ⑧尖閣諸島で今中国とやりあったら、この付近(中国にとっては「台湾正面」に含まれる)では中国空軍(南京軍区に16の空軍基地、それらに戦闘機が合計約320機、うち米国のF15・F16などと同等の新型戦闘機は180機、それに対して航空自衛隊は那覇空港に約20機、本土から追加配備20機合わせても40機、その差は少々の技術では補えない)の方が優勢で、制空権は中国側に握られ、海自の水上艦は行動を阻まれ、自衛隊の「海兵隊」による島の上陸はできず(水陸両用車が上陸できる海岸も、オスプレイが着陸できるヘリポートもなく、空中降下しかない)、上陸しても孤立(補給も帰還もできる保証ない)。アメリカは中国との死活的に重要な経済関係を断ち切ってまで日本の無人島のために戦ってくれるとは考えられない。
 要するに「尖閣諸島近辺で日中間の軍事衝突が起こった時に、日本が勝つシナリオはない」(孫崎氏)ということだ。

 以上、これらのことを勘案すると、軍事力に頼れば安心とは到底言えない
  <参考―データは週刊紙AERA6月17日号に掲載の田岡俊次・軍事ジャーナリスト「防衛大綱に非現実提言」から)
2、非軍事外交力のほうに頼るやり方(憲法9条に徹するやり方)―間断ない対話・外交交渉
 コスタリカのロベルト・サモフ弁護士(大学生の時、コスタリカ政府がイラク戦争の有志連合に名を連ねようとした際に、それは不戦憲法に違反しているとの勝訴判決を勝ち取った人物)が来日した折、ある市民集会で参加者から「コスタリカは軍隊がないのに攻められる心配はないのですか?」と訊かれて「コスタリカはそのような心配はありません。平和的な外交を展開しているからです」と答えたうえで、「逆にあなたに訊きたい。日本はなんか攻められるような原因があるのではないですか」と(笹本潤「世界の『平和憲法』新たな挑戦」大月書店)。
 北朝鮮―日本では脅威だと思っているが、向こうから見れば日米韓(アメリカとは朝鮮戦争以来、休戦状態にはあるものの未だに終結しておらず、日韓はアメリカの「核の傘」・ミサイル防衛網で守られ、基地を置き、しょっちゅう合同軍事演習)が脅威。
 日本は北朝鮮との間には拉致問題・核・ミサイル問題だけでなく、過去(日本が植民地支配によって与えた損害と苦痛)の清算と国交正常化問題もあるのだが、安倍政権は「対話と圧力」両用で対応すると言いながら、拉致・核・ミサイル問題だけで制裁一本やり、対話は(最近、飯島内閣官房参与の訪朝があったものの)ほとんど進展ない。
 中国に対しても、尖閣問題で、一方的な島の国有化を宣言し、かつ「日中間に領土問題は存在しない」と決めつけて係争地として「棚上げ」も認めないとして、(「対話の扉はいつでも開いている」と言いながら)対話を突っぱねている。
 そのような経済制裁・軍事的圧力一辺倒ではなく、対話・交渉路線をあくまで追求すること。
 ①「殺さなければ、自分が殺される、それが戦争だ」。抑止力と称して互いに武器・軍備(銃や砲・ミサイル)を持ち合えば、「撃たなければ、自分が撃たれる」(「武力攻撃事態法」は、相手国の攻撃が行われなくても、相手の攻撃が『予測される場合』に自衛隊を発動できる)となり、結局戦争になり、悲惨な結果になってしまいかねない(アフガン戦争、イラク戦争―アメリカはイラクが大量破壊兵器を持っていると思い込んで攻撃)。互いの家に銃など持たなければ、安心であり、国が軍備など持たなければ、何もされないし、他の国も軍備を持つ必要がなく、互いに軍備を持ち合わなくてもいいことになる。
 ②「何もしない国」に対して攻撃を仕掛けるような国は今ではどこもない―キッシンジャー元国務長官(『核兵器と外交政策』で)いわく、「核兵器を有する国は、それを用いずして無条件降伏を受け入れることはないだろう、一方でその生存が直接脅かされていると信ずるとき以外は、核戦争の危険を冒す国もないとみられる」―要は「その生存を直接脅かす」ようなことはしないということ。北朝鮮が核・ミサイル開発をやめようとしないのは「その生存が脅かされている」と感じていて、抵抗手段はそれしかないと思い込んでいるからであり、そのような北朝鮮に対しては、「できるだけ早期に国交を結び、経済的結びつきを強め、北朝鮮に対して日本との関係がプラスになるようにしていくべき」(孫崎氏)なのでは(拉致問題の解決も含めて)。
 ③諸国と協調・平和友好関係を結ぶ―「信義に信頼」―「敵をつくらない」
 ④領土問題など紛争があっても軍事衝突~戦争にしない。
 ⑤信頼醸成のためにやっておくべきこと―かつての侵略加害に対する償い(補償)―韓国・中国など政府は賠償放棄、そのかわり日本は経済援助協力、個人補償は無し。北朝鮮には何もしていないが、やるようにすべきである。
 ⑥発展途上国など諸国に対する経済援助協力(ODA)、紛争後の地域には復興支援(「平和構築」)に努めること。
 ⑦友好協力条約の締結―TAC(東南アジア友好協力条約―ASEAN諸国の他に日本・中国・韓国・インド・パキスタン・オーストラリア・ロシア・フランスそれに北朝鮮も加入して合計25ヵ国加盟―すべての国の主権尊重、相互の国内問題への不干渉、紛争の平和的手段による解決、武力による威嚇・武力行使の放棄を基本原則とする)が出来ている。これは日本の憲法9条に合致しており、それを生かして日本がイニシャチブを発揮すべき。
 ⑧国民の生命・財産は(ギャングやテロリストから)警察・機動隊・SAT(対テロ特殊部隊)が守る
  国土・領海・領空は(侵犯から)「国土警備隊」(←自衛隊の改編)・海上保安庁が守る(このところ尖閣諸島海域で常態化している中国の監視船の領海侵入に対応しているのは海保巡視艇)
  シーレーンは海賊などから海上保安庁が守る(公海上の犯罪に対処)

 中村哲氏(医師でNGOペシャワール会を主宰し、アフガニスタンで医療活動と灌漑用水路建設に従事)いわく、「アフガニスタンにいると、軍事力があればわが身を守れるというのが迷信だと分かる。敵をつくらず、平和な信頼関係を築くことが一番の安全保障だと肌身に感じる。単に日本人だから命拾いしたことが何度もあった」と。
 伊勢崎賢治氏(元国連平和維持軍武装解除部長・現東京外語大教授)いわく、「軍閥たちに対して、丸腰の私たちが武装解除できたのは、原爆を落とされて不戦を誓った国から来た日本人だからにほかならない」と。        

3、両方(軍事力と非軍事外交力)に頼るやり方
 問題点―そのやり方でいくと、結局(いざとなったら力づくでと)軍事力に依存し、外交努力を尽くすのが中途半端になる。
 我が国のこれまでのやり方がそれだ。憲法上、平和主義を建て前としながらも、日米安保と自衛隊の軍事力に頼った安全保障政策をとってきた。それで平和主義に基づいた積極的な外交展開や国際貢献はほとんど見るべきものはない。(憲法前文で「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う」と唱っていながら、ずうっとアメリカに追従し、最近ではNPT(核不拡散条約)準備委員会で核不使用の共同声明に署名をしなかったり等で、とても名誉ある地位を占めていると言えるような状況にはない。)
自国の憲法では戦争放棄・戦力の不保持を唱っていながら、自衛隊の名の下に軍備を持ち、日米安保条約で米軍基地を置き、アメリカの「核の傘」で守ってもらっている。そして他の諸国にはそれ(不戦・非核平和主義)を広めようとはせず、自国さえ平和であればいいという、一国平和主義になっている。(自分は自国の軍備と米国の核軍備にしがみついていながら、他国―北朝鮮や中国など―にそれを放棄・縮小せよとは言えないのだ。)これでは世界から信頼は得られず、軽んぜられる。(「一国平和主義」の後ろめたさをカバーしようと、国際平和貢献ならぬ軍事貢献の方にこれ務めている―湾岸戦争で掃海艇派遣以来、アメリカのアフガン作戦支援にインド洋へ給油艦派遣、イラク作戦でサマワに支援部隊、ソマリア近海の海賊対策、各地の紛争地における「国際平和維持活動」などに自衛隊派遣)。

  さて、1と2と3で、はたしてどちらが賢明か
                 どちらがリスク(危険)が大きいか
      どちらが中国・北朝鮮or国際テロ組織などからの攻撃を招き(誘発し)やすいか
      どちらが、国民の安全保障として現実的で合理的か

 


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