米沢 長南の声なき声


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日本の「右傾化」と外交の手づまり
2013年04月28日

 安倍政権下で次のようなことが行われている。
(1)閣僚や国会議員の靖国参拝―麻生副総理ら3閣僚は個々に、国会議員の168名は大挙して(まさに示威行動)。安倍首相は参拝は控えたが、「真榊」を奉納。「国のために命をささげた方々に尊崇の念を表すことは当然」のことだと。
 しかし、そこは単なる神社・慰霊施設ではない。明治いらい陸軍省・海軍省の共同管理のもとに、日本軍将兵の英霊を顕彰する(武勲をほめたたえる)ことを目的に設立されて、将兵を戦争に駆り立てる精神的支柱となってきた神社であり、戦後、連合国による極東軍事裁判でA級戦犯とされた戦争指導者も合祀され、日本の戦争を全てにわたって正当化・美化して顕彰している施設なのである(付属施設の「遊就館」は軍事博物館)。
 尚、天皇はA級戦犯合祀が合祀されて以来、そこへの参拝は控えている。
 そのような神社への参拝は、隣国の政府やアメリカのメディアなどからは、日本政府や政治家たちの「右傾化」とか「時代錯誤」と指摘されているのだ。
 それに対して弁明がおこなわれ、首相は「侵略の定義は国によって異なる」「歴史認識は専門家・歴史家に委ねるべきで外交問題にすべきではない」「脅かしには屈しない」と居直っているが、国々からは侵略の事実を否定し、戦後国際秩序を成り立たせている歴史認識のコンセンサスを否定するものだと受け取られているということだ。そして、韓国外相の訪日も日中韓財務相会議も取りやめとなり、日中友好議連の中国訪問も中止せざるを得ない事態となっている。
 (アメリカのメディアは、ワシントン・ポスト紙が「安倍氏は歴史を直視することができない。中国や韓国の怒りは理解できる」とし、ニューヨーク・タイムズが「日本の不要な国粋主義」と、いずれも社説で批判している。またウォールストリート・ジャーナル紙の社説は「だれが第2次世界大戦を始めたのか。この問題は、地球が太陽の周りをまわっているかどうかについての質問と並んで『解決済みの質問』とばかり思っていた。なのに日本の安倍首相は新たな解釈を下している。」「安倍氏の恥ずべき発言によって日本は外国での友人を持てなくなる」と批判している、とのこと。
 また、4月30日朝日の声欄にだが、三浦永光氏という方の投稿「安倍首相は侵略解釈を改めよ」に次のような指摘があった。「国連総会は1974年に『侵略の定義に関する決議』を採択しており『侵略とは、国家による他の国家の主権、領土保全もしくは政治的独立に対する・・・・武力の行使であって・・・・』など、8条にわたって規定している。・・・・・また、日本は51年のサンフランシスコ講和条約でアジア太平洋戦争での日本の侵略を裁いた極東国際軍事裁判の判決を受け入れることを明言した。安倍首相の発言はこれらの事実を無視するものだ。」と。)
(2)「主権回復の日」式典の開催―4月28日、それは61年前サンフランシスコ講和条約と日米安保条約が発効した日―戦後の占領統治は解除。しかし米軍の駐留と基地は継続。
沖縄は引き続き米国の施政権下に置かれた「屈辱の日」で、72年に返還されたが、そこには在日米軍基地の75%もが集中している、その基地は未だにそのまま。実質的に対米従属固定化―沖縄だけでなく日本全体にとっても(「全土基地方式」は続いており)「屈辱の日」なのだ。
 (尚、当時米ソ冷戦・朝鮮戦争中で、サンフランシスコ講和条約は全連合国との「全面講和」ではなく、アメリカ主導で、ソ連・東欧諸国・中国・インド・韓国・北朝鮮などを除いた49ヵ国との「単独講和」だった。その条約で千島列島の放棄をも認めてしまい、ロシアとは未だに平和条約を結んでおらず、千島列島は一島も返還されていない―北方領土問題) 
 安倍首相の政治的思惑―日米安保(対米従属)はそのままに憲法だけ「戦後レジームから脱却」―「自主憲法」制定(改憲)―めざす―国民の合意がない一方的な開催―そこへ天皇を招く(違憲の政治利用)。
 その式典では、安倍首相は式辞で「沖縄の人々の戦中・戦後の苦労に、通り一遍の(行動を伴わない―筆者)言葉は意味をなさない。・・・・・・東日本大震災・・・・世界中からたくさんの人が救いの手を差し伸べてくれた。・・・・中でも米軍は・・・・。私たちは日本を強くたくましくする義務がある。日本をもっとよい、美しい国にしていく責任を負っている。」と述べた。何か軽くてそらぞらしく、沖縄県民だけでなく全国民に深刻な問題を押し付け続けていることを、綺麗ごとで覆い隠しているように思われてならない。
(3)核不使用の国際会議共同声明の署名見送り―ジュネーブでのNPT(核不拡散条約)再検討会議の準備委員会で、南アフリカ・スイスなど74ヵ国が署名した共同声明―核兵器の非人道性を訴え「いかなる状況下でも核兵器は二度と使わないことが人類存続の利益になる」と―これに米中ロ英仏などとともに日本政府は署名せず(「日本を取り巻く安全保障環境が厳しい状況だから」―北朝鮮などに対し状況次第では核兵器は使わざるを得ないこともありから、という理由で)―それに対して広島・長崎両市長は抗議のコメント。
 日本政府はこれまでも核兵器禁止条約の交渉開始を求める国連決議に一貫して棄権。
 唯一の被爆国でありながら日米同盟にこだわり、アメリカの核抑止力(「核の傘」)にしがみつく―それはかえって北朝鮮に核開発・保有を(「抑止力」と称して)正当化する口実を与えるもの。

 これらは国内外から反感・不信をかい批判にさらされている。そして外交とりわけ北東アジア近隣外交が手づまり状態に陥っている。それは国益を害する結果をもたらすことになる。
 


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