米沢 長南の声なき声


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不公平なマスコミ―それに影響される有権者(上に再加筆)
2012年11月20日

<再加筆>
 マスコミは「二大政党」の他に「第3極」なるものを作り出し、世論調査にもわざわざその項を設けて答えさせている。
 NHKは誰が首相に相応しいかを「野田」と「安倍」と「どちらでもない」の3択で答えさせている。
 25日朝日の世論調査では「野田内閣支持か不支持か」、「どの政党を支持しているか」、「比例区ではどの政党に投票したいか」、「どの政党に議席を伸ばしてほしいか」を答えさせ、「原発利用」と「消費税引き上げ」と「TPP参加」をあげて、それぞれ賛成か反対かを答えさせ、これら3つだけを「争点」にしている。そして、それに加えて「第3極」の「政党同士の連携で政策の一致が重要か重要でないか」とともに、「維新の会」と「太陽の党」の合併の是非を答えさせている。
 朝日は各党の選挙公約を紹介していたが、28日には1頁を左右しきって民主・自民両党の公約を頁いっぱい詳細に紹介。ところが、30日には左側には上半分を「維新の会」に当て(下半分は広告)、右側にはその他の7党を(7分して)掲載。つまり、民自各1に対して維新には2分の1(要約)、その他の党には7分の1(要約の要約)しか当てないという不公平扱いである。
 あたかも、民自両党は「二大政党」だけに公約がいっぱい。維新は「第3極」だけに公約はその半分の多さで、その他の党の公約はわずかそれだけか、と思われてしまうような扱いなのである。
 (尚、この時点では「日本未来の党」の公約は未だ出来ていない段階)

 「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」は27日「総選挙にあたって争点提示型の公平な放送を要望します」と題した申し入れ文書を届けている。
 その中で、今回の総選挙は国民にとって死活の課題の方向性を問う極めて重要な選挙だと位置づけ、それらの課題を各政党の政策とその異同を分かりやすく伝えるよう求めている。
 そして最近のNHKの選挙関連放送は、民放や全国紙と同様、民主・自民・いわゆる「第3極」の動静や離合集散に焦点をあてた政局報道が主だと批判。こうした報道を繰り返すことは有権者の関心をこれら既存大政党に偏重させ、他の野党の政策や有権者の知る権利を阻害するとして、どの政党の政策・公約も平等に扱うよう求めている。
 28日には、「放送を語る会」と「日本ジャーナリスト会議」が連名で「有権者の判断に役立つ公正・公平で充実した選挙報道を求めます」との要請文をNHKと民放キー局に送付。
 要請文では、民主・自民の「二大政党」といわゆる「第3極」の政治家の動向に重点を置く報道が異様なまでに続いている状況は、選挙の争点をあいまいにし、これらの政治勢力への投票を誘導するもので、とうてい公正な報道といえないと批判している。
 そのうえで、政党の政策・主張の紹介は現在の議席数の多少で放送の量を配分するのではなく、公平におこない、「二大政党」と「第3極」偏重の報道姿勢をあらためるよう要請している。
 

<加筆>
 いくつかの視聴者団体(NHK問題大阪連絡会・NHK問題京都連絡会・NHK問題を考える会など)は「総選挙にあたって公平・公正な選挙報道を望みます」とする要望書を報道各社の送付している。要望書は、これまで多くのメディアが二大政党制を推進する立場で自民党と民主党による対立が政局の基本であるかのような報道を行い、「維新の会」を「第3極」として無批判に連日大きく報道していると指摘し、特定の党派の動向や主張の報道に偏ることなく、それぞれの党派の主張を公正・正確・平等に報道し、視聴者に客観的な情報を提供すること等を求めている。
 11月26日には、共産党がNHK、民放TV各局に対して「総選挙の報道・企画での政党の扱いにかんする要請」を行い、「二大政党」や「第3極」を特別扱いせず、各党を平等、公平・公正に扱うよう申し入れている。


<原文>
 じっくり情報を収集・吟味するゆとりのない有権者の多くは、子供と同様、テレビ・新聞が流す映像や語句から受ける印象(イメージやフィーリング)と学校で教えられた薄っぺらな知識とマスコミによってこれまで刷り込まれてき先入観だけで短絡的に判断しがち。
 ネットが普及しているとは言っても、日本ではまだまだテレビ・週刊紙・新聞情報などマスメディア情報が支配的だろう。
 そのマスコミは公平・中立か。公平・中立というのは全てを(選挙の場合は、公示から投票日までの選挙期間中だけでなく、その前後を通して全ての政党・候補者を)同等に扱うということだろう。しかし、各マスコミは限られた放送時間・紙面では、それが不可能であり、取捨選択をせざるをえず、ニュースバリュー(価値)づけをして、幾つかの「価値」の高いものに絞り、他の「価値」の低いものはカットということになる。その場合、何を基準に価値づけ・取捨選択するのかが問題。
 その基準は、それ(その取材対象)がより多くの視聴者・読者の興味・関心を引き、注目に値し、そしてその映像や記事を見てもらえ、読んでもらえるか(売れるか)である。
 視聴者・読者の興味・関心には二通りある。一つは、自分や自分に関わる人たちの日々の生活・将来の生活・運命に関わるもの、もう一つは単なる興味・面白味。
 国政選挙については、政治を真面目に考えている人は、国政に携わる政府と国会議員をどの政党、どんな議員に委ねたらいいのかを的確に判断するために必要な情報をメディアに求める。また興味本位・面白半分にそれをテレビや新聞・週刊紙で見る人は政局の劇的展開の面白さ、選挙戦・論戦の面白さ、どっちが勝つか負けるか、カッコいい・或いは面白味のある政治家の言動をメディアの映像や記事に求める。
 一方、NHK・民放・新聞・週刊紙各社にも社自身のポリシーがあり、この国をある方向に、そして世論をその方向に導きたいという世論形成・世論誘導の思惑をもつメデイアもあり、或いは、この国がどうなろうとそんなことは「知ったこっちゃない」かのように専ら政局、選挙戦・論戦政治スキャンダルの劇的展開、劇場型政治スター(ヒーローと悪役)の活躍・暗躍の有様などを興味本位に取り上げて、そういったことに終始するだけというメディアもある。
 興味本位・面白味を主にしているメディアの取材・掲載の取捨選択基準は対象の面白味にあることはいうまでもないが、真面目に生活をかけ世直しを望んでいる有権者・国民に各党の理念・政策・人物を的確に判断するのに必要な情報をできるだけ提供しようとするメディアの場合、放送時間枠や紙面に限りがあってそれに各党の情報提供に当てる量を加減しなければならない、その基準はそれぞれの党が国民に対してもっている影響力と政治動向を左右する影響力・勢力の大きい・小さいなのだろう。即ち政権党としての影響力、最大野党としての影響力、「第3極」としての影響力、その他批判政党としての影響力といった影響力の大きい小さい、前回選挙の得票率(実績)と世論調査の支持率の高い・低いに応じて、割かれる露出時間と紙面が配分される。(国民のあいだで、支持率が高く、国民に対して影響力の大きい政党に多くの露出時間・紙面を割くのは不公平・偏り・アンフェアとは言えない、とマスコミはそれを正当化するのだろう。)
 したがって、どうしても野田・民主党と安倍・自民党、公明党そして石・橋維新の会ばかりが、映像・紙面の圧倒的な部分を占める結果となる。

 支持者の多い政党には、国会における発言時間(本会議や委員会質問、党首討論などが、各党の議席数に応じて配分)と同様に、テレビへの露出(出演)時間と新聞への掲載紙面をより多く提供するのは、その支持者たちから見れば当然のことであり、それを議席がわずかで支持率が低い政党にまで均等配分するのはかえってアンフェアだということになるのだろう。

 しかし、そのようなやり方は、より多くの露出時間と紙面を提供してもらえるその党にとっては、いわばそれが既得権益として固定してしまい、二大政党+α(公明)いわゆる自公民3党などにとってはいつまでも有利であり、その他の政党にとってはいつまでも不利な状態に置かれることになる。
 少数党は、有権者・国民にその考え(理念・政策など)や歩んできた歴史の真実を、いつまでも伝えてもらえぬまま、先入観(その党に対する浅薄・不確かな知識・情報)だけで評価され、支持率は低いまま、小政党はいつまでたっても小政党ということになってしまっている。
 たとえば共産党などは、現存政党の中では最も古い(90年もの)歴史をもつのに、その間の歴史―戦前・戦中の暗黒時代にあって唯一、反戦と民主主義を主張し、アカ・非国民として弾圧されながら抵抗し続け、戦後開花した民主主義と不戦平和主義のその後の逆コースに抗し続けると同時にソ連や中国共産党の干渉にも抗し続けてきた事実とその役割―はろくに伝えられることなく、むしろ、挫折したソ連型・中国型共産主義の負のイメージの方が、アカ・イメージとともにマスコミその他によって焼きつけられてきた。(そして庶民からは「名前を変えたらいいのに」と言われたりしている。しかし、同党自身からすれば、他の政党が理念・政策をコロコロ変えて名前を変えてきたのと一緒くたにして党名を変えなければならない謂れあるまいと。)
 マスコミは、このような少数政党の詳しい歴史は伝えず、有権者・国民はほとんどよく知らない

 ところがマスコミには、ジャーナリズムの「公正・中立」原則に立つとは表向きで、内実は局や社自身が権力(放送局は総務省から5年毎に免許更新を受けなければならない)と財界(広告・CMのスポンサー)との利権関係にあり、その立場からの政治的思惑があることは否めない。
 財界などの立場からは、産業・経済政策も税制も金融政策・エネルギー政策も、彼らの事業にとって都合にいい政策をずうっと採り続けてくれる保守政権を維持してもらうことが宿願で、政権が革新派に変わってその体制が変革されることを恐れる。そこで彼らは、政権交代しても保守二大政党間であればよいとして、選挙制度を中選挙区制であったのから小選挙区制を導入(比例代表制と並立)して保守二大政党を作り出すことに成功したかに思われた。この選挙制度・政治改革に主要マスコミはそろって賛同し推進・協力した。
 ところが、やっと政権交代したかと思ったら、自民党に替わった民主党政権は失政を重ね、二大政党制は挫折。そこへきて大阪に「維新の会」が台頭し、それに乗じて、今度は「第3極」なるものを作り出し、いわば「三大政党制」に変えようとしているかのよう。
 そこで、マスコミは、その「第3極」づくり(迎合)にやっきで、連日、石原・橋下をテレビ・新聞に登場させ、局(フジテレビなど)によっては政党討論番組を3党(民・自・維新)だけでやらせている。「維新の会」を第3極としていわば特別扱い。「維新」「太陽」両党合併を決めた橋下・石原会談には記者が300人も集まったという。そこで彼らが取材してきた記事や写真がテレビ画面や新聞紙面を埋め尽くす。
 しかし、その派手なパフォーマンスや威勢がよく痛快そうな言動だけが伝えられ、そのファシズム的実態(当方から言わせると「イシ・ハシズム」)はほとんど隠されて、批判的に論評されることは少ない

 このようにマスコミからは国政と国民により影響力を持つ政党として報道に既得権益を与えられている自公民3党、それに「第3極」として脚光を浴び特別扱いを受けている「維新」党。それ以外の政党はテレビ・新聞にはあまり出る幕がなく、その党の真実と詳細が伝えられることはまずない。
 それが不公平・不公正でなくて何であろう。

 公示から投開票までの選挙期間中は、一応、全政党に討論番組への出演と党首や候補者の政見・動静などの記事掲載の機会が均等に与えられるが、それは12月4日から16日までの13日間だけ。政党は15党もあるのに。こんなわずかの期間にこれらの党の全てをマスコミだけから知り尽くすことは不可能であり、比較・吟味もできない。

 要するにマスコミからは数ある政党の一つ一つ、各党の候補者一人ひとりを正確に知ったうえで投票することは不可能であり、マスコミからは特定の政党だけに特化した極めて偏った情報しか伝えられない、というのが我が国のマスコミの実態なのだということ。

  そしてマスコミは、今度の選挙の対立構図を「既成政党か第3極か」とか「民主か自民か維新か三者のせめぎ合い」として描き、政治評論家は選挙結果を第一党が自民党で、自公政権が復活、第二党を民主と維新が争い、自公民の大連立の可能性もあるが、維新か民主のどちらかが野党第一党となる可能性が高いと予想している。
 また「第3極」争いで、石・橋維新とみんなの党・減税日本の「Aチーム」に対して、「Bチーム」として小沢党(生活第一)・鈴木宗男党(新党大地)・亀井新党が脱原発・消費税増税凍結・反TPPで連合して、そこに社民党・みどりの風も同陣営に加わるか否かなども取りざたされているが、今は「第3極」といえば石・橋維新のAチームの方を指している。

 このような安倍自民党、野田民主党、石・橋維新の会という3大政党が国会の3分の2議席を占めるとなると、日本はどうなるのか。日本のマスコミは、財界の意向に即して保守安定政権が実現すればそれでよく、それ以上のことはあまり論評していない。
 「強くてしたたかな日本」か「弱くてお人よしの日本」か、どっちがいいのか、などと短絡的に言われば「強くてしたたかな日本」の方がいいに決まっているとなるのだろうが、国際社会は「日本の右傾化」を心配し、それが「周辺諸国の不安要因」となる(日本人の多くはマスコミとそれに植え付けられたかつての冷戦思考にとらわれ、とかく対中関係が悪化しても日米同盟が盤石であるかぎり、孤立するのは中国の方だと思いがちだが、実は逆で、米中関係それに中韓・中台関係もは緊密で日本の方が孤立しかねず、それは財界にとっても心配の種)という指摘もある。
 
 さて、日本はどうなるのか
 沖縄をはじめ米軍基地・安保はいつまでそのままにして置くのか。マスコミは日米同盟(安保)は不変だとして、その枠内でしか論じない。
 そもそも国民(子ども・若者・高齢者も含めた庶民)の生活・生業はこの先いったいどうなるのか。マスコミは、財界の企業経営、政府の国家経営・財政運営の観点から論じる以外には、展望を示そうとはしない。

 「三大政党」(自民・民主・維新)はいずれも改憲志向であり、特に安倍自民党と石原維新の会は自主憲法制定に執念を燃やしている。日本国民自身にとっては、戦後の憲法体制が変えられてしまうかもしれない、というかつてない重大な局面に立たされることになる、と思われるのだが、マスコミはそれに言及することは少ない。
 消費税増税・原発・TPP・基地問題もさることながら、この改憲問題こそ最大の争点なのに。


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