米沢 長南の声なき声


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今こそ「安保」見直しの時(その1)
2010年04月26日

 日米安保50周年―1960年、日米安保条約の是非をめぐって国中が大騒ぎした(「アンポ・ハンターイ」の声が全国を覆い、大デモ、ストライキ、国会包囲など激しくくり広げられた)中で、自民党政府は条約改定を強行したうえで岸内閣は退陣した。あれから半世紀経って「冷戦終結」など国際情勢はがらりと変わったにもかかわらず、安保(日米同盟)体制は今もって続いており、沖縄はじめ各地に米軍基地が維持されている。
(1)普天間問題
 鳩山政権は、そのうちの普天間基地というただ一つの基地(国外か最低でも沖縄県外へ移設と公約してきたが、それをどこに移設したらいいものか)をめぐって「迷走」している。野党各党・各メディアとも「迷走」を批判し、「さあ、移設先をいったいどこにするのか!移設先の住民もアメリカも納得するように、首相が自ら約束したとおり5月まで決着できなければ、退陣するしかない」とせっついている。
 しかし、われわれ国民は、鳩山内閣を退陣させさえすればよいというわけでは勿論ないし、日本のどこかに移設先が決まりさえすればそれでよいというわけでもない。
 そもそも普天間基地は、その周辺間近かで暮らしていて毎日危険にさらされ様々被害をこうむってきた住民にとっては、要求は基地の閉鎖・撤去、この一点に尽きる。
 ところが我が国政府は、米国政府に対して毅然として「とにかく立ち退かせていただきたい!」、「引き取っていただきたい!」とは言えず、代替地・移設先を探してやり、移転経費の負担も引き受けるから、というふうにして移転に応じてもらおうとしているのである。「日本は米軍から守ってもらっており、その基地は外敵に対する抑止力になっているのだから、移設先探しと経費負担を引き受けないわけにはいかないのだ」というわけである。
 しかし、普天間基地は米軍が沖縄占領時、戦時国際法に違反して土地を強奪して作り上げた基地であり、住民にとっては無条件返還・基地撤去が当然。
 日本政府に条約上基地提供義務があり、沖縄県内であれ県外であれ、アメリカ軍にとって戦略上の好適地ではあっても、地元住民がOKしない限り、そこに基地を置くことは出来ず、そこは避けなければならない。アメリカもそれは解っているはず。(米国外交問題評議会のスミス上級研究員は「米軍は受け入れ国とその国民の求めに応じて奉仕しているのであって、もし海兵隊の撤去を求められれば、海兵隊は出ていく必要がある」と指摘しているとのこと。)
 米軍の日本防衛協力にともなう基地提供義務があるといっても、そもそも「海兵隊」というものは(イラクやアフガンなどへの)海外出撃や海外在留邦人などの救出を任務にしており、「日本を守る」ことなど役目にはしていないのであって、それへの基地提供は、「思いやり予算」などと同様、義務外のことなのである。(日本の防衛以外の戦闘作戦行動のための基地使用には条約上は「事前協議」が必要なのに、「密約」によって、アメリカ軍は勝手にやれている。)
 普天間基地返還について前政権と米国側との間で「代替基地が出来たら移転」との移設合意があるとしても、(普天間基地の閉鎖・返還は14年前の4月に日米の間で合意していたものを、反野古など移設先が決まらないために先延ばしされてきたが)移設先・代替基地ができないからといって、もうこれ以上、そのまま普天間に海兵隊が居座り続けるなどということは許されない。普天間では住民が65年もの間危険と隣り合わせに、日々深刻な迷惑・被害をこうむり、今日・明日にも惨事が起きるかもしれない不安にさいなまれながら暮らしており、とにかく一時も早く閉鎖・撤去してもらうことを切望しているのだ。今々、(イラク・アフガン戦争などは論外として)周辺「有事」で、そこから部隊がいつでも出動できるようにしておかなければならない事態が差し迫っている状況でもあるまいし、移設先など後回ししてもいいのである。
 「とにかく、先ず以て普天間の基地を一日も早く閉鎖・撤去させていただきたい!」と首相はアメリカ側に対して迫るべきなのであり、我々国民も、それを後押ししなければならないのだ。
 普天間基地の移設先探しなどは、そもそも、それを必要とし利用するアメリカ側が考えるべきことなのであって、グアムであれテニアンであれ、或は韓国であれ、日本のどこかであれ、はたしてどこにすればよいか、一番悩まなければいけないのはオバマ大統領やゲーツ国防長官たちのほうで、日本の首相が一人で悩み、すべてをかぶって退陣を余儀なくされるような問題ではないのである。
 政府は「移設先政府案」など、拙速に作って出す必要なんかないのだ。
 日本の首相は、アメリカに対して「普天間基地は、とにかく、早く引き取って、そこから部隊は立ち退かせていただきたい」と要求し、「移設先などは、グアムなりテニアン島なりアメリカ側で引き取ってくれるのが一番いいが、両国政府でもっと時間をかけてじっくり検討することにいたしましょう」と言っておけばいい話しなのだ。
 メディアも、自国政府のほうにばかり、「移設先をどこにするか早く決めろ」とせっつき、(朝日新聞など)日本が「基地負担」を「国民全体で分かち合って」引き受けるしかないかのように書き立てている向きがあるが、そのほうがおかしいのである。
(2)今こそ安保見直しの時
 政党では、共産党などが日米安保解消を主張している以外には、自民・民主・公明、それに、このところにわかに増えた「新党」など、各党とも日米安保体制・日米同盟路線は堅持、それに主要メディアも日米同盟は不動の既定路線であり、議論の余地など全くないかのように済ませ、鳩山首相「退陣」か、参院選はどうなるかなど政局だけを話題にしている。
 今われわれが問題にしなければならないのは、単に、普天間という一基地の移設先をどこにするかとか、沖縄県民の「基地負担」軽減だけの問題ではなく、安保(日米同盟)そのものをどうすべきかということなのである。
 この国はアメリカに対して、いつまでも基地を提供し続け、「思いやり予算」など経費負担を引き受け、住民に深刻な危険・迷惑を押し付け続けるなど、そこまでして米軍から守ってもらわなければ立ち行かない国なのであろうか。
 実際問題として、米軍は日本を守ってくれているのだろうか。その検証が必要なのだ。
 そもそも我が国にとって、今後にわたって日米同盟・米軍基地など、どうしても必要なのか、日米安保そのものを見直すべき時なのであり、その国民的議論が迫られている時なのだ。


 


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