米沢 長南の声なき声


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「社会保障抑制か、さもなくば消費税増税か」だって?
2008年06月20日

 政府・与党政治家や財界やマスコミは、よく「財政悪化と少子高齢化で、今や国家存亡の危機にある。国民は痛みに耐えよ!」と云いたてて、二者択一式に単純化して次のような問いかけや問題提起の仕方をする。
 「社会保障費(年金・医療費など)削減か、消費税増税か」「高福祉・高負担か、低福祉・低負担か」「消費税増税か、上げ潮か」(後者は、経済全体の底上げによって企業収益が増え賃金も上がって税収が増えるのをあてこむというものだが、現実は、景気回復で企業収益は激増しているのに、賃金はいっこうに上がっていない)、「税金は豊かな人から貧しい人への所得再分配になるように課すべきか、それとも努力した結果が報われるように課すべきか」 「改革か、現状維持か」(「改革派か、抵抗勢力か」)等々。
 このように問いかけられた庶民は、単純に「改革が必要に決まってる」「消費税引き上げもやむを得まい」「努力して沢山稼いだ人が損をするような税金の取り方はまずい」「財政事情を考えれば社会保障費減額もやむを得ないだろう」「『中福祉・中負担』(朝日新聞の主張)がよい」となってしまう。
 しかし、このような問題の立て方って、おかしくないのだろうか。
(1)財政の目的は収支黒字化にあらず
 「はじめに財政ありき」で「財政再建」とか財政コストにばかりこだわり、「社会保障費抑制か、消費税増税のどちらかしかない」という結論に導こうとする。
 そもそも財政悪化をまねいた原因は、社会保障費の増大などではなく、道路建設など、ゆき過ぎた大型公共事業にあった。(1990年代、日米構造協議におけるアメリカからの要請に応じて「10年間で630兆円」という公共事業基本計画がたてられ、毎年50兆円ずつ公共投資が行われたが、それに対して社会保障費の方は20兆円と大きく下回っていた。)
 財政が空前の巨額赤字(国と自治体と合わせて700兆円)を抱えていることも確かだが、だからといって財政破綻・債務不履行につながる危機的状況にあるのかといえば、それは必ずしもそうとだは云えないのだ。
 中央・地方の財政赤字のGDP比は、02年は8.8%であったが、07年には3.4%まで減っているし、財務省自身が危機は乗り切ったと云っている。
 (月刊誌「世界」4月号に掲載されている井手英策・横浜国立大准教授の論文「本当に財政危機なのか」によれば)我が国の外貨準備高は依然として世界第2位を誇り、経常収支の黒字は巨額であり、財政赤字といってもそれは「管理された赤字」なのだとしている。
 アメリカは「双子の赤字」(財政赤字と貿易赤字)を抱え、世界最大の債務国だが、破綻国家ではない。

 そのうえ我が国の財政には「特別会計」というものがある。年金関係・道路関係・食糧管理その他の「特定財源」となっているものだ。それは「一般会計」83兆円の2倍(178兆円)もの額に達する。塩川正十郎元財務大臣が「母屋ではおかゆ食って辛抱しようとけちけち節約しているのに、離れ座敷で子供がすき焼き食っておる」と評したのは、この特別会計のことだ。最近では「霞ヶ関埋蔵金」などと言われたりもしている。
 (上掲誌「世界」掲載の神野直彦・東大大学院経済学研究科教授の論文「三つのドグマを打ち破ろう」によれば)財政の使命は、経済危機や社会危機を解消して「幸福な社会」を実現するためにあるのであり、それは「市場の失敗」に対応するだけではなく、その使命は、公共と民間、豊かさと貧しさ、仕事と生活などで生じているアンバランスを回復することと、「悲しみを分かち合う」生活共同体を育成することにもあり、そもそも収支黒字化や帳尻合わせ自体が財政の目的ではない、ということなのだ。
(2)財政使途の優先順位
 国や自治体が何にカネをつぎ込むか、どこから集めるか、財政支出と税源には次のような優先順位がある。
事業(使途)
①たとえ財政難でカネが足りなくても、他をカットするか、増税するか、借りるかしても、やらなければならず、絶対削ってはならないもの
②カネがある限り(予算の範囲内で)やらなければならず、削ってはならないもの
③カネが余れば(財政に余裕があれば)やってよく、余らなければカットしてよいもの
(不要不急なもの)
④無駄で、カネがあってもやってはならず、カットすべきもの

財政支出項目・使途には具体的にどのようなものがあるか、列挙すれば次のようなものだ。それぞれ①~④の優先順位のどれにあてはまるか、である。
[社会保障関係費]社会福祉費、社会保険費、医療・保健衛生対策費、生活保護費
[雇用対策費]
[中小企業・地域経済対策]
[農林水産・食糧安定供給関係費]
[教育・文化費]
[公共事業費]
[環境対策費]
[軍事費]
[ODA費]発展途上国への開発援助費
[災害対策費]
[科学技術振興費]
[政党助成金]
(3)社会保障費はどうなっているか
政府は小泉改革(「骨太の方針」)で07年度から5年間で1.1兆円の削減を決定、毎年2,200億円ずつ削減へ
年金―基礎年金への国庫負担は3分の1から2分の1に増額へ
政府の「社会保障国民会議」は、この基礎年金の財源を「全額税方式にするか、保険料方式にするか、どちらがよいか」などと二者択一式の問題提起をして、全て税でまかなう全額税方式でやれば、消費税率を9.5~18%まで引き上げる必要ありと試算してみせている。
最低保障年金制度―全額国庫負担(税金)による―は必要
医療―国庫負担のGDP比(8%)は先進国では最低水準
「後期高齢者医療制度」―75歳以上の高齢者を国保(国民健康保険)や健保(健康保険組合)から切り離して、彼ら自身が保険料を(年金から天引きされて)納める彼らだけの医療保険に組み入れる。受けられる医療の内容(受診制限)も、その値段(診療報酬)も、他の世代とは別建てに。財源は税金(国庫負担・自治体負担)から5割、国保・健保など他の医療保険から(支援金)4割、高齢者自身が納める保険料1割。
こうして国庫負担を抑えるのが狙い。
(窓口負担は従来どおり原則1割負担、現役並みの所得がある人は3割負担。以前は、1973年から10年近くの間、70歳以上、全員無料だった。)
乳幼児医療の無料化も課題
公立病院(民間病院ではできない不採算部門の僻地医療や救急・救命、感染症治療、災害医療など重要な部門を担っているのに、自治体病院に対する普通交付税の財政措置を大幅に切り下げ、病院経営の悪化を招いている)を統廃合し民間委譲してつぶすか、維持・存続するか。
医師(人口1人当たりの医師の人数はOECD加盟25ヵ国中23位、特に病院勤務医・産科・小児科医が不足)・看護師の人員・勤務実態をどうするか、改善が急務。
介護福祉―介護スタッフの低すぎる報酬、過酷な勤務実態、1年間5人に1人が辞めていく―報酬の引き上げ、人員配置基準・労働条件の改善をどうするか。
少子化対策予算―ヨーロッパではGNPの2~3%投入、日本は0.8%(約4兆3千億円)
児童手当の増額、児童扶養手当は削減か、確保か
児童施設整備費、保育所の増設、保育士の増員をどうするか
児童相談所の拡充、児童福祉司の増員をどうするか
生活保護―その扶助基準が税金の課税最低限を決める物差しになっていて、地方税の非課税基準、就学援助の適用基準、国民健康保険料の減免基準などにも連動し、最低賃金を決める物差しにもなっている。だから、これは生活保護を受けている人だけの問題ではないわけ。
(4)雇用・労働対策費はどうなっているか
派遣労働の問題―賃金のピンはね、劣悪な労働条件の温床に。
そもそも派遣労働は戦後、職業安定法で禁止されてきたもの。
1985年労働者派遣法で16の専門業種に限って解禁
1999年原則自由化、2003年には製造業でも解禁―正社員を非正社員に切り替える方向へ
労働者が物のように「使い捨て」される状況が蔓延
労働者派遣法の抜本改正―派遣労働や有期雇用の規制復活、派遣労働者・パート労働者と全ての労働者の均等待遇(同一労働・同一賃金、社会保険適用など)―の必要性
日雇い派遣は原則禁止へ(厚労大臣が意向表明)
労働基準監督署―会社による違法・脱法行為のチェック体制の強化、監督官の増員が必要
ワーキング・プアからの脱出支援―技能修得、資格取得のための職業訓練―訓練期間中の生活資金の貸与・家賃補助制度の必要性。
長時間労働・サービス残業などの勤務実態の改善は、不安定雇用の改善とともに急務―結婚・子育てしやすい環境をとり戻す少子化対策につながる。
(5)中小企業・地域経済対策費はどうなっているか
中小企業への賃金助成
中小企業に対する優遇税制
揮発油税・軽油取引税の暫定税率の撤廃
既存融資への利子補給、省エネ設備導入への無利子融資などの緊急措置の必要性
地方自治体がきめ細かい中小企業支援策をとれるような予算措置の必要性
地方交付税の財源保障―住民福祉の保障―公共施設・公共交通は廃止か再生か
(6)農業・食糧対策費はどうなっているか
2兆円台で予算全体の3%と少ない
実態―食糧・飼料価格の高騰
   米価は暴落、減反が続き、耕作放棄が拡大
食糧自給率わずか39%―海外依存
小農家、切捨てか、価格保障・所得補償制度による支援か
食品衛生監視員の大幅増員―輸入食品の検査率の引き上げ(10%から50%に)の必要性
BSE対策―自治体の行う「全頭検査」への補助金
(7)教育・文化費はどうなっているか
教職員の増員、教育条件の改善
学校施設の耐震化促進
国立大学の運営費交付金―削減か、増額か
私学助成―減額か増額か―08年度予算では、3,248億6,800万円
高校の授業料の減免対策(05年度、公立7.5%、私立0.1%)を拡大(1割程度に)
学費(日本は世界一高い)無償化(国連の人権規約に定め、多くの国では実現)、授業料無料化をめざすこと(私学もだが、国公立の学生・院生だけなら2,860億円で実現可能)
(8)公共事業費はどうなっているか
差し迫って必要なのは、大企業向け産業基盤整備(スーパー中枢港湾・巨大ダムなど)の大型公共事業か、それとも住民生活密着型(福祉・教育・交通安全・防災など)の公共事業か
道路特定財源―「道路中期計画」10年間で59兆円―「総額先にありき」で道路建設につぎ込もうとしている。半分は高速道路整備(「基幹ネットワーク」1万4,000キロ、「地域高規道路」7,000キロ)が占める。(通学路の歩道整備や「開かずの踏み切り」対策などは計画全体のわずか数パーセントに過ぎない)
国交省の「国土形成計画」―海峡横断道路プロジェクト(東京湾口などをまたぐ道路の整備構想)もあり。
(9)環境対策費はどうなっているか
環境税、導入の必要性―大口排出者である大企業に相応のコスト負担を求める
     環境省が考えている環境税による税収は3,700億円
電源開発促進税を一般財源化し、自然エネルギーの利用促進などに生かす必要性
公害被害者の救済―大気汚染・水俣病・アスベスト被害など―原因企業と国が負担
(10)軍事費はどうなっているか
毎年、5兆円で、たとえどんなことがあっても削ってはならない「聖域」扱いにしている。
駐留米軍への「思いやり」予算―(08年度)2,083億円(1978年以来、合計5兆円をはるかに超える)そもそも日米地位協定上、日本には負担義務がないもの―をまだ続けるのか
「SACO(日米特別行動委員会)関係経費」(沖縄の米軍基地たらい回しを進めるもの)―全額削除の必要性
米軍再編(グアム移転や国内での基地再編)計画に3兆円―そのまま引き受けるのか否か
海外派兵型装備の導入・開発は実行するか否か
   イージス艦1隻1,453億円
   ヘリ空母1,000億円
   揚陸艦型大型輸送艦
   大型補給艦
   空中給油機
   輸送機CX
 「ミサイル防衛」08年度1,714億円計上、これまで7,347億円、11年度末まで1兆円をつぎ込む計画
イラク・インド洋への自衛隊派兵―継続か、打ち切りか
(11)ODA
対GNI(国民総所得)比0.17%―国際水準0.3%よりもずっと少ない。1980年頃は0.32%、で、89~06年までは世界トップだったのに。
福田首相は最近、アフリカ向けに、2012年までの5年間で4千億円の円借款を中心に、ODA倍増めざすと言明。
(12)政党助成費はどうなっているか
年間310億円以上(12年間で3,760億円)
 自民党へ166億円
 民主党へ110億円
 公明党へ 28億円
 社民党へ  9億円
 人によっては、自分の納めた税金が、この割合で、支持もしていない政党に使われてしまうということ。そんなことでいいのか。
(13)増税するなら、どの税からか税源には消費税、所得税、法人税、その他相続税・ガソリン税・環境税(炭素税)など
があるが、増税するとすれば、これらのうちどの税を先にするか。
(14)消費税の問題点
消費税は(05年)税収全体(49.1兆円)の21.6%(10.6兆円)
消費税の利点は、子供や高齢者(福祉を受ける立場の人間なのに、このような人々からまで取り立てる)・低所得者を含めて幅広く、かつ確実に徴集しやすいこと。(所得税だと、自営業者や農林漁業者の所得は国が把握しにくく、彼らからの徴集はやりにくい。)しかし、それは徴集する側の都合。
肯定論者は「広く公平にみんなで負担を分かち合う」と言うが、実は不公平で庶民、特に低所得者には全く不利。
逆進性―所得の多い者ほど軽く、所得の少ない者ほど重くなる。(年収に占める消費税の割合は、年収1,500万円世帯では1.4%だが、年収300万円世帯では4.2%)
所得の低い人は収入の8割以上を消費に当てるが、金持ちは、お金を貯蓄や株・土地購入などに当て、消費には半分も回さないから。
大企業は消費税分をすべて価格に転嫁(上乗せ)して自己負担をゼロにできるが、中小企業はそれができず、自腹を切らなければならなかったりする。
(売上1千万以下の場合は、客から受け取った消費税は国に納めなくてもよいので、中小業者の手元に残る―益税)
ヨーロッパでは消費税に相当する付加価値税は税率20%前後で高いが、非課税品目や軽減税率が適用される品目(食料品・水道代・家庭用燃料・医薬品・新聞・雑誌など)が多数ある。(イギリスでは食料品は完全非課税)日本の消費税には、それがない。
「福祉税」とか「社会保障税」などと名を変えて特定財源化するのは邪道(ヨーロッパでそうしている国は無い)
(15)所得税はどうなっているか
税収全体の31.8%(15.6兆円)
累進課税―そもそもこれが課税の原則で、負担能力に応じて支払う「応能負担」が原則なのだが―所得の少ない人ほど安く、所得の多い人ほど高いが、最低税率と最高税率が定められ、最低税率以下にも、最高税率以上にもならない。
税率―1970年代には19段階で、最低税率10%、最高税率75%
80年代には15段階で、最低税率10.5%、最高税率70%
89年には5段階で、最低税率10%、最高税率50%
99年には4段階で、最低税率37%、最高税率37%
2007年には6段階で、最低税率5%、最高税率40%
住民税(一律10%)と合わせれば、最低税率15%、最高税率50%(一般庶民に50%課税なら、江戸時代の農民のように「5公5民」で過酷な取立てになるが、一般庶民や普通のサラリーマンに最高税率が適用されるほどの高額所得者はおらず、大資産家だけにかぎられる。大資産家はそれで「働く意欲を失う」などということはあり得ない。そもそも彼らは勤労給与所得よりも株式の譲渡益や配当など金融所得のほうが多いのだから)
 証券優遇税制―株のもうけ(上場株式の譲渡益や配当金)に対する分離課税を認める―その税率は(資産性所得税と住民税合わせて)20%だったのが(03年以降)10%に軽減。
課税最低限(精一杯働いても、健康で文化的な最低限度の生活がやっとできる所得しか得られない人には税金は掛らないが、所得がそれを上まわると課税される最低金額)―欧米に比べて低い―ドイツ558.2万円、フランス460万円、イギリス423.4万円、アメリカ401.3万円に対して日本は325万円―ということは、日本では欧米よりも所得の低い人から税金を取っているということ。

生産年齢人口(15~64歳)に対する老年人口指数(65歳以上の割合)が「伸びている」というが、老年人口に14歳以下の子どもを足した人口割合(働き手1人が扶養する人数)は、ここ数年変わっていない。それに子どもと違って、老年人口の中には働いている高齢者(増えている)も含まれる。            
1999年以来続けられてきた定率減税(所得税20%、住民税15%減税)は07年に廃止された。
(16)法人税はどうなっているか
税収全体の27.1%(13.3兆円)
法人税は90年代ずうっと減税されてきた。(個人所得税の減税は廃止したのに、法人税の減税はなおも続けられている)
税率―80年代40~43.3%
90年度37.5%
98年度34.5%
99年以降30% (年間所得800万円までの中小企業は22%―軽減税率)
    90年の水準に戻せば(国・地方合わせて)7兆円の増収、大企業だけに限定しても4兆円増収となる
地方税を含めた法人課税の実効税率は39.54%(ドイツ29.83%、フランス33.33%、イギリス28%よりは高いが、アメリカのカリフォルニア州40.75%、ニューヨーク市45.95%、ドイツのデユッセルドルフ市39.90%よりは低い)
ヨーロッパは社会保険料の企業負担が高く、{税+社会保険料}では日本より高い。税(法人税・法人住民税・法人事業税)と社会保険料を合わせた企業負担は、GDP比では日本8.0%で、フランス13.9%、スウエーデン14.6%、ドイツ8.4%より低く、イギリス6.7%、アメリカ5.6%より高いが、日本の企業負担が特に高いわけではなく、その点で国際競争力が弱いというわけでもない。(日本企業の国際競争力は)むしろ抜群に強い。
世界のトップ10に占める日本企業は、ロボットでは8社、情報通信機器では6社、半導体製造装置では6社、アルミニウム圧延では6社、自動車ではトヨタなど3社と多い。
企業に対する税金の高さが生産拠点の海外移転の主たる理由にはなっていないということだ。海外移転の理由の一番は労働コスト(人件費)が安いこと、二番目が海外市場の将来性で、税・社会保険料負担は5番目。

大企業には「研究開発」減税、「IT投資」減税などの減税が行われている。それを縮小・廃止すれば1~2兆円の増収となる。
資本金10億円以上の大企業の経常利益は(06年)32,8兆円で史上最高、バブル期のピーク時(90年)の1.74倍。ところが大企業の税負担のほうは(90年)13.9兆円だったのが(06年)13.7兆円で、ほぼ同水準に留まっている。
(17)ガソリン税はどうすべきか
1954年以来、ガソリン税(揮発油税・地方道路税)は、軽油取引税・自動車取得税・自動車重量税などとともに(道路整備財源特例法に基づいて、これらの税を専ら道路建設に充てる)道路特定財源とされた。
1974年以来、ガソリン税に暫定税率を上乗せ(当初、期限2年間だったのが、延長を繰り返す)
ガソリン価格に占める税金は
 リッター152円とした場合その内訳は{原油価格・諸コスト・業者の利益など90円+本来のガソリン税28円+暫定税率分25円+石油石炭税2円+消費税7円}
ガソリン税による税収は(08年度予算)約5兆9,749億円
 内、国の分―約3兆2,979億円(本来の税率分1兆5,979億円+暫定税率分1兆7,000億円)
   地方の分―約2兆677億円(本来の税率分1兆1,677億円+暫定税率分9,000億円)
暫定税率―道路整備財源特例法とともに期限切れで3月末で失効
     4月末、衆院で再議決して復活、10年間延長
5月13日、政府は09年度から一般財源化すると(閣議決定)
同日、与党が「道路整備財源特例法改正案」(期限切れとなった道路整備財源特例法を10年間延長する法案で、前日に野党が多数の参院で否決したもの)を再議決(一般財源化するとした閣議決定と矛盾)
 首相は野党議員からの「社会保障と道路建設とどちらに緊急性があるのか」との質問に対して「両方とも緊急性がある」と答弁。
 世論調査では多く(7割近く)が「一般財源化」(福祉や教育その他にも使えるようにすること)を望む
(18)環境税はどうすべきか
温暖化防止を目的に炭素排出量に応じて課す場合は特に「炭素税」と呼ぶ。
我が国では未だ決まっていないが、環境省案では炭素1トン当たり2,400円(ガソリン1リットル当たり1,52円)
 現在のガソリン税は(暫定税率分25円と合わせて)1リットル53,8円
企業には導入反対が多い(朝日新聞によるアンケート調査では、全国主要100社のうち、反対41社、賛成27社、その他が32社)

 ヨーロッパ諸国で既に実施している環境税は、炭素量に応じて課税する純粋な「炭素税」から、既存のエネルギー税(ガソリン・石炭・電力などへの課税)を組み替えたものまで、タイプや税率は様々だが、日本のガソリン税や石油石炭税などに比べて税率ははるかに高い。但し、目的(用途)は限定せず一般財源化しており、税収を企業の社会保険負担や所得税・法人税の軽減などの形で還元も。
(19)たばこ税の増税は?
現在1箱300円のうち63%(189円17銭)が税、これによる税収は2兆2千億円
これを1箱1,000円にすれば(健康政策を推進しようという超党派による議員連盟から、この増税案)、喫煙率(男40.2%、女12.7%)が3分の1に減ったとしても増収3兆円
(そもそも日本は値段が安すぎ、欧米では1,000円がザラ)
(20)優先すべきは社会保障費、増税は大企業・大資産家から
 格差・貧困が広がって、「この国では安心して希望を持って生きてはいけない」という人々(若者も壮年者・高齢者も)が増え、深刻な社会問題や事件が起きている。このような時―
財政・予算で優先すべきは、まずは社会保障費と雇用・労働対策費であり、次いで農林水産・食糧対策費、教育・文化費、環境対策費である。そして削ってもかまわないものは道路など大型公共事業費と軍事費であり、政党助成費などは無くすべきなのだ。
 税源は、大企業と高額所得者・資産家に様々な名目でマケてきた税金―減税や軽減税率や上限(最高税率)の引き下げ等―をやめて、元に戻せば、充分確保できるのだ。
 
「増税もやむなし」、増税といえば消費税・・・と、もうそれ以外になく、「消費税率引き上げは不可避」、「問題はどの時期、どのタイミングでやるか」だけだ、といった方向に世論誘導が政治家や財界・新聞(論説)・テレビ(コメンテータ)などよっておこなわれているが、騙されてなるものか!


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