先の総選挙では、護憲派は、共産党が9議席、社民党が7議席。比例区の得票率は、両党を併せて12,8%で、国民の10人に1人以上という結果であった。社民党はこの選挙に際して、20以上の小選挙区で改憲派の民主党と選挙協力を行なっている。
政権党である自民党は圧勝し、党内刷新(党首のリーダーシップによって党内一本化、派閥連合政党から「近代政党に脱皮した」とか、「改革政党」のイメージ獲得)に成功して勢いを得ている。それにひきかえ民主党は「政権準備党」などと自ら称しながら、いわば「第二自民党」ぶりを露呈し、対抗軸にはなり得ていない。それでもマスコミなどは、ともに改憲派であるこの両党をもって日本に「二大政党制」が成立しつつあるかのように論評し、護憲派はもはや、まったくのマイノリティー(少数派)に化してしまったかのように扱っている。(産経新聞などは全国紙の社説から「護憲派が姿を消した」とまで書いているという。)
ただ、9条に限っていえば、世論調査では、改定反対の方がむしろ多数派であり、「九条の会」が全国各地に続々結成され、有権者の過半数の改憲反対署名をめざすなど護憲運動が盛り上がり始めているのも事実だ。
しかし、護憲を本当に達成するには、最終的に国民投票の段階で改正反対票が過半数を制して改憲をストップさせさえすればそれで充分というわけではないし、実際、反対過半数をとれるかどうか、わかりはしない。むしろ、その(国民投票に至る)前に国会で、改憲をし易くする国民投票法案(来年の通常国会に上程するとみられる)と国会法改正案の成立を阻止しなければならないし、また、改憲とあわせて現行憲法の精神をくつがえしてしまう教育基本法改定をはじめとして、防衛庁の「省」への昇格、共謀罪の新設など諸立法を阻止することも必要だ。重要なのは、単に憲法の条文改変を阻止するだけの消極的護憲ではなく、死文化を許さずに活かす(それを「活憲」と称する向きがある)そのような政策を一つ一つ勝ち取ることである。
そのためには、市民が請願署名・デモ・集会などで院外から圧力を加えるだけでなく、院内(国会)で護憲派議員が改憲発議否決に要する反対3分の1以上を制して発議を阻止することはもとより、護憲派議員が過半数を制して憲法死文化立法を阻止あるいは「活憲」(憲法を活かす)政策を実現すること。そしてそのためには、選挙(さしあたり2007年の参議院選挙)で護憲派がそれらを可能とするだけの議席数を獲得することである。
今は、各地の「九条の会」・革新懇・共産・社民・新社会党など各会・各党がバラバラ、それぞれ思い思いに集まり合っては気勢を上げ、署名集めや街頭宣伝など行なっているが、それだけに終始するのではなく、選挙で護憲派議員を3分の1以上~過半数を当選させるために選挙協力を行なわなければならない。すなわち選挙に際して選挙区ごとに統一候補を立て、比例区では統一リストをあげて確実当選を期する。そのためには政策合意が必要であるが、その基本政策は、自民・民主側の改憲・新自由主義的改革・日米軍事同盟路線に対して、護憲・活憲・非「新自由主義的改革」・非「日米軍事同盟路線」にそくしたものとする。尚、革新懇に「革新三目標」(①国民本位の経済 ②自由・人権・民主主義の発展 ③非核・非同盟・中立)があるが、そのような基本政策で互いに政策協定を結ぶのである。キャッチフレーズでいえば、「小さな政府」に対して「公正な政府」、「強い国家」に対して「信頼される国家」、「自己責任、自助努力」に対して「政府・企業・個人それぞれの責任・努力」、「競争・格差肯定社会」に対して「誰もが幸福を得られる社会」といった言葉になる。
その統一会派の名称は「護憲連合」か、それとも「活憲連合」。(「革新連合」でもよいわけであるが、千葉大学の小林正弥教授などは、「革新」は戦前右翼がスローガンにした言葉であったことから、小泉自民党と前原民主党を「革新右派二大政党」として、むしろ改憲派の方にその言葉を当てている。小林教授は、「護憲」もいまや保守的なイメージがあるとしてその言葉を避け、イタリアの「オリーブの木」のいわば日本版ということで、「平和の木」とか「平和連合」といった名称を提唱している。―「世界11月号」)
いずれにしても、小選挙区並立比例代表制という選挙制度が変わらないのであれば、二大政党の激突となるが、それを改憲派同士の自民対民主とはせずに、改憲派対護憲派の激突としなければならないわけである。
「激突」(勝ちを意識した対決)ともなれば、政権獲得の意気込みを見せ、「九条の会」の著名人の顔だけでなく「護憲連合」の顔ともなる首相候補まで立てて、「小泉自民党」とか「安倍自民党」に対抗しなければなるまい。
各会・各党は本気で改憲阻止・活憲をめざすのであれば、イデオロギーや過去のしがらみにとらわれずに、護憲・活憲の一点で大同団結すればよいのである。「九条の会」や革新懇、共産・社民・新社会党などには、自民・民主両党の新自由主義(市場競争主義・規制緩和・民営化路線)や日米軍事同盟路線に反対する人々が多く、増税問題や靖国問題、自衛隊のイラク派遣問題、教育・福祉の問題でも意気投合する部分が多い。これらの各会・各党の人々が、小異(イデオロギーやアイデンティティーは、それぞれにとって大事にしなければならないものではあるが、平和と暮らしだけがすべてという一般国民にとっては小異)を残して大同につく。そして各党が政策合意し、政策協定を結んで統一会派をたちあげ、選挙協力することは、けっして不可能なことではないだろう。
但し、選挙戦は勝つことをめざし、政権をもめざすが、政権獲得を自己目的にするようなことはしない。かつて社会党が自社さ連合政権にはしり、いま公明党が自公政権にはしっているように、そのために肝心の平和憲法の立場から後退するようなことはせず、また、自民・民主のようにイデオロギーや基本政策は大差ないのに、政権を競って小異にこだわって違いを際だたせるようなことをすべきではないのである。
自民・民主は、いずれも、実業家・資産家・有力者・政治家・官僚などこの国における社会の(どちらかといえば)「勝ち組」・エリート層出身の議員政党で、彼らの利害にマッチした「最善」の政策を競い、「改革」を競い、政権を競い、支持獲得を競い合っている。(経団連など財界は、双方の政策を比べて評価し、それに基づいて政治献金をだしている。)それに対して共産・社民・新社会党などの各党は、互いに競い合っていがみ合うのではなく、自己のエゴは捨てて、あくまで護憲・活憲を至上目的に協調・共同しなければならないのであって、護憲派同士でいずれが政権・主導権を握るかなどは問題外としなければならない。
改憲派両党の競争主義と国民分断政策(公務員と民間社員、正社員と非正社員、労働組合員と非組合員、サラリーマンと自営業者、高齢者と現役、中高年と若年層、働く女性と専業主婦、健常者と障害者など両者の対立を煽って分断し、それぞれ片一方の支持を獲得するという手法)に抗して、護憲派は国民相互の連帯・協調によって対抗しなければならない。
とにかく、各会・各党がバラバラのままでは、いくら頑張ってみても、圧倒的に強大な改憲派自公民連合には到底太刀打ちできないし、今のところ世論調査では9条改定反対の方が多いとしても、これから大連立の可能性もある改憲派二大政党とそれに同調するマスコミのキャンペーンの前には、国民投票で改憲反対過半数を制することは容易な技ではないだろう。(参院で否決した郵政民営化法案を総選挙で逆転したとか、フランスで議会が承認したEU憲法を国民投票で逆転否認したなどという逆転劇はあったとしても、日本のこの場合には、各会・各党バラバラのままでは、そんな逆転劇はまずあり得ないだろう。)
いずれにしろ、成りゆき任せではなく、目的(護憲・活憲)達成に向けた現実的・合理的な戦略を考えて取り組むべきなのではないだろうか。
メディア戦略(マスコミへのアピールとメディアの活用)にも考えを及ぼし、「風を起こす」ことともに、「風を呼ぶ」方法も考えるべきだろう。
勝てる(結果が得られる)戦略に基づいた戦いでなければならず、単なる「戦いのための戦い」(自己満足的生きがい)で終わってしまうことのないように・・・・・・・・・・ということで、護憲派各会・各党の統一会派(「護憲連合」もしくは「活憲連合」)結成が緊急に求められていると考えるのですが、如何なものでしょうか。
以上、間違いや的外れがあろうかと思われますが、ご指摘、ご批評いただければ幸いです。