米沢 長南の声なき声


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普天間問題と安保
2010年09月14日

(1)普天間基地―「世界一危険なところ」―代替地へ移設できないうちは現状のまま(固定化)なのか?
 日本政府は米軍・海兵隊その基地は「抑止力」だとして、その維持に執着。
アメリカは「それなら」と、代替地を日本政府に要求、その確保・移設ができないなら、それは日本政府のせいだと。
 基地に対する住民負担・危険性―政府は住民の「負担」(騒音・米兵犯罪などの迷惑、墜落事故などの危険に対する精神的負担)と称して、その「軽減」策を講ずるからと、受け入れ容認を求める。
 しかし、住民たちにとっては、そのような単なる「負担」だけでなく、敵の攻撃の
ターゲットになるという危険も―坂手洋二氏(劇作家)は(朝日新聞9月4日付けオピニオン欄に論劇「徳之島少年と旅人」で)次のように指摘。「アメリカは辺野古基地建設で、日本政府が「桟橋方式」を提案した時、『テロの攻撃を受けやすい』からといって、それに反対したが、それは基地が攻撃のターゲットになるということだ。徳之島が、太平洋戦争中、空襲にあったのは、そこに日本の特攻基地があったからだ」と。
 基地住民は、それを県内であれ県外・国外であれ、その「負担」・ターゲットになる危険はまっぴら御免だが、かといって他に押し付けたくはない。だから日本政府に対して代替地に「移設」してほしい(そこに新基地が完成しないうちは米軍は普天間基地に居座り続ける)というのではなく、アメリカに対して、普天間基地を「とにかく(無条件で)撤去」してほしいと言っているわけである。

(2)元沖縄知事の太田氏によれば(『世界』8月号の誌上対談「太田昌秀×佐藤優」で)、アメリカの有名なシンクタンクのケイトー研究所は議会に勧告書を提出して、米政府は5年以内に在日米軍を全部撤退させ、その2年後に現行の日米安保条約を廃棄して日米平和友好条約を締結する旨、日本政府に通告すべき、と提言している。また在沖米軍を最優先にして撤退させ、グアムや太平洋中部の米国領土にもっと小規模の軍隊を駐留させるべきだ、とも主張しているという。つまり、米軍がグアムにいようが沖縄にいようが、抑止能力からいえばべつに関係ないというわけ。アメリカには、似たような主張をする言論人は少なからずいるとのこと。

(3)辺野古沿岸で(橋本内閣当時・普天間返還を日米合意して以来)14年もの間、自民党など与党が、国会は衆参とも、沖縄では知事も県議会も名護市長をも握っていながら、新基地を着工できなかった、それを国民新党の下地氏は(「朝まで生テレビ」で)「政府が、機動隊を入れてまでやるという決断ができなかったからだ」と言っていたが、それに関して元防衛事務次官の守屋氏は回想録に次のように書いている(『世界』9月号誌上の「太田昌秀×佐藤優」の対談で佐藤氏が紹介)。04年、那覇防衛施設局が建設予定水域の環境影響評価(アセスメント)のため行おうとしたボーリング調査が反対派の妨害行動(小船で押し寄せ岩石を海面に投げつける)で阻止された。その時、守屋氏は海上保安庁に強制排除を要請。それに対して海上保安庁は「強制排除に出れば、海上なので水中に落ちたりした場合は人命を損なう危険がある。それにどうしてそこまでして、県民に恨まれるようなことをしなくちゃならないんだ」とのことだったという。

(4)安全保障というと、政治家・マスコミ・評論家・それらに影響される庶民が考えることは、とかく軍事対応。尖閣諸島沖で中国漁船と海上保安庁の巡視船がぶつかったといえば直ぐに軍事対決を考える。
 そして、中国や北朝鮮の軍事力の増強・核開発に対抗して自らの軍事力を(日米同盟・沖縄基地・「核の傘」も)「抑止力」と称して維持・強化しようとする。
 しかし、中国・北朝鮮のそれを招いてきたのは、日米自らが他に先行して、これまでかくも軍事力(中国・北朝鮮などにとっては、それらは脅威)を増強してきたからにほかならない。
 相手に軍事力増強・核開発をやめさせるには、彼らをはるかに上回る自らの軍事力を縮減し、核は廃絶しなければならず、それなくして一方的に相手にのみそれを求めても応じないのは当たり前。
 戦争や武力の行使・威嚇(脅し)では相手国(その政権を倒すことはできても国民)を従わせることはできないし、問題が解決しないことは、今や(イラク・アフガニスタンなどを見れば)明らか。
 軍備はそれほど役には立たず、巨額のムダ遣いとなることが多く、それこそ事業仕分けの対象。軍事で儲かる軍需産業・バイヤー(「死の商人」)・それらと癒着する防衛官僚(「安保マフィア」)に税金が食い物にされてはならないし、日米両国にいる「安保で飯を食べている人たち」の思惑に支配されるようなことがあってはならないのである。
 21世紀いまや、どの国も安全保障は、軍事には頼ることなく、経済・文化の交流・協力と外交、それらの枠組み結成によって確保される(ASEAN諸国がめざしているような不戦共同体を北東アジアにもつくって東アジア共同体をめざす)時代なのである。それらこそが戦争抑止力となるのである。(東南アジアにはかつてアメリカを中心とした軍事同盟SEATOがあったが、ベトナム戦争後に解消され、米軍基地はフィリピンを最後にこの地域からすべて撤去された。このような軍事同盟に代わって非軍事的な安全保障の枠組みとしてASAEAN「東南アジア諸国連合」が結成、TAC「東南アジア友好協力条約」を締結して武力行使・威嚇の放棄、紛争の平和的手段による解決を原則とした。これには日本・中国・韓国・ロシアそれにEU、最近になってはアメリカまでも加盟するに至っている。)
(5)1月の名護市長選挙は辺野古移設受け入れ反対の市長が当選、今月は同市議会議員選挙が行われて、移設受け入れ反対派が圧勝した。沖縄では、これから11月知事選挙があって、沖縄県全体の民意が示されることになっているが、辺野古移設容認へ逆転ということにはならないだろう。菅政権は「受け入れを説得する」という方針に変わりないとしているが、説得は不可能だろう。
 宜野湾市民は普天間基地の即時撤去・返還を求め、名護市民は移設受け入れ反対、沖縄県民も辺野古への移設・新基地建設の日米合意撤回を求めてアメリカと交渉をすることを政府に求め続けるだろう。本土の我々はそれを精一杯応援しなければなるまい。


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