米沢 長南の声なき声


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16年前の若者の訴えは今も
2005年07月29日

「毎年夏になると、テレビでは原爆や空襲など戦争を扱った番組が増える。しかし、その中で日本の中国侵略を扱ったものは少ない。なぜ日本人はアジア侵略の事実に触れようとしないのだろうか。加害者意識をけろりと忘れる一方、原爆を引き合いに出して平和を説くこの風潮・・・」これは、16年前の8月、本紙に投稿された横浜市の高校生の投書で、その4年後出版された高校政経副読本に載っていたものだ。私は、たまたまこの副読本の頁をめくったら、これが目に留まった。読んでみると、私がこのところずうっと思っていることと同じことが書いてある。そうだ、今もそのとおりだ、とつくづく思う。メディアも歴史教科書も、自国民の被害・悲劇だけでなく、日本から侵略をうけた諸国民の悲惨にもっと目をむけ、加害事実をもっと取り上げて、その実態を国民や生徒に知らせるべきだ。なぜなら、我が国は今、アジア諸国から少なからず反感を買っており、国際社会から充分信頼されているとは言えない状況にあるが、それは、日本人が自分たちの国がしてきたことをよく解っていないと思われているからに相違ない、そのことを痛感するからだ。


【解説】

16年前の一高校生の投書というのは、1989年8月13日朝日新聞の投書欄に「なぜ教えない」という題名で載った、横浜市、高校生16歳、宮岡江都子さんのもの。

 高校政経副読本というのは、1993年東京学習出版社が出した「なるほどワイド政経1993」。

 7月中に、新聞には、8月中放映されるNHKと民放テレビの終戦・被爆特集番組が紹介されているが、そこに挙げられている番組を見てみると、中国などの被害国側の悲惨の実態や悲劇を取り上げたものは一つもない。

 尚、当方は、6月中に、新聞各社にたいして、「アジア太平洋戦争の加害実態の特集企画を」という次のような要望を出したりもしている。


戦争といえば、原爆や空襲などの戦災、敗戦と、日本人には被害意識の方がつよくて、アジア近隣諸国にたいする加害意識が薄い向きがあり、日本人には、中国人や韓国人は、いったいどうしてそんなに歴史や日本の首相の神社参拝にこだわるのかよく解らない、といった状況があるように思われます。そこには、彼我の間に戦争や植民地支配の被害と加害の感覚・意識に大きなギャップがあって、「人の足を踏んだ者は、踏まれた人の痛みが解らない」という日本人の感覚の鈍さがあり、その上、日本人には加害事実にたいする歴史認識の乏しさがあるのではないでしょうか。

 日本人には、もっと歴史と加害の実態をよく知り、被害国民の痛みの程がわかるような努力が必要な気がします。

 そこでこの際、戦後60周年にあたって、各メディアがアジア太平洋戦争の特集を組んで、その加害実態を我々国民に詳しく教えてもらえるような企画はないものでしょうか。日本人は中国や朝鮮半島、東南アジア各国で、はたして何をしたのか。それによって各国民はどのような被害をどれだけ被ったのか、国別の人的物的被害の数量と被害状況を実態調査してまとめ、紙面に公表してもらえれば、我々国民の認識不足克服に大きく資するというものではないでしょうか。

 是非、このような我が国の戦争と植民地支配の加害実態が、われわれ国民に解るように各国別にデータと具体的状況をまとめて教えていただくような企画を組んでいただくよう要望いたします。


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