先の総選挙の結果、戦後の60余年もの間(一時を除いて)政権をほしいままにしてきた自民党が退けられ、野党の手に政権がわたった。歴史上、画期的な政権交代である。(「ミニ革命」「静かなる革命」などと評する向きもある。)
政権を握った民主党のマニフェスト(政権公約)、その中には比例区議員定数削減など難点もあるが、次のような諸点については大いに期待される。
・財政支出構造の抜本的見直し―事業仕分け・予算の組直し
企業・業界団体を通じての支援から各人への直接支援方式へ。
「コンクリートから人へ」(大型公共事業・ハコモノ建設から生活密着型へ)
・「外需頼み」(輸出依存型成長政策)から内需主導への転換
(産業構造を環境・教育・福祉・医療・介護・地域ベンチャーなど国民生活のニー ズと時代の要請に応じたものに)
・雇用の安定化と働き方の正常化
労働者派遣法の抜本改正(派遣労働を臨時的・一時的業務に限定、製造業への派遣 は禁止)、均等待遇、
月10万円手当て付き職業訓練制度
最低賃金を1,000円に引き上げ(さしあたり800円)
・少子化ストップ、安心して子を産み育てられる社会へ―子育て、仕事と家庭の両立支 援、保育サービスの充実
(子どもは「社会の宝」―子育ては親の責任だけではなく社会の責任だという考え 方)
(公的支出に占める子育て支援の割合はOECD加盟国平均2.2~2.3%、先進国に限れば 3.5%であるのに対して日本は1.2%、民主党案では2万6千円満額出てもまだ2.1%。また公的支出に占める義務教育費の割合はOECD加盟国平均5%台であるのに対して日本は3.5%。いずれも少ない。)
・高校教育の無償化、給付制奨学金制度の創設
・前政権による社会保障費抑制路線の転換―年金・医療・介護など社会保障の充実へ
後期高齢者医療制度の廃止(選挙前に参院では廃止法案を可決したものの、衆院解散 で廃案になってしまっている)
・農家への戸別所得補償制度
・ダム・高速道・空港建設など大型公共事業の中止など抜本的見直し
・郵政事業の抜本的見直し
・対米従属外交から自立外交への転換
核廃絶へのイニシャチブ 、自衛艦のインド洋派遣・給油は止める。
・脱官僚依存、天下りの根絶
・温暖化対策―CO2排出量を(1990年比で2020年までに)25%削減。
「温暖化対策税」の導入
これらは、マニフェストの中でも最優先(他はカットするか後回しして財源を確保)すべきなのだ。財源については、一般会計・特別会計あわせて207兆円のうち、年金の支払いや国債の償還など140兆円を差し引いた残り70兆円から9兆円は捻出できるということだが、とにかくやってもらいたい。
これらのことは旧政権党の自民党などには到底できない、彼らには思いもよらないもの。
これらについては抵抗勢力(財界、その意を受けた自民党など)に屈っすることなく、頑張ってやり遂げてもらいたいものだ。
政権は未だスタートしたばかりだが、鳩山首相をはじめ各閣僚とも意欲的に取り組もうとしている。
我々は、それにたいして、他人事のように傍観者的に「お手並み拝見」などと高をくくることなく、積極的に応援し、むしろ後押ししなければなるまい。
警戒しなければならないのは、経団連・経済同友会などの財界と自民党がけしかける9条改憲、消費税増税、比例区議員定数削減などに対して同調してしまうことである。そういうことにはならずに、庶民(勤労者・生活者)の目線を保って上記のような政策をやり遂げてもらうように、時には「激励の喝」を入れなければならないだろう。
財政の無駄を無くすにも、米軍への「思いやり予算」や給油・装備費など軍事費にも切り込み、増税をするにも、庶民に対して消費税を増税するではなく、大企業に対して法人税減税その他の課税軽減特別措置をストップし、資産家・高額所得者に対して所得税を増税(累進税率アップ)、株式配当・譲渡に対する課税軽減措置(証券優遇税制)をストップするなど、そっちの方を断行すべきなのだ。とにかく、孫たちの行く末や身近な人々のことを思うと、気が気でならないのだ。