16年も前、本紙に「なぜ教えない」という投稿で、「毎年夏になると、テレビでは原爆や空襲など戦争を扱った番組が増える。しかし、その中で日本の中国侵略を扱ったものは少ない。なぜ、日本人は、アジア侵略の事実に触れようとはしないのだろうか。」と指摘していた高校生がいた。
今年は、戦後60周年ということで、この夏はいつも以上に戦争関連番組が放映された。
ところが、それらを見ると、やはり自国の悲劇を扱ったものばかりで、アジアの人たちの悲劇を正面から扱ったものは一つもない。ずうっとこうなのだ。
こういう流し方をされると、いやおうなしに、日本人は被害者としか意識されなくなる。とかく、戦争責任に無頓着な向きが多くなっている原因は、このような番組の流し方にもあるような気がしてならない。
私が勤めた学校では、毎年、修学旅行の広島行きをひかえて全校映画教室がおこなわれ、原爆や戦争映画が上映されたが、時には中国映画の「南京1937」なども上映された。生徒の中には、感想文に日本軍人に扮した俳優を大根役者などと酷評した者もいたが、しっかり見ていたように思う。
テレビは被侵略国側の悲劇をもきちんと取り上げ、歴史教科書もこれらをはずすようなことをしないようにすべきなのではないだろうか。