米沢革新懇の38回懇話会が3月7日、置賜文化センターで開催され、それに行ってきた。それは次のようなものだった。
講師―米沢市産業部商工課 金子好洋氏
テーマ―「米沢地区・雇用問題」
内容項目 ①現在の経済背景
②雇用環境
③派遣社員の現況
④米沢市の現況
⑤国の取り組み
⑥米沢市の取り組み
要約
1、経済背景
アメリカにおけるサブプライム・ローン問題→金融危機→株価大暴落→世界同時不況
日本―GDP大幅なマイナス成長見通し(-12.7%―60兆円減)
2、雇用の現況
有効求人倍率(1月)―全国0.67倍
山形県0.45倍(過去10年間で最低)
米沢市0.34倍
3、非正規労働者の雇止め状況
昨年10月~今年3月 15万7,806人 うち派遣社員10万7,375人
山形県4,558人―全国で10番目に多く、東北で福島県に次ぐ
4、非正規雇用 全国で20年間に2倍以上に
08年 33,9% 内訳 パート730万人
アルバイト158万人
契約社員139万人
派遣社員85万人―雇用調整に使われる
その他9万人
年代別で多い順 ①65歳以上(定年退職後の再雇用などで)②15~24歳③55~64歳
企業が非正規を増やした理由 ①人件費(賃金)の節約
②仕事の繁閑に対応
③即戦能力のある人材の確保
④専門的業務に対応
⑤いったん派遣として雇っておいて働きを見て本採用
⑥好不況に合わせた雇用調節
「09年問題」―派遣契約の期間制限(最長1年間だったのが)06年3月以降から3年間に延長、その期間満了がこの3月から来る。
同じ派遣先で3年間継続して働けば、その派遣先の会社に直接雇用義務が生じるので、その何日か手前で派遣を打ち切られ雇止めになる―それがこの3月以降、大量発生する(大量解雇という事態に立ち至る)ことになる。
(派遣がいったん打ち切られてもクーリング期間3ヶ月以内の中断であればそのままその派遣先で3年間継続あつかいだが、中断-その間、その時だけ「請負労働」として偽装するか派遣先の会社で「直接雇用」あつかいにして引き続き働かせる-が3ヶ月を超えれば振り出しに戻ってその時点からもう3年間「派遣」として働かせるられるという、そのやり方で、直接雇用を避ける。)
米沢のサクサ・テクノ(旧田村電機)では、昨年中、派遣社員を直接雇用(正社員)に切り替えた。(NHK「クローズアップ東北」で紹介)電機業界での人員削減 日立 派遣切り8,000人
パナソニック正規・非正規合わせて1万5,000人
ソニー派遣切り8,000以上
パイオニア 全体では30%削減、米沢工場では今のところそのまま
5、米沢市の現況
米沢でこの問題が具体的に聞こえてきたのは12月初め頃、八幡原の会社フロームで従業員を休ませることにしたらしいとか、ミリケン・ジャパンが近々、米沢工場を閉めるらしいとかの情報が入った、そこからだ。
急きょ、市内10社を中心に電話で聞き取り調査したところ、派遣社員など600人以上削減されたことが分かった。
市内の製造業188社にアンケートしたところ、64社だけから回答、その結果、この先4月以降も含めて正規・非正規合わせて1,050人が削減される見込み。
帰休(自宅待機)も、かなりの数にのぼり、国の雇用調整助成金(従業員を辞めさせないで、休ませてでも雇用を維持している企業に助成金)を申請している企業が大幅に増えている。週休2日を3~4日に増やしている企業もかなりある。
輸出関連が厳しく、八幡原の電機・機械メーカーが窮地に立っている。企業アンケートでは、景況は「悪い」が84%、「良い」は3%(米織2社)だけ。
先行き不透明で、さらに悪化の見通し(上昇に転じる見通しはなく、どこまで落ちるかわからない)。業界全体の再編を見据えての、企業としての体力が問われ、年度末の決算期をどう乗り切るかが問題。高齢化で退職者が多くなり、技術継承の上からも対応策が必要。ワークシェアリングも視野に。帰休(自宅待機)措置で何とかしのぎたいが、この機会に優秀な人材確保を心がけ、従業員の研修会をやっている企業も。
企業からの市や関係機関への要望は、運転資金の支援など融資制度の充実を求めるものが多数。受発注(仕事を取ってくる)活動の支援も。国・県の支援・助成制度が補正予算の度にコロコロ変わっているが、その情報をまんべんなく流してほしい、と。
(尚、これらの市内企業アンケート結果のまとめは、市報2月15日号に載っている。)6、国の景気対策―20年度1次補正~2次補正~21年度予算へと「3段ロケット」で総額75兆円
①雇用対策
・離職者への住宅支援(社宅提供事業者への助成)約1万3千戸
(米沢では窪田の雇用促進住宅から5戸、相生町の県営住宅から3戸提供)
・派遣から正社員として雇用した事業所への助成
・雇用創出基金、約4,000億円→各地方公共団体へ交付(山形県に約70億円、米沢市に約8千万円)
②定額給付金2兆円
米沢市には総額13億数千万円(配るための事務経費4,000万円)
各世帯への申請書発送は3月中(高畠町では2月27日に発送済)
横浜市など、給付金を市民から市に寄付してもらって雇用対策等にあてるところも。
7、米沢市の雇用対策
①「緊急経済対策本部」12月18日設置―置賜総合支庁・米沢職業安定所と連携して取り組みへ。
・臨時職員採用―1~6月、市役所での事務補助・軽作業に延べ50名(応募者77名)
・21年度工事(小中学校の耐震工事など)前倒し発注―総額だいたい6億円
・プレミアム商品券-米沢市商店街連盟が発行(総額1億円)、それに市が支援(1千万円)
・「働くひとのための緊急相談窓口」開設―これまでで約150件の相談がきている―相談内容は仕事・職・アルバイトさがし、住宅・生活資金など、ホームレスに瀕しているなど深刻なものや愚痴のような訴えも。
内職の相談も増えており、課の担当者が企業を回って内職をもらってきて紹介に努めているが、縫製関係がやっとあるくらいで,4~5時間がんばって6万5千円ぐらいしかならない、という状況。
・「天地人博&温泉モニターツァー」3回実施―仙台圏から観光客呼び込み
・「上杉雪灯篭まつり」に交通整理要員などアルバイト雇用
・仕事さがし緊急プロジェクト(中小企業のために首都圏などに出向いて仕事を取ってくる取り組み、県・市・大学・企業と連携して)実施
・ハローワーク・県の助成制度などの紹介
ハローワークは朝から大混雑で、端末操作だけでも1~1.5時間待ち。
・ふるさと雇用再生事業・緊急雇用創出事業の実施―国の雇用創出基金からの交付金で
・労働者生活安定資金―本市と労働金庫が協調して低利で融資
(これらのことは市報1月1日号の折込チラシと2月15日号、それに市のホームページにも記載)②今後の雇用対策―短・中・長期の対策がそれぞれ必要
(今いまの生活-緊急避難-のための対策と安定雇用のための対策)
新しい分野の産業(環境・農林業・介護など)に雇用創出
農工商の連携した取り組みに国が補助
照明産業―八幡原に有機エル研究所―照明器具用の発行パネル開発
ワークシェアリングの検討
こういう時こそ人材獲得・育成←団塊世代の活用(技術・知識の伝承)
以上質疑
・米沢にホームレスは?―商工課では把握していない(社会福祉課ではどうだか)
松川の橋の下とか、駅の東西の通路などにいるのか(定かではない)。
ネットカフェがあって、ニートなど利用してはいても、彼らがホームレスとは限らない。
・市内製造業企業アンケートは、188社中64社からの回答で、従業員削減予定数は1,050人だそうであるが、製造業だけで、しかも3分の1の回答だけでこのくらいだとすれば、全体ではその3倍(3,000人)以上になる、とも考えられるのでは。だとすれば大変な数字だ。
(市報2月15日号には1月9日~15日時点の調査で従業員削減予定が正規126人、非正規924人とあるが)正規・非正規とは言っても、回答する企業側では、その概念が(直接雇用・常用雇用・有期雇用・パート・派遣社員・契約社員など)はっきりせず、それら内訳は定かでなく、確かな人数を公表・回答してくれない向きもあるので、なかなかつかみ難い。
・市が特典を与えて誘致した企業ならば、雇用の実態をきちんと把握して然るべきだ。市として責任をもって、電話だけでなく直接足を運んで訊いてくる聞き取り調査も必要なのでは。
・米織など景況の良い企業もわずかながらあるようだが、それらも含めてこれから伸びそうな業種さがしが必要。
・天地人博も、観光客は「伝国の杜」と「城址苑」にしか金を落として行かないのかどうか、はたしてどれだけの経済効果をもたらしているのか検証が必要なのでは。
・ミスマッチ―製造業で働いていた人が、一般事務や、介護など福祉現場は人手不足だとはいっても、それらへの転職を敬遠する。転職(異業種に再就職)するための職業訓練や、資格を取得するための研修の場もなくはないし、それを促す助成制度もあることはあるのだが。
・57歳で職安通いをしているが、中高年者を雇ってくれる会社はなかなか見つからない。―中高年を雇う企業に対して国が助成する制度も(2次補正で)できたことだし、何とか。
・介護福祉現場は早朝・夜間勤務まで時給650円と安い(最低賃金は629円だが)。―行政からの指導・監督は?―それは市というよりは県の管轄。
・55歳、町工場で働いてきたが、2月半ばの社告で、2月中は土曜のほかに木・金を休みとし、3月には月・木・金・土とも休みになって、第3週は全休、稼動は7日間だけになった。給与は、2月は7割、この3月には6割支給、4月以降はどうなるか分からず、暗に退職を促されているかのようだが、このまま居座っていていいものか、不安な日々を送っている。―雇用調整助成金制度があるが適用は?(申請しているのかどうか)。商工課に電話相談だけでなく、直接出向いて相談をされては。
・高畠町のほうで、クビになったということを家族に言えなくて、いつものように勤めに出かけたようにして自殺したという事例が最近起きているが、そのような事態が米沢でも起きないように然るべき対策を講じてほしい。―商工課では窓口相談など対応策を講じているが。―市は緊急事態として早急に然るべき体制を整えてほしいものだ。
・米沢に若者が少なくなっている。米工定時制を卒業し、米沢に残って、派遣社員として勤めたが、契約期限が来てしまい、この先どうしたらよいものか迷っているという。このような若者が、仕事が無くて米沢を脱出しなければならない、というふうにならないように、市あたりで何とかできないものか。
・緊急対策といっても、これといった特効薬は市町村レベルでは、なかなか困難、国の景気対策も遅かった。
・定額給付金も、どこかの市(横浜市など)のように、米沢でも、その金(13億何千万円)を単に配るだけでなく、寄付を募って(然るべき受け皿をつくって、給付金は要らないという人から集めて)雇用・福祉対策など緊急に必要とされる事業に振り向ける、といった方法を市長は考えなかったのだろうか。―そんなことをしなくても、地域で買い物に使ってもらえばいいのでは。―いや、ただバラまくのではなく、本当に必要な人に有効に使ってもらえるように、今からでも市長に話してみてほしい。
・市議会で雇用問題の質疑が4日にあったはずだが、そこでどういう話になったものか。この懇話会としても、要請をしていかなければならないことだ。
・昔「失対事業」というものがあったものだが、そのようなものを温暖化対策の事業としてやってはどうか。クルマを使わずに済むように自転車を安心して乗れる道路の整備をしてもらいたいとう要望もあり、そのような道路(自転車道?)の整備事業などもあってもいいのでは。それに、ペレット・ストーブの普及(国が3分の1助成?)に関して、他地域産のペレットは高くつくが、米沢にいっぱいある里山の間伐材を地産地消として利用してペレット燃料を製造する、そのような新しい企業起こしもあって然るべきなのでは。といった内容であった。米沢における雇用問題の現況はこのようなものだ、ということ。