米沢 長南の声なき声


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日本の教育問題
2008年11月16日

 この問題を代表的なテレビ・ワイドショーがどのように取り上げたか、紹介したい。
11月10日テレビ朝日の番組「たけしのTVタックル」である。
 番組冒頭、ノーベル賞受賞者の(インタビューの中での)「厳しい苦言の数々」の紹介から始る。
 益川氏「『統一・一次試験』みたいなものは、誰がわるいかと言ったら採点者がわるい。速くできるように括弧に入れるだけ。選択問題なの。あれは『教育汚染』だ」と。小林誠氏「同じ問題は教科書についても云える。最小限のことだけ書かれて全体のストーリーとか、そういうものがない。」
 次いで画面いっぱいに「ダメ教師」「電車内で痴漢、高校教師逮捕」「学力低下」「教育格差」「学校選択制で格差」などの字句が踊る―教育現場に目をやれば問題が山積と(ナレーション)。
 一現役公立中学教師(顔・名前は示さずインタビュー)「危ないというか、もう崩壊していると思います」
 「学校で今何が起きているのか?」(番組標題)
 「ノーベル賞はムリ!?日本の教育が危ない!!」と(問題提起)。
教育費
 「親の年収と学力が比例」「交通遺児など奨学生家庭の年収平均137万円、東大生の親の年収950万円以上が50.7%」
 高校授業料(年間)―公立12万円に対して私立35万円以上
 高等教育機関(高校・大学)への公財政支出の対GNP比(05年)―先進30ヵ国(OECD加盟国)平均1.1%に対して日本は0.5%で最低
 大学の初年度納入金―国立約82万円に対して私立文系114万円、理系147万円
 「国公立でも年間200万くらい使えないと学校に行けないとさえ云われる」(精神科医の和田秀樹氏インタビュー)
 塩谷文科大臣(就任会見の時の発言)「親の所得など経済的状況によって教育を受けられないということがあってはならないわけですから、子供たちに等しく教育を受ける機会を保証することが国としての役割です」
 (ナレーション)教育振興基本計画―7月1日閣議決定―「教育立国」を宣言、「欧米主要国を上回る教育の実現を図る」と。しかし、当初掲げた「教育投資額GDP比3.5%を5%に」は(財務省の反対で)「諸外国の状況を参考に」という抽象的表現に後退。
 その一方で文科省は09年度概算要求で全国215の公立学校の武道場建設に48億円を要求するなど箱物予算は確保しようとしている。
 和田氏「日本の場合は公立学校の建物は、こんなに公教育費が少ないのに、世界中の人が見たらビックリするくらいに、特に新築の学校はあんなにキレイなわけです。だから公教育費を掛けるということが、セメントに金を掛けるために使われるんだったらたまったものではない。人間に金を掛け、カリキュラムに金を掛けてほしい」
 (ナレーション)「教育を受けることは、日本では贅沢になってしまったのか」

●出演者の発言
 共産党参議院議員の山下氏「OECD加盟国で高校授業料無料は26ヵ国、大学授業料無料14ヵ国、返済なしの奨学金給付制をとっている国26ヵ国」
 自民党参議院議員の義家氏(ヤンキー先生)「フィンランドなどと比べるけれども、国の規模も置かれている状況も全然違う、進学率など・・・」
 民主党参議院議員の鈴木寛氏「大学進学率はこれらの国のほうが日本よりむしろ高い」
 政治評論家の三宅氏「租税・社会保障負担率が違う。消費税は、フィンランドは25%だが、日本は5%。何だかんだいったって5%ではできるわけない」
 鈴木氏「できます。公共事業費が日本はGDP5%だが、ドイツは1.5%で3.5%も高い。それを削ればできる。」
 三宅氏「お金をかけなくても、英知によってできることは幾らでもある」
 司会(たけし)「ノーベル賞をとろうったって、お金のない国は大変なんだよ。」
 山下氏「今回4人の方々の受賞でも、基礎研究がだいじなことを教えてくれたが、その予算がすごく削られている」
 鈴木氏「お金をかけないと、金持ちは自分で自助努力でいくらでもできるからいいが、金持ちでない貧乏な家のお子さんのチャンスがなくなるから、これ、どうしますかということなんです」
全国学力テスト
(全国学力調査―1960年代、実施。不正・不適切行為が頻発。地域間・学校間で学力コンテスト化・序列化で過度の競争に陥るなど弊害があらわに。66年打ち切られる。
ところが、04年、中山<当時>文科大臣が再開を打ち出し、昨年から実施。
 文科省実施要領に「都道府県教育委員会は域内の市町村および学校の状況について個々の市町村名・学校名を明らかにした公表は行わないこと」と。
 都道府県別の平均正答率は公表―各都道府県で順位づけ。浮き足立つ自治体も。
 税金を使って試験をしたのだから、結果を住民に知らせるのは情報公開の点から当然であり、「公表するな」という文科省の「実施要領」よりも自治体の情報公開条例の方が優先するとし、公開請求を求める住民も現われ、各地で公開に踏み切る自治体が出てきている。
 尚、中山元文科大臣は、本年9月、国交大臣就任間もなく、全国学テは「日教組の強いところは学力が低い」ということを確かめるためにやったと発言<他にも問題発言が重なって辞任>。
 問題点は、「児童生徒の学力・学習状況の把握・分析」はサンプル調査<抽出調査>でも可能なものを、わざわざ60億円もかけて全員を対象にする必要がはたしてあるのか、ということ、それに何よりも、これが序列化や過度な競争をさらに促し、各市町村教委・各学校・各家庭ともこれに必死になってしまい、教師と生徒へのプレッシャーがさらに強められることになるということ。)

[番組展開]
全国学力テスト結果公表の是非―(司会)「そもそも結果公表しないのに学力テストをやる意味があるのでしょうか?」
 橋下大阪府知事(ビデオ出演)「全国平均、また府の平均、他の市町村とを比較することによって、自分たちの家庭・地域にどういう課題があるのか(明らかに)」
 塩谷文科大臣(ビデオ出演)「(公表することによって)あえて競争心を煽ることはマイナス」
都道府県別結果は公表(8月)―1位秋田・・・47位沖縄
  大阪府は昨年45位だった小学校が41位、中学校45位で昨年と同じ。)

 橋下知事「2年連続でこんなザマだったら、普通民間だったらとんでもない。もっと教員しっかりしろと(言いたい)。」「市町村の教育委員会は甘えている。結果が表に出ないからだ」と発言。大阪府の市町村レベルまでの結果公表を宣言(9月)

 鳥取・秋田の県知事も「市町村レベル」の結果公表を宣言

 この動きに対して文科省は批判―文科省事務次官の銭谷氏(10月言明)「そもそも(都道府県教委には)結果を公表しないことを前提に(市町村レベルの)結果をお伝え(提供)しているわけ」
ナレーション「大部分の都道府県教育委員会はこの文科省の意向通り市町村レベルの公表はなしというスタンスをとっている。」
 一現役公立中学教諭「自校の成績がわるいのは、学区内に低所得者の公営住宅があるから当然だとか、差別につながる」
 事例紹介「2年前、足立区の某小学校でのこと、テスト中先生が(机間巡視)生徒の解答の間違っている所を指差して、正解に導く不正行為―結果05年44位だったのが06年1位に。」
「点数の改ざん、低学力の生徒を休ませて全体の平均点を上げるなどの不正行為事例も。」
 杉並区和田中学校の前校長藤原氏(東京都初の民間人校長、大阪府特別顧問)(ビデオ出演)「テスト実施に税金で70億円もかけて調査したものが死蔵してしまうのは許されないこと。(成績の)厳しい所にはっきりと予算と人を投資するためにはオープンにしなければならない。都道府県・市区町村・学校と各レベルに合わせた内容で全て公表すべきで、地域の協力を得ることで学力を向上させることもできる」と。
 山下氏「なんで全国一斉に、一律に全ての子どもたちに同じ問題をやらせないとだめなの?その学校で必要なテストをやればいいんであって、全国一斉に同じ問題をやって公表するから点数競争になってああいうこと(点数改ざんや不正行為)に」
 義家氏「全国一斉に同じ指導要領の下でやっているわけですから」
 三宅氏「教師であっても子どもであっても、全国でどの程度のレベルか知りたいとおもうね、私は」
 大竹氏「いちばん最低だったらどうする?」
 三宅氏「ガックリするだけの話し」
 大竹氏「問題はそのへんにもあるんじゃないの。最低だとレッテルを貼られた所が、次の試験の時、『指差し』(テスト中、解答の間違っている所を教えてやる)とかがおこなわれていって、何の意味もないグルグルが繰り返されていくだけじゃない」
 小嶋氏「世の中、一番があればケツもある。うしろになったら次に頑張ろうという力をつけりゃいいんじゃないの。子どもの名前を出すとか、これはよくない。でも市町村とか市単位で出すだけでしょう」
 山下氏「いや、学校ごとに出す動きが出ている」
 三宅氏「出して悪いんですか?『秋田は一位になりました、こういうことをやっていますよ』ということをやれば、各県だって皆そういうふうなことを真似て、競争原理を働かせていいことなんですよ」

教育委員会制度
[委員は首長(県教委は知事、市町村教委は市町村長)から任命される。(どういう人が?という司会(たけし)の問いに義家氏「普通の人ですが、元学校の先生を選ぶ首長も。これは首長しだいです」と。)非常勤で専用の机があてがわれない(上に資料を置いて腰を据えて取り組む体制になっていない)。鈴木氏「結局それ(委員会)は隠れ蓑になっていて、教育長という一人だけ事務局的な常勤の役人がいる。この人が事実上全部コントロールし、絶対権をもっている」と]

 橋下府知事(知事の意向に従わない教育委員会に対して行った知事の発言をめぐる記者の質問に)「“クソ教育委員会”じゃなくて“教育委員会のクソ野郎”と言ったんです」「教育委員会制度を抜本的に、解体を原則としてゼロから教育行政を見直すべきなんです」
 鈴木氏「(教育委員会は)要らないんです。一回つぶした方がいいんですよ」
 
 ナレーション「大分の教員採用汚職事件に見られた閉鎖的な教育組織(その弊害)」
 一現役公立中学教師(インタビュー)「現場の校長の上に市町村教育委員会があり、その上に都道府県教育委員会、その上に文科省がある。教育委員会から派遣されてきた教育委員会の末端組織という意識をもつ校長先生もかなりいる。そういう校長先生をヒラメというんです。眼が上についていて上ばっかり見ているから」と。
 義家氏「文科省の意向をそのまま教育委員会が受けているということとクレームに対して怖い。反論があがるとすごく弱いのが教育行政の特徴なんですよ」
 藤原氏(インタビュー)「首長が教育長に力のある人を据えると教育委員会は変わり、そういう教育長は校長を若手の人材に入れ替えて・・・」
 三宅氏「(教育委員会は)公民館長の人事とか図書館長の人事とか皆もっており、校長で反抗的なヤツは(それらには任用されない)」
 谷澤氏「教育委員会の云うことを聞かなかったら校長にしてくれない」
橋下知事の教育介入
 大阪府下の教育委員会・校長会と橋下知事との間での問題については、このテレビ番組とは別に、月刊誌『世界12月号』に『橋下知事の教育介入が招く負のスパイラル』と題する星徹氏のルポルタージュが載っていたので、それをも以下に(要点をピックアップして)紹介しておきたい。

 「二年連続でこのざま。最悪だ」「市町村の教育委員会は甘えている」と言って知事が激怒した大阪府だが、その中でも大阪市は、小中学校とも大阪府平均を下回っている。しかし、それは地域によって大きな差があり、裕福な世帯の集まる地域は府平均をはるかに上回り、貧困世帯が集中する地域は府平均をはるかに下回っている(両者の平均正答率は100点満点で40点近く差がある)。後者の地域では一人親・両親ともにいない家庭や生活保護・就学援助を受けている世帯が多い。保護者が夜遅くまで働きに出ていれば、子どもたちが家庭で放置状態になりがちとなり、教員の多くはそれらの子どもたちの生活指導に労力と時間をとられ授業準備の時間がとり難い。

 大阪市教職員組合(全教系)の鍋田書記長「どこの地域の子どもたちが困難な状況にあるかはすでに分かっている。子どもたちが安心して生活し、学習できる環境を作ることが先決だ。」と。
 橋下知事「(学テ成績結果を)公表しないのは市町村の自由だが、そのかわり、府が35人学級の予算を出す必要はない。」「予算は(学テ成績の)公開・非公開で差をつける」と発言。知事は「予算編成のための参考資料」として、府教委に市町村別の平均正答率のデータを提供するように求め、その一覧表を受け取った。すると(そのことがマスコミ報道されたこともあって)知事に対して情報公開請求をする府民が現われ、知事は請求者らに対してそのデータを開示した。ただし、開示は自主的に公表に踏み切った自治体にとどめた。それでもその数は府内43市町村のうち小学校については35、中学校については32に及んだ。
 多くの市町村(9割以上の生徒数が属する)が公表に応じたので、35学級予算を出さないとか予算に差をつける話しは「今は考えない」と。
 しかし、府教委予算(教職員の人件費など含む)を今年度は昨年度に比べ約337億円(5.4%)減らす。
 知事の教育行政への介入―「教育内容に関する事柄にまで知事が介入し、その思いつきに基づいた教育行政が行われようとしているのではないか。府教委は形の上では残っているが、実際上は知事を中心とする一般行政が主導・操縦する形になりつつあるようだ。(東京都杉並区立和田中前校長の藤原氏が府教委特別顧問に。)
 これに、大阪府内の公立小中学校の校長らが反発。府小学校長会―学テに関して、知事に各市町村教育長に対する「序列化につながる公表の要請」をやめるよう申し入れ書提出。会長の西村氏「怠けているのが明らかになるから公表に反対してなどといった考えはナンセンスだ。」「あくまで義務教育の本質から離れていくことを危惧して反対しているのだ」と。
 府公立中学校長会も府内各市町村教育長に市町村別平均正答率の非公表支持「要望書」を提出。前田会長「非公表を前提に我々は全国学テを各校で実施した。それなのに、その前提を無視して公表するのはおかしな話だ。私たちは子どもたちにルールの重要性をずっと教えてきたが、橋下知事のやっていることによって、子どもたちに示しがつかなくなる。」
 吹田市坂口市長、(記者会見で)「アホな騒ぎにつきあってられない」「知事に対する宣戦布告です」(ホームページに)「今こそ教育の本質を見失ってはならない」と。(星氏の問に)「知事は・・・予算を盾にとって市町村教委に圧力を加え、制裁をちらつかせる手法をとってきた。・・・市町村教委の自主的な判断を無視して教育行政ができるんですか。・・・府教委にしても、あれだけ知事にボロクソに言われ、存在を否定されて、よくその知事に追随して一緒にやっているなあと不思議に思う。府教委の教育委員の方々は、もっと自立的な立場で発言してほしい」「知事の手法や言動はおよそ教育にはふさわしくない。子どもたちは大人に不信感を抱き、モンスターペアレンツ(学校や教師に無理な要求を繰り返す保護者)を助長するような荒っぽいやり方だ。子どもの親も知事の手法や言動をまねれば大変なことになる。」
 吹田市教委は同市立小中学校の平均正答率は非公開。同市教委の田口教育長(星氏の問いに)「他の市町村と平均正答率を比べても意味はなく、公表すれば、そこにばかり目が行き本来の教育のあり方が歪められる危険性がある。吹田市は全教科(国語・算数・数学)で全国平均を上回っており、『成績が悪いから発表しない』というわけではない。結果の分析もかなり突っ込んで行い、詳細な資料を公表している。知事が言うように『逃げている』のではなく、われわれは逆に攻めているのだ。」
 豊中市教委は平均正答率の公表には否定的(設問・領域ごとの正答率は公表)だったが、橋下知事は平均正答率の情報を開示。山元同市教育長―「市教委として丁寧なプロセスを踏み、議論を重ねたうえで決定したことが、知事によってひっくりかえされた。とても残念だ。」「市町村の平均正答率を出しても、各地域によって前提となる条件が異なるので、メリットがない。このまま公表すれば、1960年代に起こったように、点数をめぐって過度の競争が起こり、序列化が進む危険性がある。そういったあり方は本来の教育を歪めることにつながる。」
 大阪府内の一公立小学校教諭「(市町村別平均正答率の公表について)経済的・社会的に困難な家庭の多い地域とそうでない地域を比べることに何の意味があるのか」「国は全国学テを行って『学力のしんどい地域』が分かったのだから、そういった地域の根本原因を改善する取り組みに力をいれてほしい。」

 大阪府全体の社会・経済状況:(05年)完全失業率は47都道府県中2番目に高い(8.6%)。
   勤労世帯一世帯当たりの実収入(06年)は下から3番目。
   生活保護の被保護実人員(05年)は全国2番目に多い(2.4%)。
   都道府県と域内市町村による一人当たりの教育費財政支出(05年)は全国6番目に低い。

 学テの成績を照らし合わせれば、相関関係は明らか。
 平均正答率が下位にある沖縄・大阪府・北海道などは世帯当たりの実収入が低く、完全失業率・生活保護受給率はともに高い。
 平均正答率が上位にある福井県・富山県などは、世帯当たりの実収入が高く、完全失業率・生活保護受給率はともに低い。

 大阪教職員組合(全教系)の田中教文部長「こういったことが明らかなのだから、橋下知事は教育の環境整備に力を入れるべきなのに、教育予算を今年度は大幅に削っている。」
 大阪府教組(日教組系)の新居中央執行委員長「経済・生活格差が学力格差・進学格差に結びつき、それがまた経済・生活格差へと結びつくという『負の連鎖』になっている。だからこそ総合的施策で格差解消をしなければダメなのだ。しかし我々は教育者なのだから、『だからしょうがない』と考えるのではなく、与えられた条件の中で最善を尽くしている。」
 以上、ルポライターの星氏が聞き取り、取材。

 星氏の論評:「橋下知事はこういった教育現場の生の声を聞くよりも、自らの狭い実体験に基づいた『思い』にこだわり、文科省や府教委・市町村教委を『敵』に仕立て上げ、『府民の意見を聞く』と言っては対立の構図を作り上げているようだ。この『橋下劇場』の手法によって、多くの府民は喝采の声をあげ、その声を利用して、知事は思いどおりの教育介入を推し進めているのだ。
 このようなポピュリズムによって学校の教育が歪められぬように、都道府県教委や市町村教委には一般行政からの独立が保障されているのだ。しかし今、大阪府では、この独立が脅かされている。」「そもそも、国が『全員調査』の全国学テを実施し、都道府県ごとの平均正答率を公表するだけで、学力・学習習慣の面で『困難な地域』に特別支援の財政支出することすらない、というあり方も問題ではないか。このことによって、大阪府のように教育現場の実態を無視して、本来の義務教育のあり方を否定するような方向へと浮き足立つ自治体が出てくるのだ。」

日教組
 ナレーション「中山前国交大臣の発言で注目された日教組、『日本の教育の癌』とまで言われた日教組とは、いったいどんな組織なのでしょうか」
 1947年、結成―「教え子を再び戦場に送るな」をスローガンに
 1958年、組織率86.3%
 1980年代、一部組合員の離脱や分裂を繰り返す
 1995年、「大きな方向転換を迫られることになる」
 横山委員長(当時)「日の丸・君が代が国旗・国歌であるかないかというのは学校の校長や職員だけで決められる性格のものではない。したがって一時棚上げして、その問題の論争を現場ですることはやめる」(日の丸・君が代論争からの撤退)―文部省と和解へ(パートナーシップ路線)
 1999年8月「国旗・国歌法」成立(参院で強行可決)
 2007年、組織率28.3%
 和田秀樹氏「彼らがやってきたことは、自分たちの待遇改善もさることながら、イデオロギー運動であって、子どもの学力を置き去りにしてきた」
 義家氏「今、組織率が下がっていると言われますけれども、現状は全く違うわけで、過激な活動をしてきた人たちが今50代になって、かなり影響力をもっているわけ。じゃ、どう正常化のためにそこで切り離していくのかを具体的な議論をしなかったら、このままずるずる流れていく心配が自分のなかにすごく強い」

 渡久山長輝氏(元日教組書記長、現在、中央教育審議会委員)(出演)「組織率、一番高いのは福井だが、そこは学力テスト成績は3位(高い)」
 山下氏「国旗・国歌法」成立当時、野中官房長官は(国会答弁で)『強制はしない』と」
 小嶋氏「あなた日本人をやめたら?」
 渡久山氏「日教組は『起つな』(不起立)という指示は一切だしていない。思想・信条に
介入はしない」
 谷澤氏「日教組も行き過ぎがあるが、それとつるんだ教育委員会・文部省もわるい」「日教組の教員は教育に関しては一生懸命やる人が多い」
 三宅氏「一生懸命、思想教育をやられても困るんだよね」
 谷澤「私らもそんな教育の中で育ってきましたけど、あまり毒されていませんよ」

●私見:戦後、新憲法と教育基本法の下で民主教育がスタートしたものの政府・文部省は間もなく逆コースへと舵を切り、「教育の政治的中立に関する2法」制定(政治教育や平和教育を萎縮させる)、教育委員会公選制の任命制化や勤務評定、学習指導要領の法的拘束力強化、全国一斉学力テスト、教科書検定等々が行われようになり、日教組はこれらに反対し抵抗してきたが、結局は抑え込まれていった。スローガンに「教え子を再び戦場に送るな」を掲げていながら、歴史教育など授業では現代史を重視して戦争を正面から取り上げて教えることができなくなっていった。近現代わが国が行なった戦争にたいする教師たちの歴史認識に対して、これらの戦争の片棒をかついできた政治家・官僚たちとその後裔・後継者からなる政府・文部省のメンバーたちの歴史認識には大きなギャップがあり、教師たちの授業には彼ら文部省政治家・官僚たちの手で作られた指導要領や教科書検定などに基づいてチェックが加えられクレームがつけられる。教師たちはそれに対して萎縮して、「教え子を再び戦場に送るな」という使命感をそがれ没却して、現代戦争史は「あたらずさわらず」で済まそうとし、そこからは試験問題を出さない。文部省側も事勿れ主義から、或は意図的に(真実から目をふさごうとして)教えない方が都合がよく、そこまで進まないことを黙認する(暗黙の了解)。その慣行が定着していった。
 かく言う私は、幼児期に父が兵隊にかりだされ、防空壕に隠れたという戦争体験はあるものの、学校では現代戦争史を習わなかったし、教師になりはしたものの未熟だった若年教師時代は、生徒(団塊世代)にそこはろくに教えてこなかった。(進度が遅くてそこまで進まなかった。生徒諸君には全くもって申し訳ないと思っている。その後になってからはそこに独学して精一杯時間を掛けて教えた。)
 政治家の方々は現代戦争史をきちんと習ったのだろうか。誰から習ったのだろうか。安倍晋三氏は学校で組合員教師から習ったりしたのだろうか。父や祖父(岸信介)からは勿論しっかり教わったことだろう。
 ところで、「日本を侵略国家というのは濡れ衣だ」と懸賞論文に書いて航空自衛隊幕僚長を更迭された田母神氏はどうだったのだろうか。いったい誰からそのような戦争史を教わったのだろうか。独学か、それとも?
 別のテレビ番組だが、この件に関して11月15日、朝日ニュースターの「愛川欽也のパックイン・ジャーナル」でコメンテーターが次のように論評していた。
 評論家・東京家政大学名誉教授の樋口恵子氏「日教組と政府の対立の中で、怖いから教師が教えないんです。その結果としてあのへん(現代史)は入試にでないんです。だいたい明治維新ぐらいまで教わって、その後の歴史を知らない人が、もしかしたら、日本の人口の半分ぐらい或はもっといるかもしれない。田原総一朗氏は田母神氏のような意見は日本の世論の半分以上だと書いている。」
 軍事ジャーナリストの田岡氏「田母神氏自身歴史を知らないから、誰かにつっこまれると、ああそうかなと、自分のいいほうを白紙の上に墨汁を落としたようにね。」「問題なのは(日教組の教員が)変な教育をしているから問題なのではなく、むしろ何も教えていないからだ。」「歴史観など(イデオロギー)は教えなくても、史実はきちんと教え、誤りは誤りと認め、歴史に学ぶことは必要」

 [たけしの番組に戻ると]
 義家氏「(日教組は)協調路線をとっている一方で、過激な左派が存在している。日の丸・君が代に対して議論しないと・・・。(日教組支部の内部文書に)戦前・戦中、日の丸・君が代が果たした役割と天皇制の問題点に気づくように、建国記念日にたいしてこういう教え方をしよう、ということをやっているわけですよ」
 渡久山氏「日教組の本部からはそういう文書はだしていない。日教組は政治団体ではない」
 義家氏「それはいいわけですよ」
 大竹氏「義家さんは中山さんの発言には肯定的なわけ?」
 義家氏「そうです」
 大竹氏「じゃ、なんで大臣をクビになるの?」
 松あきこ氏「そりゃ、公の場であんなふうにいうのは絶対許されませんよ」
 大竹氏「ここだって公の場ですよ」
 松氏「だって大臣ですもの、大臣としてあんな発言を」
 大竹氏「(義家氏の発言は)国会議員(として)の発言ですよ、今の発言はね」

 小嶋氏「東大に入るような子は素質があるんです。『父方・母方の家計を調べろ、親戚中、だれも入っていなかったら8割あきらめろ』と言うんですよ」
 谷澤氏「無気力教員が問題。5時で帰ってしまい、放課後残った子どもフォローをしない。悪いことをした生徒を退学させるのに職員会議があるが、先生方は5分も会議しませんね」
 義家氏「校長先生が『まあまあ』と。だいたい校長になるのは50代半ばで、二つの学校を転勤して定年退職して天下る。色んなところに問題を起こさずに定年まで勤めあげたら、その後のポジションがある。それで『まあまあ落ち着いて』と」
 司会「『事勿れ主義』なんですね」
 大竹氏「それだったらダメなのはシステムの問題じゃない」

 以上、「たけしのTVタックル」を主として、一部「愛川欽也のパックイン・ジャーナル」を加えたテレビ番組と星氏のルポルタージュの中で、いろんな人が述べた言葉を、ほとんどありのままに記述してみたが、その中から各自で問題点を感じ取ってほしいものだ。


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