米沢 長南の声なき声


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どうやって国民の安全を守るのかー対北朝鮮(加筆・修正版)
2009年04月14日

―軍事・外交のどちらでいくのが賢明か

(1)北朝鮮の核ミサイルに対する軍事対応
 今回の北朝鮮ロケット打ち上げに対する我が国の対応で目立ったのは「ミサイル防衛」システムの発動である。
 それから、これは一部にとどまるが、北朝鮮が何かをする度に言い立てられる敵基地攻撃論や核武装論が、またしても浮上していることである。(自民党の山本一太議員は「北朝鮮に対する抑止力強化を検討する会」の初会合で、「日本独自で北朝鮮の基地を攻撃できる能力について議論したい」と。また坂本剛二同党組織本部長は党役員連絡会で「日本も核を持つという脅しくらいかけないといけない」という趣旨の発言をしている。)
 これらの軍事的対応には、はたしてどれだけの合理性があるのか。
①ミサイル防衛システム(迎撃ミサイル・イージス艦・早期警戒衛星・軍事情報衛星・レーダー網など)の限界性(それでは防ぎ切れない)
 北朝鮮は中距離ミサイル「ノドン」(日本全域が射程内に)を既に100~200基 実戦配備。核弾頭も何発か(核爆弾6個分のプルトニウムを保有。小型化―といっても東京都心に一発着弾すれば百数十万人が被爆死する威力もつ―に成功?同時多発射が可能)。これを百発百中すべて撃ち落すことは不可能。
 それに、迎撃ミサイル等の配備・展開に時間がかかったり、防御範囲が狭かったりという限界も今回露呈している。
 ところが、今回これでだめ(まだまだ不備)だったなら、もっと良いものをもっと沢山と、さらなる改良・工夫を加え、増強をはかろうとする。
 こちら側も相手側も互いに絶えざる能力(性能)向上・改善を追求―軍拡競争―脅威は増し軍事予算が膨らむばかりで切りがなくなるわけである。
 「北朝鮮は国民を飢えさせて核・ミサイルに金を使っている」というが、日本は豊かだからロケットや人工衛星打ち上げに幾ら金を使ってもかまわないというのだろうか(「ミサイル防衛」にこれまで1兆円、情報収集衛星に6,000億円を注ぎ込んでいる。)
②敵基地攻撃論―北朝鮮のミサイル基地を空爆もしくは巡航ミサイルを撃ち込む(ミサイル防衛システム整備より、基地をたたく方が、はるかにコストが安いから)、といってもノドンやスカッド・ミサイルの基地はどこにあるのか判らない(今回のロケット打ち上げのように地上の発射台に突っ立て発射準備が衛星から丸見えの状態になっているわけではなく、地下や洞窟などに隠しておいてトレーラーに搭載して移動)。
③日本核武装論―北朝鮮あるいは中国などの核に対抗して、こっちも核反撃力を持つことによって相手の核攻撃を抑止する(下手に攻撃を仕掛けるとやり返されて自分の方もやられることになるから、相手は攻撃を控えるだろう)という主張(核抑止論)―互いに理性が効いているうちはまだよいが(それだって、かつての米ソ間のキューバ危機のような一触即発の危険も)、狂信的なテロ国家や追い詰められると破れかぶれ(自暴自棄)になって暴発しかねない相手には、それは通用すまい。

 日本のは(ミサイルも爆撃機も核も)防御用で「抑止力」だといっても、相手側もそう(「抑止力」のためだと)言ってやっているわけである。これらの対応は、「やられたらやり返す」という「力」の対決であり、軍拡と緊張の悪循環となり、エスカレートして「防衛」費は益々莫大なものとなる。懸案解決は遠のくばかりで、費用対効果の乏しさは甚だしく、壮大な無駄になる。
 これらのことを考え合わせれば、ミサイル防衛や敵基地攻撃能力や核抑止力をどんなに整えても、それでもう安心だというわけには絶対いかず、日米同盟と合わせて「防衛力」・「抑止力」にすがるやり方はけっして賢明ではない、ということになる。(尚、日本の核武装についてはアメリカがそれを絶対許さないということだ。アメリカが最も恐れているのは実は北朝鮮よりは、ほかならぬ日本の核武装なのだ。)

(2)北朝鮮の核・ミサイルの開発・保有の目的
 そもそも北朝鮮は、どうしてそんなに核・ミサイルの開発・保有にばかりこだわるのか。その意図・目的は何なのか。侵略が目的か、それともかつての恨みをはらす復讐が目的なのか、好戦的で戦争をしたいからなのか。
 他国を侵略しようと思っても、日本・韓国・中国・ロシア・アメリカなどどの国に対しても、そんなことは実現不可能であり、なんのメリットもないということは自分でも解りきっていること。
 かつて受けた仕打ち(日本による植民地支配、アメリカ・韓国による朝鮮戦争)に対する恨みをはらすには、その相手国に対して単に核ミサイル攻撃を加えて大量殺戮・破壊をくらわせたところで、空しさしか残らないわけであり、謝罪と償い(賠償・補償その他何らかの埋め合わせ)が得られてこそ、それが果たされるというものだろう。それをただ「火の海」にして(とは、よく脅しで言う言葉なのだが、それを本当に実行して)焼き尽くし殺し尽くしてしまったのでは何もならないわけである。
 好戦的だといっても、世界のあちこちに攻め寄せて戦争をしているアメリカ、或はかつて大和朝廷時代および豊臣秀吉時代には朝鮮半島へ、明治以後は朝鮮半島・中国をはじめアジア・太平洋のいたるところに攻め寄せて戦争をした我が国に比べて北朝鮮が好戦的だとは必ずしも言えないだろう。
 それでは何が目的なのか。それは(太平洋戦争で日本がアメリカからやられて国土を焼け野原にされたように)朝鮮戦争で散ざんにやられたアメリカに対して、(休戦協定は結んだが、平和協定は結んでおらず未だに戦争状態にあるアメリカが)再び攻撃を仕掛けてくることのないように保証を取り付けるために、(北朝鮮には他にこれといった国際的な競争力のある取引材料がないばかりに)敢えて核とミサイルを交渉・取引のカードにするという「瀬戸際外交」が目的にほかなるまい、ということである。
 
 ところで、政策研究大学院大学の安全保障・国際問題を専門とする道下徳成助教授によれば、そもそも弾道ミサイルは(弾頭を大きなロケット―テポドンなら電車2両分―に付けて飛ばして攻撃するのは航空機爆撃に比べて非効率であり、制空権を握って敵国領空に侵入して空爆をかけることができる優勢な空軍力を持たない)「弱者の兵器」であって、北朝鮮は弱者としてそれにすがっているに過ぎないということである。
 
(3)北朝鮮には圧力か対話か
 このような北朝鮮に対しては、強硬・圧力路線と穏健・対話路線とがある。
 前者では、一般に、北朝鮮側の立場(日本による植民地支配でこうむった苦難と被害は未だに清算されておらず、アメリカとの朝鮮戦争も、休戦はしているものの未だに講和・終結はしておらず、日本に対してもアメリカに対しても敵対関係が継続しているという、その立場)はあまり顧みられず、拉致問題・核ミサイルの脅威―日本側の被害・危難―のほうが強調される。
 それは、「拉致問題の解決および核・ミサイル問題の解決なくして、国交正常化なし」というものであり、「過去の清算」や国交正常化は二の次ぎで(そのほうはあまり頭になく)、まずは拉致被害者を全員解放させ、核・ミサイルを完全放棄させることを先決にして、それまでは制裁・圧力をかけ続けるというもの。
 しかし、制裁圧力を加え続ければ政権は崩壊するかといえば、それは疑問。経済が貧窮し民衆の中には内心不満や嫌気・絶望が広がり、脱北(難民)は益々増えるとしても、現政権に対する反対勢力は生まれず反政府運動や反乱は起こり得ない。それどころか外部からの圧力が強まり緊張が強まるほど(経済制裁は兵糧攻めで戦争を仕掛けているとも見なされ、敵対感情・抗戦意識を強め)内部の団結力(引き締め)が強まるという逆の結果になる。この国では、90年ソ連や東欧の「社会主義」政権が崩壊し、94年金日成(キム・イルソン)亡き後10年以上たっても、崩壊していないのである。(かつての日本も「ABCD包囲陣」による経済封鎖にあったが、国民は「欲しがりません、勝つまでは」といって欠乏に耐え、「一億火の玉」となって抗戦した、その抗戦意識を天皇でさえも抑えきれなかったような全体主義国家体制。それは単に制裁圧力だけで自壊することはなかった。戦争・敗戦によってはじめて崩壊したのだ。しかし、戦争によるその体制崩壊には自国民310万人、他国民2,000万人もの命の犠牲がともなったわけである。)

 むしろ逆に圧力を緩め、緊張を緩和したほうが、体制は変質・内部崩壊しやすくなるのかもしれない。締め付けが緩められれば、改革・開放が促され、経済社会がより豊かになり、政治の許容範囲が広がっていくだろうからである。

 そもそも核ミサイル問題も拉致問題もどうして起きたのか。それには背景があるということだ。
 北朝鮮は朝鮮戦争以来、休戦はしていても未だ講和・終結しておらず、法的には戦争状態は継続している。
 日本は米ソ連合軍と金日成らの抗日ゲリラから半島を追われて植民地支配はやめはしたものの、その清算は韓国に対してだけ行なって北朝鮮に対しては何もしないままに、朝鮮戦争以来アメリカに同盟国として基地を提供し加担してきた。そいう中で、北朝鮮はテロ・工作活動(そのための拉致)、そして核・ミサイルの開発を行なってきたのである。
 それらのことを考えれば、まずもって講和・国交正常化をして、このような戦争状態(敵対関係)を終わらせることであり、そうして不信感を払拭してこそ、核・ミサイル問題も拉致問題も理性的に話し合うことができ、誠意ある取り組みが可能となって解決が早まることになる、というものだろう。
 それを逆に、「拉致問題の解決なくして国交正常化なし」とばかりに、制裁圧力をかけ続け、対話・交渉など急がずに放っておけばよいと言って、たかをくくる向きがあるが、それでは拉致問題の解決は遠のき放置される結果になってしまうだろう。

 それでは、穏健・対話路線のほうはどうか。そちらは国交正常化を重視し、「敵対から友好へ」の転換をベターとする考え方で、「過去の清算」・国交正常化は二の次とはせずに、拉致問題・核ミサイル問題と同時並行的・包括的に協議・交渉を進め、信頼感を醸成しつつ話し合い解決にもっていく、という路線。
 感情的に「嫌いな国」で「仲良くしたくない国」ではあっても、(それはお互いさまであって、相手もそう思っているのだろうが)安全保障のために敢えて友好関係を結んで付き合い、その国を脅威でなくする、それが外交努力というものであろう。

 両路線のどちらが得策なのかといえば、それは後者のほうなのでは。
 ひたすら外交努力にまい進し、対話・協議・交渉(ギブ・アンド・テイクの外交取引)の場を確保して、外交的働きかけに努めること。とりあえずは「六カ国協議」(現在、中断)の再開とともに、アメリカは米朝協議、日本は日朝協議の再開を目指すことであり、その障害(相手が協議再開を拒み、門戸を閉ざすような原因や口実)となるような敵対行為(とみなされる「制裁」圧力)は避けるのが賢明なのでは。
 要は北朝鮮に核軍拡にはしることのないようにし、軍事的暴走・暴発に向かわせ核ミサイルを本当に使ってしまうことのないようにすることであり、相互非核(朝鮮半島を非核化し、東北アジアを非核地帯にする等のことを)をひたすら目指すことである。(中南米・カリブ海、南太平洋・オーストラリア、東南アジアの各地域は、既にそれぞれの域内の諸国が核兵器の開発・生産・配備・使用を禁止する条約を結び、核保有国に対しては域内諸国に対する核兵器の使用・威嚇を行なわないことを認める付属議定書に調印するよう求めるということで、非核地帯となっており、最近では中央アジア諸国の非核地帯条約も発効し、アフリカ諸国も未だ発効はしていないが非核地帯条約を結んでいる。)
 そして東アジアひいては全世界に軍縮・非核化の枠組みが形成されて安定的平和が構築されれば、もはやどこにも軍事的脅威が無くなり、「防衛力」・「抑止力」―軍備・軍事同盟―などにいつまでもすがりついていなくてもよくなるわけである。
(4)マスコミの対応
 日本のメディアのほとんどは、北朝鮮ロケット打ち上げを、北朝鮮が称している人工衛星(「通信試験衛星」)用ではなく「弾道ミサイル」だと表現し、発射から10分で日本に「着弾」するなどと、あたかも弾頭を搭載しているかのように表現し、「秋田県から岩手県上空を通過」などと、あたかも領空侵犯であるかのように表現。
 実際は、東に向けて発射するのは地球の東回り自転に合わせ加速をつけるためで、日本も種子島から東へ、アメリカもフロリダ半島から東へ打ち上げることが多い。
 イスラエルが西側の地中海に向けて打ち上げ、東を避けているのは、そこにはアラブやイランなどイスラム諸国がひしめき合っていて、広い公海が開けていないからにほかならない。
 ロケット・ブースターが落下するのは、1段目は日本海の、2段目は太平洋の、ともに公海上であり、日本上空通過といってもそこは大気圏外であり、どの国にも属しない宇宙なのであって領空ではないのである。北朝鮮は事前に打ち上げを国際関係機関(国際海自機関と国際民間航空機関)に通告しており、一応国際手続きを踏んでいるのである。
 勿論、弾頭は付けていない(たとえそれがミサイルだとしても実験に際してはテレメーター―飛行状況を伝える送信機―を付けはしても、弾頭を付けることはあり得ない)。
 これまで諸国が打ち上げた人工衛星は約6,000個で、落下(そっくりそのままではなく、大気圏内突入の際に空中分解し燃え残った残がい・破片が落ちてきた)事例は60何回かあるが、それが人に当たったという事例は1回あるのみ(1997年アメリカのオクラホマで、焼け残った金網のようなものが女性の肩に当たったが、怪我なし)であり、その確率は1兆分の1ということで(落雷の確率140万分の1よりもはるかに少なく)ほとんど無に等しい。
 迎撃ミサイルは一定の方向へ一定の軌跡をもって飛ぶ弾道ミサイルに対してはコンプユーターによる弾道計算が瞬時に可能で迎撃可能だが、ふらふら或はきりもみ状態で落ちてくる残骸に命中するのは至難。仮に大きな残骸が落下してきて、それにPAC3を発射して(射程高度1万メートル以下で)命中したとしても、一塊が幾つかに分かれ、こちらの迎撃ミサイルの分まで破片が飛び散って落ちてくるだけのことで、かえって被害が広がりはしても無くなることはない。(これらのことはCS放送「朝日ニュースター」の番組「パックイン・ジャーナル」におけるコメンテータで軍事ジャーナリストの田岡氏の話。氏が、そんな迎撃ミサイルをくりだしても意味がないのではと自衛隊のその関係者に電話して訊いてみると、「おっしゃるとおり」とのこと。「だったら何故そんなことをするのか」と訊くと、「東北の方で心配しているので何かしないとまずいからだ」とのこと。「要するに気休めということか」と訊くと、「そうです。気休めみたいなものです」とのことだったという。)
 防衛大臣は初の「弾道ミサイル破壊措置命令」を発し、イージス艦に搭載した迎撃ミサイルSM3を日本海と太平洋の公海上に、地対空迎撃ミサイルPAC3を東北地方と首都圏に配備。
 官房長官は「我が国領域内に落下するケースは通常は起こらないと考えており、国民各位におかれては平常通りの生活を送って頂きたい」が「万万が一に備え警戒態勢をとる」と。ところがマスコミの取り上げ方は落下の恐れの方を強調。(田岡氏は、そのようなマスコミは意図的にそうしているというよりは、むしろ「平和ボケと無知からくるものだろう」と。)
 マスコミは臨戦態勢さながらに連日報道し、それによっていやおうなしに国民の間に脅威と敵対感情が煽られ、「やるならやってみろ」、「なめられてたまるか」「やったらやり返せ」といった機運が広がる。
外国メディアは、日本は「騒ぎ過ぎ」と論評し、韓国メディアなどは、「日本政府はまるで『戦時』をほうふつさせる警戒態勢に突入」と報じている。
 このような中で、国民の間では「ひとの国の上にロケットを打つなんて腹が立つ」(寒河江市の男性会社員―朝日)といったコメントや「うちの上にミサイルが落ちてきても国の迎撃態勢のおかげで大丈夫」といった意味の投稿(秋田県大館市の主婦―朝日)が寄せられている。一方「大丈夫だと言っておきながら、あんな仰々しいものを持ってくるなんてこっけいだった」という主婦(59歳)も。
 朝日新聞社説は「あたかも日本が攻撃されるかのような浮足だった議論もあったが、国民は冷静だった。」と書いている。
 久間元防衛大臣は「日本は騒ぎ過ぎた。どんなに考えても今、北朝鮮が日本をめがけて撃つはずはない」と(4月11日朝日新聞のオピニオン欄)。
 田母神前空爆長は「いろんな方々から電話で相談が寄せられます。東京から避難すべきでしょうか、とかね。でも私は、北朝鮮の狙いがミサイル発射能力の誇示と、それによって自らの言い分を通そうとする恫喝にあると思っています。日本の領土に被害を与える気はないのだと。国民は安全だと信じていいですよ」と(週間新潮4月9日号特集「日本を襲う『テポドン』15の謎」)。
(5)改憲派の事態利用
 政府は、またしても、この騒ぎを利用し、軍事強化―「ミサイル防衛」容認から集団的自衛権行使の容認、9条改憲の容認へと世論誘導していく。麻生派のある議員は「危機管理に成功すれば支持率が上がる。不謹慎な表現だが神風だ」と(朝日)。
 朝日の投稿には、今回の北朝鮮のロケット打ち上げを「他国民の生命を脅かす行為」だとし、「どのようにして国民を守るのか」、「今回のことで、自衛隊と在日米軍の存在と任務の重要さが理解され、」「国民の見る目も違うものとなるだろう」とし、「単に憲法9条改正反対だけでは、もはや国民の理解は得られない」などといったものが寄せられている。これに対する反論も寄せられており、それには、ある民放の報道番組での視聴者への質問「日本はもっと防衛費を増やすべきか」に対して「増額賛成」が66%、反対が34%だったことを紹介し、「番組で北朝鮮の脅威を繰り返し叫べば、世論はこうなると思った」と書かれている。
 4月13日報じられたNHK世論調査では、北朝鮮「ミサイル」への政府の対処に対する評価に「まあまあ評価する」が45%、「大いに評価する」が23%、「あまり評価しない」が20%、「まったく評価しない」「どちらとも言えない」合わせて12%で、評価するほうが大きく上まわっている。北朝鮮に対する制裁に賛成は67%、反対が7%。そして内閣支持率は支持が30%で先月比では12%もアップしている(不支持は60%だが先月比では11%も少なくなっている)。この支持率アップには小沢民主党代表の違法献金疑惑という敵失のおかげもあるだろうが、北朝鮮のおかげもあるということだろう。
 安全保障問題専門の国際シンクタンク「国際危機グループ」(ブリュッセルに本部)が3月31日公表した北朝鮮の「ロケット」発射問題に関する報告書は、「必要なことは、北朝鮮を対話に戻すための冷静でよく調整された対応だ」とし、「ミサイル防衛のような乱暴な反応は有権者を満足させるかもしれないが、歴史は圧力だけで北朝鮮の行動に前向きな影響を及ぼすことはないことを示している。」「(過剰反応は)北朝鮮の核計画を終わらせるための対話の終えん、朝鮮半島の緊張激化、北朝鮮政権内の強硬派を助長させる結果になりかねない」「最悪のケースでは、戦争という危険を冒すことになる」と警告している。

 今度は韓国も今年中(7月末)打ち上げることにしているとのことであり、日本は人工衛星を既にこれまで何回も打ち上げており(04年度から昨年度まで16機)、「宇宙基本計画」で、さらに、今後5年間に34機もの衛星打ち上げを計画している。これらには軍事情報収集や早期警戒システムなど軍事利用が見込まれている。
 (日本や韓国のロケット・人工衛星打ち上げなら良くて、北朝鮮だけ悪いとなると、「不公平だ」という言い分が持ち出されることになるわけか。)
(6)オバマの核廃絶演説
 オバマ大統領はヨーロッパ訪問中チェコのプラハ市民の前で演説し、アメリカは(広島・長崎に原爆を投下)唯一核兵器を使った核保有国として行動に「道義的責任を持つ」と、米国大統領として初めて言明し、「核のない、平和で安全な世界を米国が追求していくことを明確に宣言する」と言い切った。その演説の中では北朝鮮の「ミサイル」打ち上げをも非難したが、北朝鮮やイランそれに日本(も核を持つべきだという核武装論があるが、田岡氏によればアメリカが一番警戒しているのは実は日本の核武装にほかならないという)など特定の他国に禁止を強いるだけでなく、イスラエルも、インド・パキスタンも、イギリス・フランスも、中国・ロシアも、そしてアメリカも、すべての国が核軍縮から核廃絶へ互いに踏み出す行動を実行に移す時が来たのだ、ということではあるまいか。
 


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