米沢 長南の声なき声


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TPP問題―容認論・反対論
2011年11月02日

[日本の産業・貿易の現状]
 日本の貿易依存度(GDPに対する輸出額・輸入額の割合)は意外に低い。そのかわり企業の海外移転が進んでいる。
  (08年)輸出依存度は16.1%、 輸入依存度15.6%
       それぞれ韓国 45.4、 46.8
           ドイツ39.9、 32.7
          フランス21.1、 24.6
             中国33.0、 20.2
           アメリカ9.1、 15.2
対中国貿易のほうが、対アメリカ貿易よりも貿易額が多い。
 対中国輸出は(09年)日本の輸出全体の18.9%だが、対アメリカ輸出は16.1%、
 シンガポール・ブルネイ・ベトナム・マレーシアなどとは、6ヵ国あわせても6.6%にすぎず。

世界の国々は輸入品に関税をかけることで国内産業を保護している。一方、2国間あるいは多国間で関税や非関税障壁を取り払い、国内産業保護の垣根を取り払う「貿易自由化」・経済連携もおこなっている。
 世界貿易機関(WTO)―150ヵ国加盟―自由貿易を推進する立場で、各国が自由にモノ・サービスなどの貿易ができるようにルール(各種の協定)を決めて関税を引き下げたり、非関税障壁を取り除いたりすることを協議し、貿易に関する国際紛争の処理をおこなう機関―多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)は先進国と新興国の対立で行き詰っている(中断・決裂が続いている)。
 2国間or複数国間でFTA(自由貿易協定―関税の撤廃・削減)・EPA(経済連携協定―関税のほか投資の自由化、経済協力など包括的な経済連携)。 
 アジア太平洋地域では①ASEAN(東南アジア10ヵ国)+3(日中韓)or6(日・中・韓・印・オーストラリア・ニュージーランド)・・・・「東アジア共同体」構想
  ②TPP(環太平洋パートナーシップ協定)―シンガポール・ブルネイ・チリ・ニュージーランド4ヵ国が原加盟国、これにアメリカ・オーストラリア・ペルー・ベトナム・マレーシアが加盟交渉参加。
FTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)構想―APEC(アジア太平洋経済協力会議―ロシア・カナダ・メキシコなども加わる21ヵ国)が2020年までに域内の貿易や投資の自由化めざす。

<農業>
食糧自給率39%(カロリーベースで)
農業者―高齢化(平均年齢66歳)
    兼業農家が7割―多くは農業収入よりも兼業する製造業からの収入が多い。
耕地面積―1戸当たり2.2ha―アメリカの100 分の1、オーストラリアの1500分の1、 EU の2割弱
     オーストラリア3,000ha
        アメリカ200ha(稲作は136ha、大型機械・飛行機で)
        北海道20ha
         日本2.2ha その4割は中山間地(大規模化が困難)
    但し、日本では多くは水田だが、アメリカ・オーストラリアはそうではない。
コメの生産費は60k当り1万6,594円(規模別では1~2ha層が1万7,580円、2~3ha層が1万4,579円、10ha以上の層が1万2,496円、15ha以上の層が1万1,531円)、それに対して外国産輸入価格は3,000~4,000円
農業所得―20年前から半減
減反政策(米価維持・コメ余りに合わせて)―耕作放棄地(39万ha―埼玉県の面積に匹敵)が問題
戸別所得補償制度―「バラマキ」、「農地の集約を阻害し細切れ化うながす」などの批判あり。
各国の農産物の平均関税率―インド124.3%
             韓国62.2
             メキシコ42.9
              EU19.5
              日本11.7
             アメリカ5.5
日本への農産物の輸入関税―全品目の4分の1は既に無関税、3分の1は10%以下の低率、野菜などは3%
  コメは778%(輸入価格の7倍以上)、小麦は252%、バナナ50%、牛肉38.5%、緑茶20%、リンゴ20%
高関税で保護されているのは精米・牛乳・乳製品などに限られている。
「非関税障壁」―税関手続き・検査・商品の規格・安全基準・国家資格その他の規制。
       BSEなど病気感染予防(月齢20ヵ月以内の子牛は輸入禁止)
       有害な食品添加物、
       農薬の残留基準値(大豆のばあい、日本では312種類に基準値、ジカンバは0.05ppm以下、アメリカは114種類だけ、ジカンバは10ppm以下と多目)
       遺伝子組み換え表示(日本では表示義務があるが、アメリカは非表示)

[TPP]―関税・非関税障壁の撤廃、競争条件を同一にすることを原則に―関税は10年以内に全て撤廃することが前提
 シンガポール・ブルネイ・チリ・ニュージーランド4ヵ国が原加盟国、これにアメリカ・オーストラリア・ペルー・ベトナム・マレーシアが加盟交渉参加、合計9カ国
 農業・移民労働・医療・金融・保険・郵政・公共事業・法曹など24分野にわたって交渉。
 日本がTPPの加盟交渉に参加するには、これら9カ国の同意とりわけアメリカと事前協議して(その後、最低限90日間、米政府と議会の協議のうえ)米議会の承認が必要―米国の対日要求(60項目にのぼると言われる)を受け入れないと承認が得られないことになる)。
 日本がこれに加盟した場合、加盟各国のGDPの割合では日米だけで91%占める。
             アメリカ    67% 
             日本      24
             オーストラリア 4.5
             その他     4.5

<TPP参加容認論>(反)は反対論
●日本は貿易立国  ()韓国(輸出依存度45%以上)などと比べ貿易依存度はむしろ非常に低い(16%)。
●「第二の開国」・市場開放へ―「鎖国」的既得権益保護はやめ。()自動車は関税ゼロ(アメリカは2.5%)、電機もゼロ(アメリカは0.5%)、農産物も、コメなどは別として一般には既に関税率は低く、「鎖国」などというのは的外れ。
●TPPに入らなかったら、日本だけ浮いてしまう。
 グローバル時代、「守り」より「攻め」―競争力アップして世界に打って出、アジアの成長力を取り込む。
 ライバルの韓国に対してFTA戦略の出遅れを一気にとり戻す。
 「バスに乗り遅れるな」
)中国・韓国・インドネシア・タイなどはTPPには入っていないし、入っているアジア4ヵ国と日本はそれぞれFTA(自由貿易協定)かEPA(経済連携協定)を結んでいる。
  既存の枠組みとしてASEAN+3or6があるが、そこでは各国が互いに自主性を尊重し、やれるものから取り組み積んでいみ上げていく方式(ASEAN方式)をとっている。(中国はASEAN10ヵ国と既にFTAを結んでいる。)
 それに対してTPPは、事実上アメリカ主導(アメリカの基準・ルールが参加国に一律に適用、関税も規制もすべてアメリカ並みにされる)のブロックで、中国・韓国・インドなどは入っておらず、日本がこれに入ってアメリカとは一体化しても、アジアからはかえって浮いてしまう結果になる。アジアの成長力を取り込むどころか、アメリカのアジア戦略・輸出戦略に日本のほうが取り込まれるだけになる。
 日本に「バスに乗り遅れるな」と言って焦っているのは、それを運転するアメリカのほうで、(深刻な不況と金融危機を日本への輸出等の大幅アップで切り抜けようと図る)アメリカにとって日本は「TPPバス」の最上の「乗客」なのだ。
 「外交交渉では、利害を共有できる国々と組んでいくことが通常の外交戦略」「まずASEAN+3(いずれも日本と同様に1~2ha規模の水田中心で、小麦・とうもろこし等の穀物・畜産・砂糖などが競合していないので条件が似ている)とで結びつきを強め、環太平洋レベルでの自由貿易では、中国などが加わる段階で交渉に参加したほうが日本に有利」(金子勝・慶大教授)。TPP参加国はアメリカ以外は小さな資源輸出国ばかりで、日本と利害を共有する国はほとんどない。
 TPPは日本が加入すれば、実質的に日米FTAのようなもの。とはいっても、FTAはポジティブ・リスト方式(関税・規制を撤廃する方を例外としてリストアップして、それ以外はすべて関税・規制は維持)だが、TPPはネガティブ・リスト方式(関税・規制撤廃しない方を例外としてリストアップして、それ以外はすべて撤廃。例外品目の交渉余地が小さい)だから、両者は同じではない。
 TPPは、ネガティブ・リストに記載されていないものは自由化が基本なので、常にアメリカ側が正統性を持つ状況下で、永続的に米国政府および米国企業から要求が出され続けることになる。
 韓国はEUやアメリカなどとFTAは結んだが、TPPには加わろうとはしていない。
 
●関税・非関税障壁など現状のままでは、輸出競争に負け、工場は海外移転・産業空洞化に追い込まれる。()空洞化は、むしろ円高(4年前は1ドル120円台だったのが今は75円台になって、4割近く円高)のせい。
 むしろ日本企業がTPP参加の東南アジアや南米の国へ出てゆき、そこで安上がりの製品をつくり、アメリカや日本に輸出するようになってTPPが空洞化を促すことにも。
●関税撤廃で輸出が増える。()主な相手国アメリカの関税は既に低く(自動車は2.5%、電機は0.5%、電子製品は1.7%)、そのうえ円高で現地生産の方が多くなり(日本企業の6~8割の工場はアメリカにあり)、輸出がそんなに増えることはない。
 輸出依存よりも内需重視の経済運営への転換こそ求められる。
●関税撤廃で安い外国産の輸入が増え、国内産も安くなって沢山買えるようになる。()物価の下がれば、それにスライドして賃金や年金額の引き下げられ、(個人消費が縮小し、企業の設備投資も縮小して)デフレスパイラル(物価下落と景気後退の悪循環)がますます進む。
●「反対派が唱える『国民の生活を守る』という大義名分の陰には、関連業界の既得権益を守る狙いがないか」(10月16日朝日社説)。TPP参加反対は「農業をはじめもっぱら生産者・供給側の立場から」(12日朝日「声」投稿)。「高コストのものを狭い国土で生産する必要があるのか」(前に同じ)。消費者・生活者にとっては、負担が少なく、なにもかも安く買えるにこしたことはないのだ。
 「関税障壁で消費者が不当な負担を強いられているものはたくさんある。TPPはそのような理不尽な負担から消費者を守ることにつながる。」(前に同じ)
)消費者にとって、関税・障壁は生産者・供給側の利益や既得権益を守るためではなく、ほかならぬ消費者の生活を守るためにこそ必要な負担であり障壁なのだということ。
 消費者・生活者にとって是非とも必要で守らなければならないものは、世界の食糧危機と国際価格の急騰からの食糧の安定確保であり、安全性の確保、それに農林漁業による国土環境の保全である。
 関税も非関税障壁も、それらのために必要なコスト負担なのであり措置なのだということをよく認識したうえでTPPは判断すべきなのであって、消費者は、ただ単純に、負担が少なく安く買えさえすればいいというものではあるまい。
●経済効果
  経産省は、TPPに参加すればGDP8兆円増(参加しないと20年までに10.5兆円減になる)と試算。
  内閣府は2.4~3.2兆円増と。
  ()農水省は、参加すると逆に7.9兆円減、農業関連だけで4.1兆円減と(ただし、関税を全世界対象に全廃し、かつ何の手も講じない場合を前提)。
  政府統一見解(10月25日)―10年間の累積で2.7兆円増。()それは1年にすれば、わずか2,700億円。GDPの0.54%にすぎない
   森永卓郎(経済アナリスト)は農業は3分の1に激減する一方、製造業の付加価値(農業の13倍)のアップは数パーセント程度でたいしたことはないと。
<農業>
●GDPで1.5%の第一次産業を守るために98.5%の産業を犠牲にしてはならない。
  ()農業の役割は、食糧生産という基幹産業を担い、かつ国土環境保全など多面的役割をもっており、単にGDPだけで評価されるものではない。
  世界的な食糧危機(地球の気候変動による食糧生産の不安定化、途上国の経済成長と人口増、トウモロコシなどバイオ燃料の需要増、それにヘッジファンドなどの投機による穀物市場の高騰)の中での食糧・農産物の安定確保は今やますます重要。
  とりわけ被災地の東北各県は食糧県であり、農林漁業は主産業。
●農業―さくらんぼ―(1992年20%から8.5%に)関税を下げたら、販売量かえって増えた。
      みかん・りんご―輸出
      コメ粉(パスタ用)―輸出
      コメも―輸入米に門戸を開いても大丈夫。
      「世界一うまい」―高級ブランド― 中国などの富裕層向けに輸出 
      アンケートでは「高くても国産を買う」という人は6割、ただし、3割以上高くても買うという人は34%
 ()これらを日本から輸入して食するのは限られた国の人々、恵まれた層の人々に限られる。 
 日本でもコメ離れやデフレが進む中、海外から安いコメが入ればブランド米も値崩れするようになる。  現在、日本のコメは一俵1万4,000円(戸別所得補償の基準価格)、それに対してカリフォルニア米は3,000円。
 日本産は放射能汚染で敬遠され、むしろ、その対策のほうが先決。
●農業者―選抜・養成―意欲ある主業農家に。法人組織化、一般企業(株式会社)の農業参入。
●農地―分散した農地の集積、規模拡大(10倍化、20~30haに)
 コストダウン(㌔当たり200 円から150円に)、面積当たり収量は1.5倍に。
●「農業のニュービジネス化」
●「6次産業化」―生産者が加工・販売に従事 
●農業改革断行のチャンス―大規模化・合理化・効率化して日本の農業を「強い」農業に。食糧自給率は50%めざす。(政府は「食と農林漁業の再生にための基本方針・行動計画」を決定している) 
)農政の大転換・「農業再生」は必要だが、それは単なる「競争力強化」(中小農家の切捨て・大規模化)ではなく、農家が安心して農業に励める農政への転換。
 必要なのは(米価など市場任せにした結果の価格暴落に対して)農産物価格保障と所得補償で大規模農家も小規模・兼業農家も安心して農業を続けられる条件を整えること。 
 単なる農協任せの「減反」の押し付けはまずいが、需給・生産調整は必要。
 食料自給率のアップ(50%)はTPPとは両立せず、むしろ13%にも激減してしまう。コメ生産の9割が壊滅してしまい、小麦はたった1%に激減。
 そもそも農業は、単なる営利企業とは異なり、個々の農家の経営上の採算・収益など(儲かる、儲からない、外国との競争に勝てる、勝てない)の問題だけで云々されるものではなく、基幹産業で、(世界的な異常気象・食糧危機の中でも)国民の食糧確保、国家の食糧主権の確保(食糧安全保障)、それに国土環境保全にも関わるもの。零細・兼業農家などは、どうせ競争に勝てないし儲からないし採算が取れないのだから、といってやめてもらい、外国に太刀打ちできるだけの競争力のある農家・農業者だけでやってもらえばいい、というものではない。大規模経営・小規模家族経営・集落営農(農事組合法人)など多様な形態があってもいいし、どの農家・農業者もだいじな食糧生産の担い手なのだ、ということ(だから農産物価格保障・所得補償が必要なのだ。新規就農者支援制度も)。
 戸別所得補償は主要国ではどの国もやっている。03年、農業粗生産額に占める直接支払いの割合では、英仏独などは8割以上、アメリカは3割、日本はそれが1兆円規模になってようやくアメリカ並みの3割に達する。
 いくら大規模化(10~20haに)しても、面積当たりの収量を上げても、オーストラリアやアメリカの大規模経営には価格面で太刀打ちできない。
●農産物の輸入条件や安全基準の緩和 ()現在日本で禁止されているポストハーベスト農薬(収穫後使用農薬)の解禁されたり、残留農薬・BSE対策・食品添加物や遺伝子組み換え食品など日本の高い安全基準が、アメリカの農業者や企業の都合で緩められる。
 
<漁業>―農業より自由化が進んでいる。
 あじ・さば、海藻類など50品目は除外―10~20%ほどの関税で守られている。
<医療・保険>
●市場競争原理の導入効果が期待できると。
●医薬品・医療機器の関税を撤廃
●薬価基準がアメリカなどと同一に。血液製剤の輸入規制も緩和。
●外国の保険会社や製薬会社に市場開放―外国企業参入への規制緩和
●公的医療保険制度による薬代の払い戻し(手続き)を内外で公平にする。
●混合診療(保険診療と保険のきかない自由診療の組み合わせ)の解禁
 自由診療(医療ツーリズムなど)で高所得者には便利。
)安全性よりも利益が優先されるようになる。株式会社の医療参入で営利主義になる。
   保険のきかない自由診療―金持ちしか受けられない診療が増える。
   不採算部門の切捨てで地域医療機関の撤退が進み公立病院や身近な診療所は成り立たなくなる。
   公的医療保険制度・国民皆保険制度の崩壊につながる。
   そうなればアメリカ(盲腸手術に2百数十万円かかり、乳幼児死亡率は日本の2倍)のようになってしまいかねない。
(外務省)営利企業の参入や公的保険制度は議論の対象にはなっていないと。
)日本が参加していないTPP交渉で、それらが議論になっていないもは当たり前のこと。参加すれば議論になる。(外務省は混合診療など「議論の可能性はあり」としている)。米国業界団体はそれらを求めてくる。
<官公需>
●政府や自治体の公共事業や物品調達―公共事業の入札を外国企業に開放する、その基準額を下げる。公共工事は23億円以上が7億円に、公共サービスは23 億円から750万円に切り下げられ、630万円を超える物品調達は国際入札へ
)地元企業への優先発注できなくなり、地元・中小企業が外国企業に仕事が奪われる。
 自治体の住宅改修助成などにさいしても地元企業の優先できなくなる。
<「労働力の移動」の自由化>
●労働時間・残業手当・賃金水準の規制緩和
●海外から移民労働・低賃金労働者を受け入れ。看護師・介護士など。
)労働者保護のルール崩れる。
 国内労働者の雇用が減る。
 派遣労働とともに賃金水準が低下し労働条件が切り下げられる。
 不安定雇用が広がる。
<外国人専門家>
●医師・弁護士など、それらの資格を相互に認め合う。
●外国人投資家が投資先の国に対して訴訟が出来るようになる(ISD条項)。
 ()アメリカ(「訴訟社会」)の流儀で、安全・保護を理由に進出を規制された米企業が相手国(日本政府)を訴えて損害賠償を求めるようになるリスクが多くなる。
 野田首相はISD条項があることを知っていたか、と参院の集中審議で野党議員から訊かれ「知りませんでした」と。
<金融>
●新興国の外資規制の自由化で、日本の金融機関が進出しやすくなる。
 ()米国資本が参入しやすいように、日本郵政や共済を民間会社と同じ競争条件にと要求してくるようになる(郵貯や簡保資金の運用をアメリカの金融機関にも割り当てをよこせと。共済など協同組合には、アメリカの保険会社などが民間金融機関と同様のルールを適用せよと。)
<交渉>
●交渉には参加すべき―ルールづくりから関わったほうがいい。(後になってから入ろうとしても、ルールができあがってしまってからでは手遅れになる。)
 交渉しだいで例外商品を設けることが可能かも。
 交渉して、こちらの望んでいることがダメとなったら抜ければいい。
アメリカと一対一でやるのとは違って、他の参加国と一緒に9対1でかかれる。
)その保証はない。あくまで、関税をすべてゼロにもっていくことが前提だから。(カナダの例―酪農製品など例外にしようとしたが、認められず、参加を取りやめ。)交渉に新たに参加するためには、すべての交渉国の同意が必要で、例外なき関税撤廃の原則をのまなければ参加は認められない。
 既にアメリカは自国の産品の輸出や企業の参入を阻んでいる各国の非関税障壁を列挙し、その規制緩和を執拗に迫ってきている。
 コメなども例外扱いの保証はなく、コメ生産の9割が壊滅してしまいかねない。小麦はたった1%に激減。
秘密交渉(非公開)で、交渉内容や詳しい情報・データなど交渉に参加しないと解らない。
 不利益なら抜ければよいといっても、「不利益」を誰が判断するのか。一度交渉に参加してしまったら、抜けられなくなる。
 外務省などにはアメリカなどと渉り合う交渉能力はなく、アメリカ側の言いなりになってしまう。

<情勢>
各分野で何をどこまで交渉するのか。アメリカ側は何を要求しているのか、ほとんど明らかされていない―政府の説明・情報開示が全く不十分―国民はそれにどんなメリット・デメリットや問題点があるのか不明確で、訳けが分からない。
 製造業・輸出企業・農林漁業(その中でも専業者と兼業者)・一般消費者、その他の業界・個々人それぞれに自分の都合(利害・損得)があり、それだけで賛成・反対する向きがある。消費者にとっては外国産であれ、国産であれ、安く買えるにこしたことはなく、「生産者や業界がTPPに反対するのは既得権益を守りたいからだ」などと短絡的に考える向き。
 経済合理性(コスト削減・省力化・効率化など)の追求だけでなく、「食の安全」「環境保全」「食糧主権・経済主権」の観点が必要。
 「安全保障」対米依存とともに親米・反中イデオロギー(「アメリカには親近感、中国は嫌い」感覚)―「中国は脅威」「アメリカは頼れる国」「アメリカについていけば何とかなる」「アメリカにはノーと言えない」という(頭に刷り込まれた)既成観念・「冷戦思考」―への囚われ―「米中対立」「中国とアメリカのどっちについたほうがいいか」「日米同盟が基軸だ」といった発想で考える向き(森永卓郎・経済アナリストが指摘)。(経団連の米倉会長は10月28日の「国家戦略会議の第1回会合で、TPP参加は「通商政策の観点のみならず、外交・安全保障の基準である日米同盟の深化のため」と発言)
 寺島実郎氏(日本総研)は、「『米中対立』というが、米中貿易は日中貿易より2.5倍も多いし、米中戦略対話は『防衛』のことも含めて、日中関係より本気で意思疎通しており、シェールガスの共同開発でも協定を交わしていて、米中関係はメディアが対立構図を描いて見せているが、そんな単純な話しではない」としている(11月20日TVSサンデーモーニング)。 

 
 賛否・国論が分かれ、首相が政治判断して決着をつけるかのように言っているが、それは総選挙のうえ国民の判断で決着すべきもの―TPP参加各国との事前協議、米政府との協議、米議会の承認のうえで交渉参加が認められ(来春)、21分野で合意、国会(衆院で過半数の賛成)で批准は再来年(13年)以降になると見られるが、その間に総選挙。


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